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Fate/magic girl-錬鉄の弓兵と魔法少女-

作者:セリカ
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A's編
  第六十二話 夜明けの密会と平穏な放課後

 早朝、冬のこの時期にまだ朝日も昇っておらず、薄暗い海鳴公園で一人ベンチに座っている少年がいた。

 少年は何をするわけでもなく、瞳を閉じてベンチに座っていた。

 勿論、眠っているわけではない。

 そんな少年の座るベンチの背もたれに降り立つ一羽の鋼の鳥。

 その鋼の鳥が飛んできた方向から歩いて来る髪をポニーテールにした女性。

「早朝から呼び出してすまない。シグナム」
「構わない。急に呼びだしたという事は何かあったのだろう」
「ああ。厄介事がな」

 シグナムは士郎の横に腰をおろし、静かに士郎は語りだした。




side 士郎

 プレシアから管理局の闇の書の情報を見せてもらった翌朝。

 八神家に使い魔を放ち、代表で一人に来てもらう事にした。
 そして、シグナムとこうして向かい合っている。

「これが管理局の資料だ。
 一応ミッド語と日本語、両方用意してるが」
「ミッド語なら大丈夫だ。
 こちらの言葉はまだ覚えきれてなくてな」

 シグナムの言葉に頷き、ミッド語で書かれた資料を渡す。

 俺が渡した資料にざっと目を通すシグナム。
 そして、資料を読み進めるにつれ表情を歪めるシグナム。

「資料に書かれている通り、過去の主は皆、例外なく死亡。
 さらに完成させても純粋な破壊にしか使用は出来ないとある」
「……そんな、それでは主はやては」
「過去の通りなら、完成させてもさせなくても死ぬ事になる」

 俯くシグナム。

「我らに主はやてを救う事は出来ないというのか」

 震える声と頬を流れる光るモノに、視線を逸らすように空を見上げる。

「過去、死んだからといって今回もそうなると限らない。
 俺は諦めない。
 シグナム、お前達守護騎士は」
「言われるまでもない!
 我ら守護騎士、ヴォルケンリッター。
 主はやての命の危機を黙って受け入れる事が出来るはずがあるか」

 シグナムが俺を睨んでくる。
 そうでなくては。

「俺もはやてが死ぬ事を黙って受け入れる事も出来ないし、シグナム達がやっている事が無意味になるなんて許せない」

 ベンチから立ち上がり、シグナムの方に向く。

「幸いにもミッドの技術に関して優秀な協力者が我が家に住むようになったしな。
 シグナム、現状取れる行動は?」

 シグナムが瞳を閉じ、少し思案し、考えが纏まったのかしっかりとこちらを見つめてくる。

「闇の書の蒐集を止めても主はやての呪いは止まらん。
 現状はこのまま蒐集を続ける。
 あとは我々がなぜ記憶を失っているかだ。
 この辺は回復や補助が専門のシャマルの方が役立つだろう。
 過去の事を思い出せないか調べてみる」
「そうだな。蒐集を止めてもはやての呪いが止まらないならその方がいいか。
 だが完成するときは一声かけてくれよ。
 あとこちらは引き続き管理局側に他の資料がないか、調べてみるさ。
 機会があれば協力者の技術者も紹介する」
「ああ、頼む」

 さてそろそろ本格的に夜が明ける。

「さて話し合いは一旦この辺にしておこうか。
 一般人も動き出す」
「ああ」

 シグナムも立ち上がる。
 ベンチに留っている鋼の鳥を手のひらに載せ、差し出す。

「何かあったらこれで呼び出してくれ。
 嘴に一滴、血を与えてやればいいから」
「心得た。
 その、衛宮。
 お前にはなんと感謝していいのか」
「まだ早いさ。
 はやてが助かって、シグナム達が平穏に暮らせるようになってからいってくれ」
「それでもだ。
 それでも、改めて礼を言いたい。
 感謝する。衛宮」
「なら、ありがたく受け取ろう」

 俺は相手からの感謝を受け取ろうとしないと、師でもある女性に注意された事を思い出し、一度死にかけても変わらないものだと内心苦笑しながら、シグナムの感謝を受け取る。

「ではな」
「ああ」

 公園から立ち去るシグナムを見送り、しばらくしてから俺も公園を後にする。

 この情報をシグナム達に渡した事で、少しでも進展があればいいのだが。

 僅かな期待を胸に家に戻る。



 シグナムに闇の書の情報を渡して間もなく一週間が過ぎた。
 この一週間はリンディさん達からシグナム達を補足したという報告もなく、プレシアにはこっそりと闇の書の調査も行ってもらっているが、コレといった進展は今のところない。

