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おっちょこちょいのかよちゃん

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102 標的は名古屋

 
前書き
《前回》
 清水市を襲来して来た蘇我氏達に対して三河口はまる子、さきこのさくら姉妹と共にかよ子の杖を奪った入鹿を撃破し、杖を奪還する。そして蝦夷に馬子と交戦しているすみ子達「義元」の元へ向かい、かよ子達は蝦夷を撃破、馬子を撤退させることに成功するが、かよ子は入鹿に杖を騙し取られた事に加え護符の所有者の居場所を喋った事で三河口から激しく叱責されてしまう。そして同じ頃、日本各地で異世界の敵が暴れていた!!
 

 
 兵庫県神戸市。そこに鷺森光江という異世界の道具を持つ女子高生がいた。光江は学校から帰る途中、爆音が聞こえた。
「な、何やねん!?」
 光江は爆音地へと走る。多くの人々が逃げ惑っていた。よく見ると二丁拳銃で暴れている者がいた。
「おい、護符の場所を教えろ!」
(護符・・・?)
 光江は護符と聞いて頭に浮かんだ。確か隣に住んでいる祝津ゆりという女性の妹が異世界の護符の所持者であり、その人物と対面した事がある。まさかこの男は護符を探しにやって来たというのか・・・。
「護符はどこだ!?」
 だが、多くの建物が爆破で炎上し、中には怪我人も出た。
(んな事考えとる場合ちゃうか!あいつを抑えんと!)
 光江は一つの御守を取り出した。
「ちょっと、ここに護符はないわよ!やめんさい!」
「あ!?黙れ、小娘!このガヴリロ様を舐めんな!」
 ガヴリロと名乗った男は光江に両手にある二丁の拳銃を発砲し、光江を狙う。
(湊川、生田、長田の神の能力(ちから)よ・・・!!)
 光江が持つこの御守は異世界の人間から貰った物である。ガヴリロの拳銃攻撃は光江には通用せず、弾は消えた。
「何!?テメエ、異世界の道具を持ってんな!」
「そうよ!」
(どうかあいつを鎮座させて!)
 光江はそう願う。そして自分自身に宿る能力(ちから)も使用する。
「な、なんだ、この威圧感は!?」
 ガヴリロは光江から感じる威圧の能力(ちから)で怯えてしまった。そしてもう一度、拳銃を発砲する。だが、光江に命中しなかった。そして光江の御守が発動する。
「あ、あ、うわあああ・・・」
 ガヴリロは御守の間接攻撃を喰らった。ガヴリロは苦しむ。そして身体が砕け散って光となった。光江はガヴリロは異世界の敵と認識しつつ、相手の目的を顧みる。
(あのガヴリロって男・・・。異世界の護符を探してた・・・。隣のお姉さんの妹さんが持っているあれかも・・・。伝えなきゃ・・・!!)
 光江は家に帰った。

 三河口は帰宅後、叔母の許可を得てさりに電話を掛けた。
「さりちゃん!」
『あら、健ちゃん、どうしたの?』
「大変です。清水(こっち)に異世界の敵が現れて、隣のかよちゃんが相手に騙されて護符の在処を喋らされました!」
『え!?』
「しかも、敵は確認できる限り二人は倒しましたが、一人取り逃がしました。そいつが赤軍に報告するかもしれない・・・!!」
『分かった、こっちも気を付けるわ』
「はい」
 電話を切ると、奈美子が質問する。
「異世界の敵が現れたって?」
「はい、かよちゃんに接近して善人のふりをして護符の場所を聞いて杖を奪ったんです。杖は盗り返しましたが・・・」
「大変ね。さりが何とか守りきるのを祈るしかないね」
「はい・・・」

 かよ子は昨日の一件で落ち込んでいた。その事は母にも話したが、母は三河口ほどきつく叱りはしなかった。
「確かにそれは大変な失敗ね。でもさりちゃんが持ってる護符もかよ子の杖と同じくらい強力な筈だからきっとさりちゃんも対応できるわよ」
「う、うん・・・」
 かよ子はその事で精神が病み、合唱の練習をせずに寝てしまった。そして今に至る。
(私のせいで、護符が盗られたら・・・)

