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レーヴァティン

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第百八十一話 東から西へその十

「俺達が助け出すからな」
「わかりました」
「宜しくお願いします」
「その時は」
「本当に」
「任せておけ、けれど警戒は頼むな」
 こう言ってそうしてだった。
 久志は軍勢を敵の領内に入れた、野営の時も行軍の時も警戒を緩めなかった。そうして捕虜を出さない様にしてだ。
 兵を進めていった、そして領内の民達には。
 穏やかな態度だった、それでだった。
 民達は最初久志達を警戒していたが次第に彼等を穏やかな目で見る様になった、そして帝国の民になると聞くとだった。
 彼等に進んで恭順しだす者もいた、そして領内の詳しいことまで教えてくれたりもした。その状況を見てだった。
 久志は仲間達に夜こんなことを言った、警戒していて酒は飲んでいない。敵が兵達を攫いに来ればすぐに助け出す為だ。
「どうも厳罰厳法にな」
「重税に労役ってな」
 美奈代が応えた。
「それにちょっとおかしなこと言っても死罪」
「言論弾圧や統制もあってな」
「皆息苦しかったみたいやな」
「生活も相当苦しかったみたいだな」
「重税は理由があったけどな」
 美奈代はこのことも指摘した。
「ちゃんとな」
「ああ、国を守る為にな」
「軍勢を揃えて兵糧や武具も揃える」
「その為でな」
「労役もな」
 これもというのだ。
「城や砦を築く為で」
「自分の贅沢とかの為じゃないな」
「ちゃんと理由がある、言論統制もな」
 弾圧を含めたそれもというのだ。
「領内を一つにまとめる」
「その為でな」
「それでやってたが」
「あまりにも過酷でな」
「もう民も苦しかったみたいだな」
「それでもう嫌になってたみたいやな」
「俺達は別に何を言ってもいいしな」
 自分達にとだ、久志はまずは言論のことから話した。
「正直言ってな」
「そやな」
「それでな」
「税とか労役もな」
「労役あったら税免除してるしな」
「その税自体もな」
「軽いしな」
 実際にそうなっている、久志は産業を興して発展させその利益で国を動かしているのだ。だから税も軽いのだ。
「そっちも」
「帝国が豊かなせいもあるけどな」
「ああ、元々な」
「商業が発達してて」
 美奈代はこのことから話した、商業からというのが商人らしかった。
「農業も。そして鉱工業もな」
「いいからな」
「しかも地中湖で漁業も盛んや」
「だから税も軽いな」
「それで済んでる」
「そうした事情だからな」
「民も苦しんでない、しかしこんなちっこくて山が多くて」
 それでというのだ。
「土地もあまり肥えてへん」
「灌漑とかしたら随分変わりそうでもな」
「けど今の状態やとな」
 どうしてもというのだ。
「この領地だけで独自に守ろうとしたら」
「もうそこまでしないと駄目だな」
「そや、もうそれに民もや」
「耐えられなくなってるな」
「それでや」
「俺達についてきてるんだな」
「正直今の領主のままやと」
 美奈代はさらに言った。 
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