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優勝した時に

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第四章

「だからな」
「ソフトバンクなのね」
「あのチームが本命でな」
 それでというのだ。
「優勝もな」
「ソフトバンクね」
「そうだろうな、それでセリーグはな」
「忌々しいわね」
「俺もそう思うけれど仕方ないだろ」 
 このことはというのだ。
「今も順位見ろよ」
「首位ね」
 順位は嘘を吐かない、未可子も忌々しいがこのことは認めた。
「そうね」
「だからな」
「優勝も」
「巨人だろ。まあクライマックスがあるな」
「そこで勝てば優勝ね」
「いや、阪神クライマックス弱いよな」
 智昭は今度はこちらの話をした。
「そうだよな」
「それは気のせいよ」
「気のせいじゃないだろ」
 智昭はお好み焼きでご飯を食べつつ未可子に反論した。
「実際にな」
「クライマックス弱いっていうのね」
「ああ」
 そうだという返事だった。
「本当にな」
「それでなのね」
「巨人が優勝したらな」 
 その時はというのだ。
「クライマックスには一勝のハンデ付くこともあって」
「巨人有利なの」
「今年阪神巨人苦手だしな」
 未可子にとってはこのことも忌々しいことだ、邪悪の権化に対して愛する阪神が敗れてしまうことが。
「だからな」
「それでなのね」
「ああ、もうな」 
 それこそというのだ。
「阪神の優勝はな」
「つまり私達の結婚も」
「今年は難しいだろ」
「それは違うと言っておくから」
「本当に今年優勝するか?」
「当たり前でしょ」
 未可子の言葉は変わらなかった。
「もうそれはね」
「そうなるか?」
「なるわよ、十月楽しみにしておいて」
「ソフトバンク優勝の方が可能性高いと思うけれどな」
 智昭は最後はぼやいた、そうしてだった。
 今年は結婚はない、未可子との結婚は彼女が三十歳になった時だと心の中で思った。そうして仕事も彼女とのことも頑張っていた、そして。 
 やはり巨人が優勝した、この年も邪悪が高笑いした。阪神もクライマックス出場は決まったがそれでもだ。
 智昭は二人が同棲しているマンションで朝のニュースの野球の話を観つつ言った。
「ここ関西だから凄い阪神押してるけれどな」
「それでもよね」
「ああ、本当にな」
 現実はというのだ。
「無慈悲だからな」
「それでなのね」
「もう巨人有利は事実だよ」
「じゃあ阪神がクライマックス決勝に出ても」
「巨人と相性悪くてな」
 このシーズンそうであってというのだ。 
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