 で俺の日常はというと

「プレシア、朝だぞ」
「……ん、ええ」

 早朝の鍛錬から戻ったら、まずプレシアを起こし、朝食の準備を始める。

 ちなみに最近の朝と夜の鍛錬はなのはとフェイト、アルフ、ユーノを交えてやることが多い。
 なのははまだ完全に魔力が戻っていないし、フェイトもデバイスがないためちょっとした模擬戦はするがそこまで本格的なのはあまりしない。
 ユーノは結界などの補助や俺と共になのはの無茶を止める事が主だ。
 そういうわけで最近の鍛錬の相手はもっぱら

「隙ありっ!」
「違う、誘いだ」

 アルフである。

 どうも初戦でザフィーラに負けた事を気にしているらしい。

 もっとも単純な力勝負でも経験でもザフィーラの方が上だ。
 そのため真正面から受け止めるのではなく、受け流し、動きを読んでのカウンターなどを教えているが、アルフの性格上、一撃が大ぶりになりやすく、誘いに弱い。
 所詮は付け焼刃で時間が足りない。
 
 それでも筋はいいから短期戦ならそこそこいけるだろう。
 ……話が逸れたな。

 プレシアを起こし、朝食の食器などを準備をしていると降りてくるプレシア。

 ちなみにフェイトのお弁当はリンディさんとプレシアが基本的に交互に作っているので、フェイトのお弁当を作る日は俺と共に朝食の準備とお弁当の準備をしている。

 朝のんびりしているようだが、夜のうちに下拵えや準備をしっかりして、お弁当のメニューの材料も俺に渡す辺り、しっかり考えている。

「それじゃ、いってくるわね」
「ああ、いってらっしゃい」

 アリシアの墓前で手を合わせ、転送ポートのがあるハラオウン家の部屋に向かうプレシア。
 勿論、プレシアは合鍵を持っている。
 プレシアが弁当担当の時は少し早めに出て、ハラオウン家で直接フェイトに手渡している。

 そして、俺も

「いってきます」

 朝食の食器を片づけ、誰もいない家に挨拶をして、学校に向かう。

 先週、転校したフェイトはというと結構あっさりとクラスに馴染んでいる。

 なのはやアリサ、すずかという友人の存在もあるのだろうが、体育でのドッヂボールでのスーパープレイ以降は男子達には可愛くて、運動神経が良いという事でサッカーなどの誘いもあるようだ。

 学校が終わり、バイトがあれば翠屋か月村邸に、なければなのは達に付き合って行動を共にして、夜の鍛錬、そして夕飯を食べて、魔術鍛錬、就寝。

 これが俺の最近の日常である。

 そして騒動が起きたのはそんな日常のある日である。




side なのは

 授業終了のチャイムがなって、今日も一日学校で授業が終わりました。

「ふはぁ~、ふぁ眠かった~」

 瞼をこすって、伸びをするアリサちゃんを見てすずかちゃんがにっこりと笑った。

「アリサちゃん、ちょっとウトウトしてたね」
「だって退屈なんだもん。私の席窓際だから日差しがポカポカ温かいし」

 その様子にすずかちゃんと一緒に私も笑う。

「じゃあ、ありがとうな、フェイト!」
「うん、また明日ね」
「なんだよお前、また忘れものをして。
 フェイトに借りたのかぁ?」
「うせぇ~なぁ、たまたまだよ、たまたま!」
「うっはは! じゃあな、フェイト、また明日」
「うん、バイバイ」

