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戦国異伝供書

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第百十話 兄と弟その九

「それでじゃ」
「あの者達を鍛えていきますか」
「奥羽は九郎判官殿の前から馬は知られておるが」
 源義経が奥州藤原氏から騎馬の戦の仕方を教えてもらう前からだというのだ。
「しかしな」
「馬だけでなく」
「鉄砲もじゃ、しかも奥羽で鉄砲は殆どないな」
「ですな、ここにはまだ」
「だからな」
「尚更ですな」
「鉄砲をふんだんに使ってな」
 そしてというのだ。
「戦っていくぞ」
「そうですな、では」
「わしの初陣をじゃな」
「吉報をお待ちしています」
 兄に微笑んで応えた。
「是非」
「それではな」
「しかし織田殿は」
 小次郎はその彼のことも話した。
「随分と、ですな」
「凄い御仁であるな」
「もう上洛をされて」
「天下の国の三分の一位を手に入れられた」
「瞬く間に」
「うつけ殿というのはじゃ」
 それはというと。
「ただ傾いておったのをな」
「言っていただけですか」
「そうであったとな」
「兄上はお考えですか」
「わしも傾いておるぞ」
 政宗は笑って話した。
「そうであるな」
「その振る舞いですか」
「そうじゃ、恰好をつけてこそじゃ」
 それこそというのだ。
「よい、だからな」
「それで、ですな」
「わしは傾いてな」
「そうしてですな」
「恰好をつけてじゃ」
 そうしてというのだ。
「やっていくぞ」
「それでは」
「その様にしていく、だからな」
「兄上も、ですか」
「傾いていく、そしてその傾きもな」
 これもというのだ。
「織田殿をじゃ」
「超えますか」
「何時か戦に勝ってな」
「天下を奪うだけでなく」
「さらにじゃ」
 政宗は笑って話した。
「傾き、恰好でもな」
「織田殿を超えますか」
「青より水色じゃ」
 家の色の話もした。
「それを天下の色にするぞ」
「そうですか」
「しかしな」
「しかし?」
「織田殿も弟殿を大事にされておる」
 信長のこのことも話した。
「ご自身の名代としてな」
「そうなのですか」
「だからわしもな」
「それがしを、ですか」
「己の名代としてな」
 それでというのだ。 
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