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子猫を助けた勇気

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第一章

                子猫を助けた勇気
十橋勇輔は黒髪をショートにした小学六年の男の子だ、いつも勉強をしているので成績はかなりいい。
 だが大人しいというか何も言ったりしない性格なので担任からもこう言われた。
「十橋、お前はもっと積極的になってもな」
「いいですか」
「人間ちょっとは向かうものがないとな」 
 そうでないと、というのだ。
「よくないんだ、勉強が出来るだけじゃな」 
 それはいいがというのだ。
「やっぱり足りない、吉田松陰さんだってな」
「あの人もですか」
「いつも勉強しているだけでなくてな」
 学者として教師として立派なだけでなくというのだ。
「やると決めたら自分から動くな」
「そんな人だったんだ」
「だから凄かったんだ」
「そうでしたか」
「井伊直弼なんてのに処刑されたがな」 
 この人物には嫌悪を出していた。
「それでもな」
「凄いことが出来たんですね」
「ああ、だからな」
 それでというのだ。
「お前もな」
「向かうことですか」
「名前に勇ってあるだろ」
 担任は今度は彼の名前のことを話した。
「それなら勇気を出すんだ、勇気は悪いこと間違ったことに向かうことだ」
「悪いとか間違ったとか思ったら」
「その時にな」
 まさにというのだ。
「言ったり助けたり戦ったりな」
「そうすることですね」
「そうだ、お前もその気持ちを持つんだ」
 こう勇輔に言った、だが。
 勇輔はそれが自分に出来るとは思えなかった、彼はクラスの男子で一番大人しく勉強のことで何か聞かれることはあっても他で何か頼まれることもなかった、だが。
 ある日下校中にだった、一緒に帰っている同級生達が今自分達がいる川の土手の道の下の川辺で彼等を見て言った。
「おい、あれ」
「うわ、あれ原清じゃないか」
「あの馬鹿何やってるんだよ」
 近所の高校生だが通っている高校は県内でも最低レベルの不良しかいない高校で彼はそこでも札付きの不良だ。名前を原清一裕という。
 大柄で細長い顔で頭は丸坊主だ、ヤクザ者の様な顔と服装で手や足には刺青を入れている。いじめに落書き、万引きにカツアゲに性犯罪にシンナーに煙草にと色々な噂があるしかもその噂が捕まっていないだけという最低最悪の奴で小学生からも忌み嫌われている。
「また碌なことしてないんだろうな」
「前浅野さんの車壊したんだよな」
「ライトバンの上に乗って飛び跳ねたんだよな」
「シンナーやってそうしたんだよな」
「何でそんなことするんだよ」
「馬鹿だろ、あいつ」
「それで今度は何やってるんだ」
 その原清を見ると。
 猫をいじめていた、白い子猫だ。
「ニャーーーーー・・・・・・」
「こいつわしを引っ掻いたんや」 
 原清は猫を掴み上げつつ取り巻き達に言った、取り巻き達も如何にも頭が悪そうだ。
「それでや」
「今からですね」
「制裁加えてやるんですね」
「そうしますね」
「猫の分際でわしを引っ掻くとかな」
 猫を睨みながら言った。
「ふざけとるやろ」
「全くですね」
「原清さんにそんなことするなんて」
「本当にそうですよね」
「ふざけてますね」
「そうじゃ、だからじゃ」  
 それでというのだ。 
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