 クラスメートの男の子たちと話していたフェイトちゃんに私は近づいて声をかける。

「フェイトちゃん」
「あっ、なのは」

 帰る準備はしっかりできてるみたいで鞄を持つフェイトちゃん。
 そんな私達を見て

「さぁ! 速く帰って昨日の映画の続きを見るわよ!」

 さっきまでウトウトしてたアリサちゃんが元気に立ち上がる。

「士郎! 今日も確かすずかの家だったわね」
「……そうだが、なんで把握している」
「そりゃ、あんたの動きを把握した方が放課後のプランを考えやすいからよ」

 帰る準備が終わって立ち上がった士郎君に、エッヘンと胸を張るアリサちゃん。

 そんなアリサちゃんの様子に少し項垂れる士郎君。
 「や……悪…に似………」
 その時聞えた言葉は何だったんだろう。
 悪魔って聞こえたけど

「というわけですずか、今日もすずかの家でいい?」
「勿論、なのはちゃん、フェイトちゃん準備いい?」
「「うん」」

 そんなアリサちゃんと士郎君のやり取りを見て笑いながら、すずかちゃんの言葉に私とフェイトちゃんは揃って返事を返した。

 士郎君はバイト、アリサちゃん、すずかちゃんはお稽古があったりするけど、放課後はだいたい、いつも五人一緒なのです。

「フェイトちゃんも、もうすっかり学校には慣れた?」
「うん、少しは……たぶん」

 すずかちゃんの家に向かう途中は転校してきて一週間が過ぎたフェイトちゃんの事とこの前の体育でのスーパープレイの事を話しながらにぎやかに向かう。

 そんな中すずかちゃんの家に到着。

 士郎君は

「先に部屋に行っててくれ」
「「は~い」」
「サッサと来なさいよ」

 執事服に着替えてお茶の用意に一旦お別れ。
 そんな士郎君の背中を少し困惑気味に見送るフェイトちゃん。

「フェイトちゃん、どうしたの?」
「えっと、お茶とか士郎に任せっきりでいいのかなって」
「いいのよ。逆に士郎が気にするわよ」
「そうだね」

 アリサちゃんとすずかちゃんの言うとおり。

 士郎君の目的がアルバイトとはいえ、私達がいる時に一緒に遊んだりしてるけど、執事服を着て、お茶の用意をしてくれる。
 前にその事を言ったら

「忍さんは気にしなくていいといってくれるが、これでもお金を貰ってるからな。
 すずか達のお茶やおやつの準備ぐらいはさせてくれ」

 とお願いされた。

 初めは私はあまり乗り気ではなかったんだけど

「ふふ、ならこの時間は私達の専属執事ってことね」
「しょうがないな」

 アリサちゃんとすずかちゃんは士郎君の言葉をあっさり受け入れていた。
 だけどお茶やおやつの準備を任せても、それ以外はいつも通りのアリサちゃんとすずかちゃんと友達としての言葉を使う士郎君に私もすぐに納得した。

 それに士郎君のお茶やおいしいおやつが食べられるというのは魅力的なのです。

「お待たせ」
「あ、来た来た」

 映画の準備をしているとお茶一式とおやつが乗ったカートを押して部屋に入ってくる士郎君。

 紅茶が注がれて、次に置かれた大皿の上には二種類のパウンドケーキ。

 片方は色からココアかな?
 もう片方はなんだろう?

「「「「いただきます」」」」

 士郎君のお茶で喉を潤して、パウンドケーキを手に取る。
 一口食べてすぐに分かった。

「これってオレンジ?」
「ああ、みかん類は今がシーズンだからな」

 フェイトちゃんの言葉に頷く士郎君。
 士郎君は旬の果物を使ったお菓子をよく作る。
 士郎君曰く「旬のものを使うのが一番おいしい」とのこと。

「あれ? でもパウンドケーキってしっとりさせるために時間がかかるんじゃ」

 お母さんが作っているのを見た事があるからそんな事を思ったけど

「昨日はアリサやなのは、フェイトが帰ってからもここにいたからな。
 その間に準備してた」

 さ、さすが士郎君。

「昨日のうちに準備するってすごいわね。
 ていうか今日、すずかの家に集まるってわかってたの」
「昨日はアリサとすずかはバイオリンで早めに解散したが、今日は稽古も塾もない。
 なら昨日の映画の続きを見るのはおおよそ予測できていた」

 アリサちゃんの言葉に予測できて当然といわんばかりの士郎君。
 なんだかかっこいい。

「なんですずかのはともかく、私の塾やお稽古の予定を知ってんのよ」
「俺達と遊んでいて間違って遅刻なんてさせるわけにはいかないし、おやつを作る上で人数がわかった方が作りやすいんだ」
「ま、まあいいわ。
 昨日の映画の続きを見ましょう」
「そうだね」

 そんな事まで知ってるんだ。

 士郎君のアルバイトの予定を知っているアリサちゃんもすごいけど、私達の予定も知っている士郎君もすごい。
 そんな事に驚きつつ、始まった映画を紅茶とお菓子を堪能しつつ楽しんだ夕方なのでした。 
 

 
後書き
というわけで今週はサウンドステージネタでした。

来週も引き続きサウンドステージのスパラクーアネタです。

遂ににじファン時代に追いつきます。

それではまた来週にお会いしましょう。

ではでは 
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