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星河の覇皇

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第七十六部第二章 戦闘開始その二十三

「敵の戦力も減らしておきたい」
「決戦が出来ないまでに」
「降伏するしかないまでにですね」
「ティムールの戦力を減らしておきたい」
「そこまで叩きたいですか」
「そして一気にだ」
 そうしたいというのだ。
「そこまで考えている、その為にも今はな」
「攻めていきますね」
「ここで勝てずとも」
「それでも」
「そうしていく、損害は今は仕方がない」
 そうした戦いだからというのだ、損害が幾ら出ようとも退く訳にはいかない。退けばその時点で敗れる戦いだからこそ。
 両軍は激突を続けた、そうして両軍の損害が遂に七割を越え戦場に撃沈された両軍の艦艇の残骸と破片、そして将兵達の屍がまるで宙に浮かぶ墓標の様に無数に漂い戦場を覆うまでになりようやくだった。
 両軍は力尽きたのを見てだった、シャイターンは言った。
「これでだ」
「撤退ですね」
「この度は」
「そうする」
 モニターに出て来たアブーとフラームに答えた。
「オムダーマン軍も力尽きた、だからな」
「ここで、ですね」
「退きそして」
「再編成と補充、休息ですね」
「それに入りますね」
「そうする、これ以上の戦闘は不可能だ」
 今はというのだ。
「だからいいな」
「全軍撤退」
「そうしますね」
「この度はな、そしてだ」
 見れば全ての将兵が疲労の極みにある、もう誰も戦えないのは誰の目にも明らかなことだった。そしてシャイターンもまた。
 疲労の極みにあった、そのうえでそれぞれの防衛ラインの指揮にあたっている弟達に言ったのである。
「私も戦場を離脱し防衛ラインに帰ったならだ」
「そこで、ですね」
「休養ですね」
「それに入る、疲れた」
 疲労の極みにあるというのだ。
「今はもう戦えない」
「ではゆっくりとお休み下さい」
「ここは」
「そうする」
 こう弟達に言ってだった、シャイターンは軍を退かせた。自ら殿軍を務めたがこれはアッディーンも同じだった。
 シャイターンは後方に退くとまずは睡眠に入った、そうして丸一日眠って起きてから風呂に入ってだった。
 豪勢な食事を摂るがここで戦局を伝えに来た幕僚に言った。戦局は今は何の武力衝突も起こっていなかった。
「殿軍は私が務めたな」
「はい、そうされましたね」
「本来総司令官はその様なことをしてはならない」
「若し何かあればですね」
「その時は戦争が終わる」
 総司令官に若しものことがあればというのだ。
「それでな、敗北でな」
「だからですね」
「普通はしない、しかし私はだ」
「あえてされましたね」
「アッディーン大統領もな」
 対する彼もというのだ。
「そうしたのは何故か」
「閣下、そして大統領しかですか」
「殿軍が出来なかったからだ」
 それ故にというのだ。
「殿軍を務めたのだ」
「若し閣下以外が殿軍だったなら」
「なかっただろうがオムダーマン軍が攻めてくればだ」
 彼等も力尽きていたのでないと見ていた、しかし戦争は常に最悪の事態に備えるものだから殿軍は常に必要なのだ。 
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