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麗しのヴァンパイア

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第二百九十六話

               第二百九十六話  ワインのこと
 博士は小田切君にワインのことでさらに話した。
「わしの技術では古代でも今の様なワインを飲めた、そしてビールもな」
「それじゃああまり意味は」
「いやいや、世の中を見るとな」
 当時のそれをというのだ。
「まだまだでな、早くじゃ」
「博士の技術まで、ですか」
「人類が到達するのを待っておったのじゃ」
「そうだったんですか」
「わしは種族を滅ぼしたことはない」
 その二百億年の人生の中でだ。
「一度もな」
「ただ嫌いな奴を殺すだけですね」
「左様、チンピラや小悪党は切り合でな」
 それでなのだ。
「遊びで嬲り殺しにしたりじゃ」
「生体実験に使っていますね」
「しかしじゃ」
 それでもというのだ。
「種族を滅ぼす趣味はじゃ」
「ないですか」
「左様、それでじゃ」
「人類もですか」
「別に何もせんかった」
 ただ気に入らない者を殺していただけだというのだ。
「これといってな」
「そうでしたか」
「うむ、ただ助けることもな」
 そうしたこともというのだ。
「せぬ、どの種族にもな」
「博士が手助けをするとですね」
「何もならんからな」
 だからだというのだ。
「わしは二百億年の間じゃ」
「そうしたことはですか」
「せんでな」
「古代の人達が酸っぱいワインを飲んでもですね」
「見ているだけでな」
「進歩の成り行きを見ていましたか」
「そうであった」 
 こう小田切君に話した。
「わしはな」
「手助けをするとよくないですか」
「人は進歩する、自分の力でな」
 だからだというのだ。
「わしがしてはならん、そう思ってじゃ」
「そうなんですね」
「そして今わしもそのワインを楽しんでおるのじゃ」
 こう小田切君に話した、そうしてまた茶を飲むのだった。それからは茶の話をしてワインの話はしなかった。


第二百九十六話   完


                2020・9・5 
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