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犬に酒は

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第二章

「飲ませないことよ」
「そうしないと駄目か」
「最近ネットの動画で飲ませてふらふらしてるの流してるけれど」
「あれは駄目か」
「本当に命の危険があるから」
「少しの量でか」
「そう、まして今の私みたいにね」
 その酒を缶からごくごく飲んで言う、五〇〇のそれをもう二本も空けていて今は三本目にかかっている。
「こうして強い一気に飲めるお酒飲んだら」
「余計に駄目か」
「絶対に死ぬから」
 そうなるからだというのだ。
「だからどうしてもっていうなら」
「犬に酒飲ませたいならか」
「犬用のお酒売ってるから」
「そうなんだな」
「そっち飲ませてね、けれどね」
 それでもとだ、妹はまだ飲んでいない兄にさらに言った。
「まあ普通に犬にお酒はね」
「お酒は?」
「必要ないでしょ」
 こう言うのだった。
「特に飲みたいって思っていないでしょ」
「まあ興味を持つことはあってもな」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「飲ませることもないわよ」
「そうだよな」
「というか飲ませることは絶対に駄目だから」
「冗談でも興味本位でもか」
「飲ませないことよ」
「それがココアの為だな」
「ええ、あとね」
 遥はさらに飲みつつ言った。
「私今飲んでるから」
「それは見たらわかるからな」
「いや、よくやったわ」
「何がだよ」
「ホークスよ、遂にマジック点灯でしょ」
「そういえばお前鷹党だったな」
 兄はここで妹の野球の趣味のことを話した。
「それはよかったな」
「だから今嬉しくて飲んでるの」
「そうだよな、俺は今年はどうでもいいな」 
 沈んだ顔での言葉だった。
「ベイスターズはな」
「どうにもよね」
「三年前シリーズに出たのにな」
「残念な状況ね」
「巨人ばかり強くてな」
 それでとだ、ここでようやくビールを飲みつつ言った。
「本当に」
「セリーグ今年はさっぱりね」
「だからな」
「野球のことはなの」
「嬉しくとも何ともないな」
「そうよね」
「まあ祝える時は祝えばいいな」
 こう言って納得した。
「それなら」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「今ココア何処にいるの?」
 兄にすっかり酔った顔で問うた。
「それで」
「そういえば何処だ?」
 兄も言われて周りを見回した、そのうえでこの言葉を出した。 
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