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おっちょこちょいのかよちゃん

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103 最悪の日

 
前書き
《前回》
 戦争主義の世界の人間・馬子と稲目から護符の場所の情報を得た赤軍のリーダー・重信房子は護符を狙う事に意気込む。一方、自身の失態を三河口に叱責されて精神的に病んでいたかよ子は合唱コンクールに練習に身が入らない。そんな彼女の元にその三河口が現れ、「杉山が心配する」と言われて我に返ったかよ子は再び練習を始めるのだった!!! 

 
 羽柴家に電話が鳴る。三河口は電話を出た。
「はい、羽柴です」
『あら、その声は健ちゃんね』
「はい・・・、とすると、神戸のゆりちゃんですか?」
『正解』
 三河口の従姉で羽柴家の長女・ゆりだった。
「叔母さんに今、変わりましょうか?」
『ええ、お願い』
「叔母さん、ゆりちゃんです」
 三河口は叔母と代わった。
「はい、ゆり、どうしたん?」
『実はこの前、神戸に異世界の敵が現れて暴れてたの。隣の家の女の子が異世界の御守で倒したけど、その敵は「護符はどこだ!?」って言ってたって聞いたわ。もしかして、さりが持ってる護符を狙ってるんじゃないかしら?』
「そうみたいね。ウチの所にも隣のかよちゃんがそれで襲われかけたんよ」
『山田さんとこの?』
「うん、健ちゃん達で追っ払ったけどね」
『そうだったの・・・』
「かよちゃんも騙されて護符の場所を教えちゃったから私もさりが心配よ」
『そうね、私も姉として心配だわ』
「それじゃ、気をつけてね」
『はい、じゃあね』
 お互い電話を切った。

 ゆりは次は名古屋の妹に電話をかける。
「もしもし、さり」
『ゆり姉!?どうしたの?』
「この前、神戸(こっち)で異世界の敵が現れたのよ。隣の家の光江ちゃん覚えてる?」
『ああ、光江ちゃんがどうしたの?』
「その敵を光江ちゃんが倒したの。その時、敵は護符を探していたそうよ。つまり、赤軍達はさりの護符を狙っているわ!」
『う、うん・・・!!』
 さりは落ち着かなくなった。
「あとそれだけじゃないわ。母さんから聞いたけど清水でも山田さんとこのかよちゃんが異世界の敵に騙されて護符の場所を教えちゃったそうよ」
『ああ、それ、健ちゃんから聞いたわ』
「だから、十分気を付けて。護符を手放さないようにね」
『うん、気を付けるわ』
「それじゃ、お休み」
 お互い電話を切った。さりはもう安全ではないと自覚した。

 かよ子は藤木、笹山と共に下校していた。
「笹山さんも山田も目立っていいなあ・・・。僕なんか合唱だけだもん」
「そんな事気にしなくていいわよ。藤木君も合唱の一人として役に立ってるわよ」
「笹山さん・・・。えへ、ありがとう・・・」
 藤木は笹山にそう言われて嬉しかった。
「わ、私も、本番でおっちょこちょいしないように気をつけなくちゃ・・・」
「大丈夫よ、山田さんもいい声してるわ」
「うん、ありがとう」
 と、その時だった。
「ウーッ、フーッ・・・!!」
 横から野良犬が現れた。
「キャー!」
「う、うわあ、に、逃げよう!!」
 藤木は急に笹山の手を掴んだ。かよ子も逃げようとするが、転んでしまう。
「あ、あ・・・」
 かよ子は慌てて杖を取り出した。その時、風が吹いた。かよ子は杖を出し、風を操る能力を得た。そして杖は竜巻を作り出し、野良犬を遠くへ吹き飛ばした。
「はあ、何とかなった・・・」
 しかし、藤木と笹山はその場にはいなかった。

 藤木と笹山は何とか逃げおおせた。
「はあ、はあ、もう大丈夫だよ、笹山さん」
「でも、山田さんを置いて行っちゃったじゃない!どうして山田さんを見捨てたの?」
「で、でも、僕だって怖いし、笹山さんに怪我をして欲しくなかったんだ!」
「私は良くても山田さんが怪我したらどうするのよ!?」
「う・・・」
「私、山田さんの所へ行ってくる!!」
 笹山は藤木から離れた。
「ま、待ってよ笹山さーん!!」
 しかし、笹山を呼び止める事はできなかった。

