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魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~

作者:かやちゃ
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最終章:無限の可能性
  第263話「湧き続ける闘志」

 
前書き
久しぶりに優輝達Side。なお、優輝の出番は次回に回されます。
 

 










「次、来るよ!!」

「死に物狂いで防げ!!」

「分散せず、けど密集し過ぎずに戦え!」

 いくつもの世界で指示が飛び、魔法が、霊術が、攻撃が放たれる。
 戦える者は、誰もが足掻いていた。そうでない者も、祈っていた。
 それらの“意志”が、祈りが、戦う者達を強くする。
 ただ神に蹂躙される訳にはいかないと、“世界そのもの”が足掻く。

「なんだ……なんなんだ、これは……!?」

 攻撃が通らない訳ではない。
 物理的であれば、最早蹂躙すら烏滸がましい程に圧倒している。
 しかし、人々は足掻き続ける。
 世界の記憶に刻まれた神や英雄が先導し、決して終わりはしないと魂で吼える。

「これが、ただの人間だと言うのか……!?」

 狼狽える一人の“天使”の背後から、名も無き英雄の一人が斬りかかる。

「ッ―――!?」

「人間を、舐めるなぁああああああっ!!」

 “意志”と共に放たれる気迫に、“天使”が僅かに圧倒される。
 その瞬間、障壁と拮抗していたその一撃が“天使”を一刀両断にした。

「がぁっ!?」

 だが、直後のその名も無き英雄は理力の槍に貫かれる。

「まだだッ!!」

 それを、“意志”で覆す。
 本来であれば致命傷。それを無視して、“天使”に食らいつく。

「ぐぅうううう……ッ!!」

 体が貫かれ、引き裂かれる。
 負けじと武器を突き刺し、“天使”を引き裂く。
 直後、理力の衝撃波で吹き飛ばされ、距離を離されてしまう。

「もう一度だ!!」

 攻撃を掻い潜り、食らいつく。
 それを繰り返し、何とか人々はイリスの勢力に抗う。
 ルビアやサフィアの牽制もあり、ギリギリ拮抗出来ていた。















「ぉおおおおおおっ!!」

「やぁああああっ!!」

 一方、ルビアとサフィアがいる無人世界。
 そこで、緋雪と帝が己の力のみで障壁ごと“天使”を殴り飛ばす。
 身体能力においては、トップを張る二人だ。
 単純な戦闘力でもイリスの勢力と張り合えていた。

「帝もだけど、緋雪もかなり強くなったわね……」

「どっちも、予想以上だったな」

「そう、ね!」

 いくら張り合えると言っても、牽制を続けるルビアとサフィアを守り切るには圧倒的に手が足りない。
 そこを補うように、優奈とつい先ほど合流した優輝が攻撃を捌く。

「ふっ!」

「ぐっ!?」

「そこっ!!」

 否、それだけじゃなく、隙を見ては反撃で数を減らしていた。
 元々、優輝が合流する前から戦闘は同じ流れだったのだ。
 そこへ優輝が加われば、こうして反撃に転じる事もできる。

