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スイッチオン

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第二章

「決勝だけれど」
「ここで勝ったら全国だけれど」
「麻美ちゃんどうなの?」
「大丈夫?」
「やる気ある?」
「スイッチ入ってる?」
「調子いいの?」
 皆そこが不安だった。
「それで」
「どうなの?」
「一体」
「それで」
「それがね」
 部員の一人が言ってきた、それも暗い顔で。
「何が原因かわからないけれど」
「その口調だと」
「スイッチ入ってないの」
「そうなの」
「さっき見たけれど」
 その麻美をというのだ。
「もうね」
「全然なの」
「沈んでいて」
「それでなの」
「もう何もしたくない、無言の感じで」
 それでというのだ。
「俯いてたわ」
「それ最悪じゃない」
「今日決勝なのよ」
「今日勝ったら全国大会よ」
「その為には麻美ちゃんの力不可欠なのよ」
「伊達に背番号十じゃないのよ」
「まさに攻守の要なのよ」
 チームそれだとだ、部員達は驚愕している顔で口々に言った。
「その麻美ちゃんがそれって」
「負けるじゃない」
「早く何とかしないと」
「さもないと試合にすらならないわよ」
「早く麻美ちゃん連れて来て」
 自分達のところつまりロッカールームにというのだ。
「それでスイッチ入れないと」
「早くね」
「そうしてあげないと」
「試合負けるわよ」
「全国行けないわよ」
「折角皆と一緒に行こうって言ってたのに」
 それがというのだ。
「肝心の麻美ちゃんがそうだと」
「とにかく麻美ちゃんのスイッチ入れよう」
「そうしよう」
 こう言ってだった。
 麻美がロッカールームに来るとだ、ここで。
 その彼女を見て皆また言った。
「ああ、これは駄目だわ」
「お人形さんになってるわ」
「もう沈み込んでいるじゃない」
「一体何があったか知らないけれど」
「スイッチオフになってるわね」
「これは何とかしないと」
「本当に」
 部員達はロッカールームの中の席の一つに制服姿のまま座り込んで動かない麻美を見て言った。今回現地集合だったがそれはグラウンドが通っている学校のすぐ傍だったからだ。
 それでそうしたがだった。
「いや、普段のバスの中だとね」
「色々出来たけれど」
「現地集合が仇になったわね」
「どうしようかしら」
「一体ね」
「本当に」
「どうしたものかしら」
 皆本当に困った、だが。
 ここでだ、彼女達は口々に言った。 
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