 かよ子は立ち上がった。
「急いで帰ろう・・・」
 その時だった。
「山田さーん!」
「笹山さん・・・!!」
「ごめんね、先に逃げちゃって・・・。藤木君ったら山田さんを見捨てるんだから・・・」
「うん、確かに卑怯だったね。でも、この杖で何とかやっつけたよ」
「杖?」
「うん、色んな物質に向けるとその物質の力を操れるんだ。さっきは風が吹いたから風の能力で竜巻を作って野良犬を追い払ったんだよ」
「へえ、凄い杖ね。そういえば近所のお姉さんから聞いた気がするわ。この前、山田さんがその杖盗られそうになったからやっつけたって」
「実はそうなんだ・・・」
「そうか、でも、怪我しなくて安心したわ。一緒に帰ろう」
「うん!」

 そして翌日、かよ子と笹山は藤木の机の元へ行く。
「藤木君!」
「な、何だよ!?」
「昨日、私を置いて逃げるなんて、卑怯だよ!」
「ご、ごめんよ、僕だって怖かったんだよ!」
「今更謝っても遅いよ!笹山さんはすぐ戻って私の所に謝りに行ったよ!藤木君はその後、どうしたの?」
「か、帰った・・・。笹山さんが行っちゃったから」
「ありえないよ!そんなの!!」
「そうよ。ひどいわ!」
 その時、周りのクラスメイトが話を聞いており、藤木を非難していく。
「うわー、最低!」
「笹山さんはともかく、なんでかよちゃんを見捨てるの!?」
「本当に卑怯!!」
 そしてまる子とたまえも寄って来た。
「ええ!?藤木が!?」
「あのおっちょこちょいのかよちゃんを置いてきぼりにするなんて!いくらかよちゃんが杖を持ってるからって!!」
 藤木は非難の的となってしまった。そして隣の机の永沢が留めの一言を浴びせる。
「藤木君、君、山田を見捨てて逃げたのかい?君は本当に筋金入りで底抜けの卑怯者だね。君とはもう絶交だよ」
 藤木はもう頭の中が真っ白になった。笹山とも口を聞いて貰えなくなった藤木にとって人生最悪の日になってしまった事は言うまでもない。

 さりはこの日も仕事をしていた。だが、いつ敵が護符を狙いに来るか分からない。神戸の姉に会った時、ゆりの隣の家に住む女子高生が異世界の敵を倒し、その敵は護符を捜していたと電話で姉から聞いた。
(兎に角、絶対に離さないようにしよう・・・)
 さりはそう思った。

 異世界の敵が日本全国で暴れていた頃、札幌にすむ煮雪ありは自分達と杯の所有者とその友達と共に赤軍の命令で杯を狙った東アジア反日武装戦線が脱走した事にはさらなる戦慄を覚えた。そんな時・・・。
「煮雪あり!」
 シャクシャインが現れた。
「大変な事になった。敵が暴れておる!そのタマサイで私と共闘してくれ!」
「ええ、いいわ!」
 ありは市街地へと向かう。そこに暴れる者がいた。多くの人が逃げ、北海道警すら苦労していた。その者はレコードで音楽を流すと、様々な建物を破壊していた。
「破壊をやめんか!」
「なら、異世界の護符の場所を教えたまえ!」
「何訳の分からん事を言っている!」
「ならお前らもこの音楽で殺めてやる!」
 男は蓄音機内のレコードを入れ替える。そしてその音楽は建物は破壊しなかったが、人が倒れて行った。
「く!」
 シャクシャインは剣を振るう。音楽が急に消えた。
「何だね!?私の邪魔をするのは!」
「邪魔は貴方の方よ!」
「いかにも、お主の攻撃は私が消してもらった!お主は何者だ!?」
「このダヌンチオ様を知らぬとは!お前らも消してくれる!」
「させると思う!?エク・カムイ!」
 ありはタマサイの能力(ちから)を行使した。半分人間で半分獣のカムイが現れた。
「ミントゥチか!」
「あいつを始末して!」
「了解!」
 ミントゥチはダヌンチオを懐に飛び込む。
「自滅する気か?フハハハハ」
「大丈夫かしら?」
 ありは気になった。だが、ミントゥチが体当たりしただけで、ダヌンチオは苦しんだ。
「あのミントゥチは天然痘を媒介させる能力(ちから)があるのだ。ミントゥチの攻撃を受ければ死は免れまい」
「なるほど」
「うお、おおお・・・」
 ダヌンチオは苦しみ、そして光となって消えた。
「煮雪あり、ご苦労だった。では」
 シャクシャインは去って行った。だが、ありはある事が頭に浮かんだ。
(あのダヌンチオって男、異世界の護符を探してた・・・?) 
 

 
後書き
次回は・・・
「合唱コンクールの異変」
 お互い妹を心配し合うゆりとあり。そして合唱コンクール当日が訪れた。意気込むかよ子だが、大野の声が掠れており、ブー太郎が心配する。そんな中、合唱コンクールが開幕する・・・。 
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