「……そろそろお出ましだろう」

「そうね」

 頃合いだと、二人は呟く。
 直後、敵陣で暴れまわっていた緋雪と帝が吹き飛ばされてくる。

「ッ、強いのが来たよ!」

「想定通りだ。相手も、余程この牽制が邪魔と見える」

 そう。牽制を止めるため、追加の戦力を送ってきたのだ。
 それも、ただ洗脳した有象無象の神々ではなく、きっちり実力がある神を。

「ッッ!!」

 優輝と優奈で理力を展開し、“性質”による干渉からルビア達を守る。
 だが、二人は理力の出力では別段強い訳ではない。
 一時凌ぎは出来ても、長くは持たないだろう。

「はぁっ!!」

 そこで、緋雪が殴り掛かる。
 規格外の身体能力を生かし、一瞬で敵に肉薄する。

「甘い!」

 だが、それを受け止められた上で叩き落された。
 ガードは出来ていたが、間違いなく緋雪を上回る力を持っていた。

「ぉおっ!!」

「無駄だ!」

 すかさず帝も殴り掛かるが、巨大な障壁に阻まれた。
 直後、“天使”に囲まれ、すぐには身動きできなくなる。

「貴様らの悉くを“蹂躙”してやろう」

「ここで“絶望”に落ちてもらう」

 その“天使”らを率いる神であろう、二人の男が言う。
 片方は、緋雪を肉弾戦で叩き落す程だ。
 もう片方も同等の実力と見るべきだろう。

「……なるほど、それぞれ“蹂躙”と“絶望”の“性質”か。……わざわざ教えるという事は……ちっ、厄介な」

 言葉の節々に感じる力に、どういった“性質”なのか優輝は見抜く。
 同時に、わざわざそれを教えたという事実に、舌打ちした。

「どういう事?“性質”がわかっているなら、対処法も……」

「逆だ。今回の場合は、敢えて相手に教える事で、“性質”の効果を高めるんだ。……少しでも“性質”に沿った状況に陥れば、それだけで効いてしまうからな」

 体勢を立て直した緋雪が尋ね、優輝がそれに答える。
 状況そのものに干渉する“性質”故に、意識するだけで“性質”が働く。
 だからこそ、敵は敢えて“性質”を口にしたのだ。

「単純な実力も強いと見たが……」

「どうします?どうしてもというのなら、牽制を中断しても―――」

「いいや、予定通りに行く。緋雪!帝!」

「任せて!」

「おうよ!」

 サフィアの言葉を遮るように、優輝は二人の名前を呼ぶ。
 呼ばれた二人はすぐさまそれぞれ神へと挑みかかる。

「……でしょーね」

「二人がそれぞれの神を相手して、僕らで護衛を続ける。いいな?」

「まぁ、予想していましたし、いいですよー」

 ルビアは優輝の返答を予想していたのか、すんなりと牽制を続けた。
 直後、ルビアとサフィアの傍で攻撃と障壁がぶつかり合う火花が散るが、最早二人はその事を気にせずにいる。

「「ッッ!!」」

 一方で、緋雪が“絶望の性質”の神に。
 帝が“蹂躙の性質”の神に攻撃を仕掛ける。

「はっ!やぁっ!!」

「ぉおっ!!っ、らぁっ!!」

 拳を打ち、蹴りを放つ。
 一撃一撃を全力で放ち、攻め立てる。
 だが、今回の敵は洗脳されておらず、尚且つ実力の高い神だ。
 全ての攻撃を障壁で受け止められるか躱されて対処される。

「ッ、合わせて!」

「おうっ!」

 攻撃を受け止めさせ、帝が追撃を叩き込む。
 帝が相手していた神がフリーになるが、受け止められた反動を利用した緋雪が、即座にそちら側に魔力の斬撃と砲撃魔法を飛ばす。

「ぐぅっ……!!」

 相手二人もそれに対処し、回避と障壁で攻撃が凌がれる。
 直後、反撃が二人に迫るが、帝が挟み撃ちされるような形で請け負う。
 両腕を左右に突き出し、何とか攻撃を受け止める。

「ッッ!!」

 それを読んでいた緋雪が、“絶望の性質”の神の懐へ入る。
 そして、渾身の一撃を放った。

「ぐ、ぁっ!?」

「今!!」

「ッ、っらぁっ!!」

 障壁を破り、神を吹き飛ばす。
 即座に帝も体勢を変え、回し蹴りでもう一人を飛び退かせた。

「“ツェアシュテールング”!!」

 直後、緋雪は手をそれぞれの神に向けて“瞳”を握り潰す。
 直接内部を攻撃する破壊の瞳すら理力で防がれるが、目晦ましにはなった。

「波ぁあああああっ!!」

「甘い!」

「がっ!?」

 そこへ、帝が気による砲撃を放つ。
 しかし、転移で躱され、頭上から攻撃を食らってしまう。

「ッ!」

「余所見していていいのか?」

「ぐっ……はぁあっ!!」

 叩き落された帝を気にする間もなく、次は緋雪が狙われる。
 もう一人の神からの理力の砲撃を砲撃魔法で相殺し、“蹂躙の性質”の神からの直接攻撃を腕を犠牲にして受け止める。
 同時に、魔力を放出して間合いを離したが……

