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星河の覇皇

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第七十六部第一章 動きはじめる両軍その四十六

「彼はな」
「彼がいる限りですね」
「エウロパは苦しめられるな」
「彼が連合の軍備を万全にしていくので」
「とてつもない敵が育つ」
 その八条の手でだ。
「それが厄介だ」
「このままですね」
「あの御仁は連合屈指の企業グループの経営一族の嫡男だからな」
「いずれはですね」
「そのグループの総帥の座を継ぐが」
 父である人物のだ。
「そうなるだろうがそれまではな」
「あの御仁が進める政策にですね」
 こちらを攻めないがというのだ。
「苦しめられていきますね」
「そうなる、どうにかしたいがな」
「どうにもならないですね」
「待つしかない」
 八条についてはというのだ。
「彼が政治の座から退くのをな」
「それしかないですね」
「待つのもな」
「やはり政治ですね」
「そして軍略でもある」
 ここで話が戻った。
「強敵が去るのを待つのもな」
「それもまたですね」
「軍事だ、どうしようもないならな」
「そのどうしようもない時をですね」
「終わるのを待つしかない」
「例えそれが不本意でも」
「待ってだ」
 そのうえでというのだ。
「終わってからだ」
「動くべきですね」
「八条長官を害することも出来ない」
「そのスキャンダルを暴くことも」
「それは出来ない」
 それはというのだ。
「彼は清廉潔白だ、富豪の家だからな」
「汚職をする必要はなく」
「しかも女性にも清潔だ」
「だからスキャンダルとはですね」
「無縁だからな」
 そうした人物だからというのだ。
「工作も意味がない、ましてや最後の手段だが」
「暗殺ですね」
「私は好きではないが」
「いざとなればですね」
「考えるしかないが」
 尚タンホイザーはモンサルヴァート以上にこうした工作を好まない、騎士道として相応しくないと考えてのことだ。
「それもだ」
「今の工作の拠点がない状況では」
「難しい」
 それすらもというのだ。
「むしろ不可能だ」
「そうした状況ですね」
「連合の中にいるとだ」
 それこそというのだ。
「また違うだろうが」
「我々はエウロパです」
「それではどうにもならない」
 工作を仕掛けること自体が不可能に近いというのだ。
「だからな」
「どうしようもないですね」
「流石にな、だからだ」
「待ちますか」
「そうする、そして彼がいなくなればだ」
 その時はというのだ。
「彼等の動きが鈍ればな」
「その間にですね」
「我々はより速く進みだ」
「越えますか」
「そうしなければならない」
「そうですね。ただどうしても私としましては」
「卿の性分としてはだな」
 モンサルヴァートもわかっていた、タンホイザーの性格は。それで彼の考えを汲み取って応えたのである。 
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