 レバノンの日本赤軍本部。房子は見つからずの護符の情報について早く手にしたかった。
「総長」
 日高が入って来た。
「あら、敏彦、どうしたの?」
「静岡の清水に派遣させた蘇我氏の者を連れてきました」
 二人の飛鳥時代の朝廷の役人のような人物が房子の部屋に入室した。
「貴方達は稲目と馬子ね」
「はい」
「蝦夷と入鹿は?」
「申し訳ございませぬ。杖の所有者並びに異世界の道具の持ち主達に倒されました」
「何ですって!?」
「はい、あと一歩で杖を奪ったところで別の者に追い打ちを喰らいました。ですが・・・」
 馬子が続ける。
「入鹿は見事に杖の所有者から護符の場所を聞きだす事に成功しました」
 稲目が続ける。
「場所は、ナゴヤという所にございます」
「名古屋ね・・・。貴方達がこの世に生きていた頃、『尾張』と呼ばれていた所よ」
「ああ、さようでございますか」
「蝦夷と入鹿を失った事は辛いけど、これ以上の捜索行為は無用ね。敏彦、日本全国の捜索をしている者達に攻撃を辞めて引き上げさせなさい」
「了解しました。皆にも伝えます」
 敏彦、稲目、そして馬子は退室した。
「護符は名古屋ね・・・」
 房子は目的達成に少し近づいたと思い、微笑んだ。

 かよ子は昼間だというのにベッドで横になっていた。そんな時、母が入って来た。
「かよ子。まだ落ち込んでるの?」
「いや、その・・・」
「隣の健ちゃんが入って来たわよ」
「え?」
 三河口が入って来た。
「かよちゃん、この前は怒鳴ってごめんな」
「う、うん・・・。私のおっちょこちょいが原因で護符の場所を知られちゃったんだし・・・」
「でも、その分、異世界の敵があの後、各地で暴れまわる事はなくなったんだ。その事については安心していいが、俺の従姉に何かあったら必ず助けに行こう」
「うん、そうするよ・・・!!」
「それより、合唱コンクールの練習はいいのか?」
「あ、うん・・・」
 かよ子はこの前の自分の失態を気にして合唱コンクールの事に身が入らなくなっていた事を思い出した。
「杉山君も心配するぞ」
「あ、う、うん・・・」
 かよ子は好きな男子の名前を出されて我に返った。
「頑張るよ!」
「元気になってよかった。じゃあな」
 三河口は部屋から出て行った。
(そうだよね・・・。合唱コンクール、頑張んなくっちゃ!!)

 合唱コンクールの日は近い。かよ子も皆で歌う部分も独唱部分も必死で頑張った。だが、その時、大野が少し声鼻声で声が掠れているような感じだった。
「大野君、大丈夫ですか?」
「ああ、心配すんな・・・」
 だが、皆は心配だった。疎遠状態だった杉山でさえ大野が心配になった。練習の終わり、冬田が大野に近寄ってくる。
「大野くうん、声、掠れてるけど大丈夫う?」
「ああ、平気だよ、心配すんな、じゃあな」
 大野はそのまま帰って行った。
「山田・・・」
 かよ子は杉山に呼ばれた。
「す、杉山君!?」
「お前、今日もいい声してたぜ」
「あ、ありがとう・・・」
「どうしたんだよ?」
「実は私・・・、この前、異世界の敵に会って・・・」
「それで?」
「何か優しく寄って来たから平和の世界の人間かと思って護符の場所を教えちゃったんだ・・・」
「まじかよ!?お前もおっちょこちょいだな」
「うん、隣のお兄ちゃんには凄い怒られちゃったんだ・・・」
「でも、その護符を持ってる人って確か名古屋にいたよな?」
「うん」
「それにその護符はお前の杖と同じように結構強い能力(ちから)を持ってんだろ?あのお姉さんなら大丈夫だろ。大雨の時も活躍してんだからな」
「うん、そうだよね」
「俺だって、いつでも助けてやる」
「ありがとう、杉山君・・・!」
 その時、笹山が近づいてきた。
「山田さん、独唱の所、凄く良かったわよ」
「う、うん・・・、ありがとう・・・」
「おう、笹山と結構上達してたぜ!」
「杉山君、ありがとう。それにしても大野君が心配よね」
「確かに、今日、声掠れてたもんね」
 だが、杉山には知らん顔だった。
「平気だろ、あいつらなら。じゃあな」
 杉山はさっさと帰ってしまった。
「杉山君、まだ大野君と仲直りできていないのね」
「うん・・・」
 かよ子はまだ別の問題があった事を思い出した。杉山が大野と仲直りしなければこの先戦いに苦労すると。その端で藤木は笹山が羨ましそうに見ていた。
(いいなあ、笹山さん、杉山君や山田と楽しく喋って・・・)
「あら?」
 笹山が藤木が自分の方に見ているのに気づいた。
「藤木君」
「え!?」
「どうしたの?良かったら私達と一緒に帰らない?」
「いいのかい?ありがとう!」
 藤木は喜んだ。そして三人で帰り、藤木には笹山と一緒に帰れて嬉しいと思うのであった。 
 

 
後書き
次回は・・・
「最悪の日」
 ゆりが神戸で異世界の敵が暴れた事を実家の母や名古屋に住む妹のさりに電話で呼び掛ける。かよ子は笹山に藤木と共に下校するのだが、野良犬と遭遇し、藤木はある行動に出てしまい・・・!? 
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