「無駄だ」

「っ……!?」

 空を塗り潰すかの如き理力の鉄槌に、叩き落された。

「ぐっ……!」

 すぐさま体勢を立て直し、地面に着地して転移で場所を変える。
 その際、優輝達の方を見たが、ルビア達の護衛をしていて余裕はなさそうだった。

「(ううん、違う。私達だけでやれる……!)」

 戦闘の流れとしては、相手の方が実力が上だと緋雪は確信していた。
 だが、それでも倒せると、そう思考を断じた。

「だりゃぁあああああっ!!」

 帝も同じ考えなのだろう。
 叩き落されてから、復帰と同時に再び殴り掛かっていった。
 速度も力もさらに上昇し、緋雪すら上回る身体能力だ。

「ずぁっ!!」

 気合を込めた二撃が、それぞれの神に受け止められる。
 まだ、威力が足りないのだ。

「こんなもんじゃ、ねぇえええええええええっ!!」

 しかし、そこからさらに帝はパワーアップする。
 帝が再現するその力への想いと憧れが、帝の力を底上げする。

「ぉおおおおおおおおおっ!!」

 拳を打つ、打つ、打つ。
 最初は回避されていたが、徐々に受け止めるようになってくる。

「っ……!」

「殴り掛かるだけが、能じゃないんだよ……!」

 さらに、緋雪がバインドで動きを阻害する。
 僅かな阻害であっても、帝の攻撃に対しては十分だったようで、拳が当たる。

「……それがどうした?」

 だが、“絶望の性質”の神はまるで効いていないように嗤う。
 “性質”が“絶望”なだけあり、心を挫きに来ていた。

「―――それこそどうした」

 しかし、帝には効かない。
 この程度ではないと、さらに力が上昇する。

「はぁあああああああああ………!!」

 気が膨れ上がる。
 壁を一つ、二つ超えていくかのように、威圧感も増していく。
 尤も、そんな隙だらけな状態を敵は見逃さないだろう。

「切り裂け、焔閃!!」

   ―――“Lævateinn(レーヴァテイン)

 故に、その間の時間を緋雪が稼ぐ。

「……なに?」

 攻撃自体は障壁で防がれた。
 しかし、神二人は目の前の現象に疑問の声を漏らす。

「(力が落ちない……だと?)」

 “絶望”と“蹂躙”の“性質”は、二つが合わさる事でさらに効果を増す。
 相手の力を“蹂躙”し、“絶望”を植え付ける事で、自身に有利な状況を作り出す。
 その上でさらに“蹂躙”を繰り返し、決死の反撃すらも無効化する事で“絶望”させ、相手を弱体化させる事ができるのだ。
 ……だというのに、緋雪と帝の力は一切衰えていない。
 むしろ、さらに力強くなっていた。

