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カルボナーラ

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第四章

「そうなんだよ」
「そうか」
「向こうの何かの料理が元かも知れないけれどな」
「こっちのものを使ってか」
「出来たものなんだよ」
「そうなんだな」
「俺達向けの料理だろ」
 コリアノフは笑ってこうも言った。
「正直言って」
「アメリカ人のか」
「俺はリトアニア系、あんたはイタリア系でもな」
「俺はそのイタリアだけれどな」
「今はアメリカ人だろ」
「生まれもな」
 そうだというのだ。
「親の代からのな」
「俺もだよ、だからな」
「足の好みはか」
「アメリカになってるな」
「だからだな」
「ああ、それでな」
 それ故にというのだ。
「俺達にも合ってるな」
「そうだろ」
「かなりな、しかしイギリスだとな」
 マリオネッチは自分が戦争の時にいたこの国の話もした。
「ものがあってもな」
「こうしたのは出来なかったか」
「全くな、作ってもらってもな」
 食材を渡してもというのだ。
「どうせな」
「まともなもの出なかったか」
「鰻のゼリーとか魚丸ごと使ったパイとかな」
「そうしたのばかりか」
「そんな見るからにまずいものばかりでな」 
 それでというのだ。
「とてもな」
「こんなのはか」
「発想すらな」
 その時点でというのだ。
「なかったぜ」
「イギリスだからか」
「ああ、本当にな」 
 それこそという口調での言葉だった。
「イギリスだとずっと基地で食ってたさ」
「それはご愁傷様だな」
「ああ、戦争に行くにもな」
 マリオネッチはカルボナーラを食べつつこうも言った。
「行く場所次第だな」
「最前線に行ったら命が危ういしな」
「それでイタリアではカルボナーラが出来て」
「イギリスじゃ何も出なかった」
「そうだな」
「本当にな」
 そこはというのだ。
「それぞれだな」
「全くだな、しかしな」
 マリオネッチは食べながら言った。
「これ広まるぜ」
「美味いからだな」
「本当に俺達好みの味だからな」
 アメリカ人の舌に合っているからだというのだ。
「絶対にな」
「広まるか」
「それで定着するぜ」
「だろうな、この味はな」
「そうなるだろ」
「絶対にな」
 こう言い切った、そしてだった。
 マリオネッチはワインも飲んだ、カルボナーラはそれにも合った。
 スパゲティカルボナーラは実際にアメリカ全土に広まり他の国にも及んだ、そして。
 今では世界的に食べられる様になった、そのはじまりはアメリカ軍にあってイタリアで生まれたという。料理の面白い逸話の一つであろうか。


カルボナーラ   完


                 2020・8・15 
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