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レーヴァティン

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第百八十一話 東から西へその九

「行軍中も休む時もな」
「警戒することですか」
「それが大事ですか」
「敵に捕まらない様に」
「連中は捕虜を嬲り殺してその姿を敵に見せて士気を削ぐんだ」
 それが敵の領主の狙いであるというのだ。
「だからな」
「何時でもですね」
「警戒して」
「捕まらない様にするんですね」
「いつも何人かで行動してな」
 そしてというのだ。
「例え用を足す時でもな」
「何人かで行動する」
「一人でいたら駄目ですか」
「絶対に」
「そうだ、行軍中用を足してもな」 
 生理現象だからそれは避けられないにしてもというのだ。
「いいな」
「一人でなくですね」
「何人かで行動する」
「そうすることですね」
「若し一人でいたらな」
 その時こそというのだ。
「狙われる、まして敵の領内だ」
「地の利は連中にありますね」
「敵に」
「公爵の方に」
「そうですね」
「だからな」
 それ故にというのだ。
「いいな」
「はい、細心の注意を払って」
「そうしてですね」
「用も足すことですね」
「そして行軍もですね」
「いきなり出て来て捕まえるとかするからな」
 だからだというのだ。
「気をつけておけよ」
「わかりました」
「気をつけていきます」
「その間は」
「敵は来る」 
 久志はこの言葉は強い声で言った。
「そう思ってな」
「それで、ですね」
「警戒することですね」
「行軍中も」
「普段のそれとは違って」
「警戒することですね」
「ああ、油断していると攫われるぞ」 
 敵にというのだ。
「だからな」
「それで、ですね」
「我々はですね」
「常に警戒して」
「それで捕虜にならないことですね」
「嬲り殺しにされたくないだろ」 
 久志は兵達にこのことを強い声で問うた。
「お前等も」
「人は絶対に死にますけれどね」
「寿命がありますから」
「死なない人なんていないですから」
「死ぬことは仕方ないにしても」
「それでも」
「そうだろ、どうせ死ぬなら楽に死にたいものだよ」
 兵達にこうも言った。
「誰だってな、だからな」
「それで、ですね」
「何とかですね」
「敵に捕まらないことですね」
「その努力をすることですね」
「ああ、そして捕まった奴が出たらな」
 捕虜はどうしても出る、それが戦というものだ。久志もそのことをわかっていてそのうえで言うのだ。 
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