「はぁああああっ!!!」

 直後、帝が気を開放する。
 体中から稲妻のようなものが迸る。

「片方は任せたぞ」

 緋雪にそういうや否や、瞬時に“蹂躙の性質”の神に肉薄した。
 即座に神も防御態勢を取るが、帝はお構いなしに吹き飛ばす。

「任されたよ……!」

 一方で、緋雪も残った神を相手に果敢に斬りかかった。
 一撃一撃を放つ度に業火を撒き散らし、理力の障壁を打つ。

「ッ、りゃりゃりゃりゃりゃぁっ!!」

 拳で、爪で、魔力で操ったシャルラッハロートで、連撃を繰り返す。
 その悉くを容易く防がれ、躱される。

「もっと!」

 そこへ、魔晶石による援護射撃も加わる。

「もっと!!」

 一つ、二つ、三つ、四つ……

「もっと!!!」

 五つ、六つ、七つ、八つと援護射撃を繰り出す魔晶石が増える。

「もっと多く!!」

 計14個の魔晶石による弾幕が放たれる。
 そうなれば、回避は最早不可能に近い。
 転移以外に回避方法はなく、転移しても即座に捕捉するだろう。

「無駄だ!!」

 故に、全てを受け止める。
 障壁で弾幕を阻み、直接攻撃をその手で受け止める。
 決してダメージには繋がらず、無効化される……ように見えた。

「ッッ!!!」

「ぐっ……!?」

 相変わらず全ての攻撃は防がれている。
 攻防による衝撃波が迸るが、緋雪の攻撃は軽々受け止められていた。
 ……だというのに、神の表情が徐々に歪んでいく。

「そこぉっ!!」

「がぁっ!?」

 それを、緋雪は見逃さなかった。
 転移で背後に回り、一撃……と見せかけ、連続転移で側方からフェイントを放つ。
 爪を生かした手刀で薙ぎ、目を潰す。

「ぬぅっ!」

「っづ……!」

 反撃の一撃を食らい、攻撃に使った腕が吹き飛ぶ。
 だが、緋雪はそれに構わず追撃の蹴りで地面に叩き落す。

「はぁあああああああああっ!!!」

 自由落下を利用しつつ、そこへさらに追撃を放つ。
 魔晶石で身体強化及び結界による神の転移を封印し逃げ場を潰し、腕を再生させつつ魔力を纏わせた拳の連打を叩き込む。

「舐める、なっ!!」

 相手もタダではやられなかった。
 理力の弾幕が神の周囲から発生するように放たれ、魔晶石の弾幕を相殺していく。
 それどころか弾幕を圧倒して緋雪を傷つけていく。

「その程度!!」

 しかし、緋雪は止まらない。
 攻撃が掠り、直撃し、体が削られていこうと、攻撃は止めない。
 それどころか、ますます勢いが増していく。

「ぁあああっ!!」

「ッ……!?」

 一際強い一撃が、振りかぶられた。
 さすがにまずいと思った神は、その場から飛び退き、結界を破って躱した。
 直後、地面が穿たれ、爆発を引き起こした。

「ッ、ぐっ……!?」

 無傷で緋雪の上を取った神が、理力による圧力で緋雪を地面に縫い付ける。

「潰れろ!」

「ぁ、ぐ、ぐぅ……!?」

 立ち上がる事すら出来ない程の圧力に、緋雪は身動きが取れない。
 しかし、その代わりに動くモノがあった。

「邪魔だ!」

 緋雪の魔晶石だ。
 魔晶石から魔力弾や砲撃魔法を繰り出し牽制し、残りの魔晶石が魔力の刃を形成して神に斬りかかっていた。
 だが、それすらも理力の開放で弾き飛ばされる。

「なっ……!?」

「私達の意志を、舐めないで!」

   ―――“破綻せよ、理よ(ツェアシュテールング)

 その僅かな時間を、緋雪は無駄にはしなかった。
 圧力で立てずとも、視線は神から外さず、瞳を手の中に顕現させる。
 そして、握り潰す事で理力を一気に削り取った。

「なぜだ!?なぜ絶望しない!?それどころか、この増す力……人の“意志”が、ここまで強靭なはずがない!!」

「……ふふ、そういう反応しちゃうんだ?」

「―――はっ!?」

 動揺した神を見て、緋雪は笑みを浮かべる。
 その事に神が気づいた時には、もう遅かった。

「理屈なんて知らないよ。……ただ、私は勝つ。それだけ!」

「ッ……かはっ……!?」

 肉薄と同時に放たれた拳が、神の胴を突き破る。

「お兄ちゃんの言う通り、厄介な“性質”ではあるけど……動揺したら、こっちのものだよ。さぁ、そっちこそ絶望しなよ!!」

 状況や思考が“絶望”に寄れば、それだけ効果を発揮する“絶望の性質”。
 圧倒的な力を見せる事で、どんどん有利に持っていく“性質”だ。
 ……だが、もしも立場が逆になれば?

「(っ、み、見え……!?)」

「斬り刻め、焔爪(えんそう)!!」

   ―――“紅蓮閃刃(ぐれんせんじん)

 最早、神には緋雪の動きが見えなかった。
 緋雪は爪を連続で振るい、炎を纏った斬撃をいくつも飛ばす。
 その斬撃を回避する事も防ぐ事もできずに神は直撃をもらうしか出来なかった。

「一度嵌まってしまえば、自分ですらその“性質”から逃れられないなんてね」

「ぁ……ぐ……!ま、まだだ……!」

「さすがに耐えはするけど……いつまで持つかな?」

 耐える神だったが、形勢は完全に逆転していた。
 圧倒されても逆転した緋雪と違い、神は自ら“倒し切れない”と思ってしまった。
 そうなれば、後は“絶望”まで自分の“性質”そのものが引っ張って行く。
 ……既に、この神に勝ち目はなくなった。











「ぉおおおっ!!!」

 一方、帝の方は、視認すら難しい程の速度で殴り合っていた。
 拳と拳がぶつかる度に衝撃波が迸り、地上を揺らす。

「ッッ!!」

 その動きは決して止まらず、むしろますます速くなっていく。
 残像をその場に残し、拳と蹴りの応酬を繰り広げる。

「ぐっ……!!」

 一際強い衝突の後、少し間合いを離して改めて対峙する。

「……“蹂躙の性質”……なるほど、常に相手を蹂躙出来る力量であれば、直接戦闘で俺とも戦えるのは納得だ……」

「………」

「だが、当の本人であるお前は納得してなさそうだな?」

 “性質”を使っている間、常に相手の力量を上回る。
 そのため、物理的戦闘で最強なはずの帝とも互角に戦えていた。
 だが、“蹂躙”であるならば、圧倒できる程の差があるはずなのだ。
 そのことで、神は納得いってなかった。

