星河の覇皇
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第七十六部第三章 エウロパから見た死闘その三十二
「そして凄まじい死闘が行われたとか」
「私は軍事の専門家ではないですが」
こう前置きしてだ、ヒルデルセンは先のオムダーマンとティムールの死闘について話した。あの戦いのことは人類社会全体でニュースになっているのだ。
「しかし」
「それでもですね」
「聞くところがあまりにも凄く」
「驚いておられますか」
「はい」
その通りという返事だった。
「双方が七割以上の損害を出すとは」
「戦史上もとのことですね」
「滅多にないとか。そこまでの死闘を繰り広げるとは」
「まさにですね」
「想像を絶します」
そこまでの戦いだというのだ。
「私にとっては」
「私もです」
ランズハイムもこう答えた。
「そこまでの戦いとは」
「英雄同士の戦いになると」
「やはりですね」
「相当な損害が出ます」
「よく言われることですが」
ランズハイムは自分が好きな文学のその表現も使った。
「獅子はお互いでは戦わないですね」
「相手を強いとわかっているからですね」
「はい、だからです」
「獅子はお互いでは戦わない」
「しかしです」
「お互いに戦えば」
「その時はです」
強者同士が戦えばというのだ。
「お互いに無事では済みません」
「共に深い傷を負う」
「あの戦いの様に」
そのオムダーマンとティムールの戦いの様にだ。
「そうなりますね」
「そうですね、そう思いますと」
「はい、あの戦いでの損害は」
「当然の結果ですか」
「そうなるでしょう、しかしああした戦いを続ければ」
「統一した時にですね」
「どちらかが統一するのは間違いないです」
それは確実だとだ、ランズベルクはヒルデルセンに話した。
「しかし統一した時に」
「サハラ自体がですね」
「大きな傷を負っていることもです」
それもというのだ。
「有り得ますね」
「そうなれば」
ヒルデルセンも難しい顔で述べた。
「サハラにとっては思わしくないですね」
「ですが我々にとっては」
「エウロパにとっては」
「統一したサハラが傷付いているのなら」
この時ランズハイムはそれがオムダーマンによるものかティムールによるものかはどうでもよかった、統一されたサハラのことを考えていた。
「それは我々にとっていいかも知れません」
「サハラが敵ならですか」
「総統はサハラ侵攻はしないおつもりです」
これは明言している、サハラ再侵攻ではなく内政だとだ。
「しかしです」
「それでもですね」
「敵が傷付いていれば」
「攻めてくることはない」
「このことはいいことですので」
それだけでというのだ。
「我々にとってはです」
「よいことですね」
「連合はあのステッラ事件の様なことがないと攻めて来ません」
このことについても言った。
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