「確かに、俺を蹂躙できる程度には強くなっているんだろう。……でも、それがどうした?俺程度を超えた所で、俺の憧れた存在には、到底及ばねぇんだよ!!」

「ッ―――!?」

 瞬時に肉薄した帝の拳が、神の顔を打つ。
 そう。帝自身の力はいくら“固有領域”によって引き上げられていると言っても、今行使している力には大きく劣る。
 それが原因で、帝を蹂躙できる力を持とうと、帝が行使する力を超えられない。
 そして、帝が想い、憧れる力は“固有領域”によって帝に上乗せされている。
 “固有領域”は、例え神の“性質”であろうと、干渉は至難の業だ。
 ……故に、“蹂躙の性質”は帝には通用しない。

「ずぁっ!!」

 掌底を叩き込み、吹き飛ばす。
 直後、投影魔術及び王の財宝の再現による、武器群が神を襲った。
 理力の放出でそれらは砕かれたが、その破片が圧縮され、鉄塊となる。

「はぁああああっ!!」

 突撃し、拳を打つ。
 防御し、反撃が飛んでくるが、それを逸らすように弾く。
 そのまま顎へとアッパーを入れ、上に体を浮かす。

「ッ!」

 直後、超能力を使って鉄塊を連続でぶつけ、最後に挟んで押しつぶそうとした。
 さすがに無抵抗なはずもなく、鉄塊はすぐさま理力で消し飛ばされた。

「シッッ!!」

 再び、拳と蹴りの応酬が繰り広げられる。
 しかし、ついに拮抗が崩れ始めていた。
 優勢なのは、帝の方だ。

「がぁっ!?」

「だだだだだだっ!!だりゃぁっ!!」

 一撃をもらった瞬間、神は帝の拳をいくつも食らい、吹き飛ばされた。
 吹き飛んだ体は一つの山を貫通し、地面に叩きつけられる。

「ッ、はぁああああああっ!!」

 そこへ、さらに気を纏わせた拳を叩きつけた。
 大地を揺らし、クレーターを作り出し、神をめり込ませる。

「ぐっ……がっ……!?」

「事象や状況に作用する“性質”は、時に自身に返る時がある。……残念だったな、もうお前は俺には勝てない」

 首を掴み、体を持ち上げながら帝は言う。
 神界で多くの神を倒してきた経験から、目の前の神は自身の“性質”によって逆に追い詰められている事はわかっていた。
 “性質”によって逆に追い詰められる。それはすなわち、実質的に“性質”を完全に封じたも同然だ。

「“性質”を使わずに勝てるものなら、勝ってみやがれ!!」

 気を纏った拳が神の顔面を殴りぬく。
 それにより、再び吹き飛んだ神はその先にあった岩盤に叩きつけられる。
 間髪入れず、帝はそこに突撃し、追撃の拳を叩き込んだ。

「がはっ……!?」

「お、らぁっ!!」

 岩盤すら突き抜けた所で、地面に叩き落す。
 そして、連続で気弾を放ち、“領域”を砕こうと打ちのめす。

「ぁあああああああっ!?」

「せぁっ!!」

 すると、そこへもう一人の神が飛んできた。
 帝が対処するまでもなく、転移してきた緋雪によって叩き落される。
 それも、ちょうど帝が気弾を撃ち込んでいた場所へ。

「私も、やらせてもらうよ!」

 魔法陣を複数展開し、そこから魔力弾を。
 そして、両手を突き出し、砲撃魔法も放つ。

「……やべっ、このままだとこの星が壊れる!」

「それもそう……だね!」

 気が付けば神を中心にかなりクレーターが広がっていた。
 穴もかなり深くなり、このままだと星そのものを破壊してしまう。
 そう考え、すかさず緋雪が地上に降りて魔法陣を展開する。

「吹き飛ばせ、“呪黒剣”!!」

 その魔法陣から、霊力と魔力を混ぜた黒交じりの深紅の剣を上に突き出す。
 それによって、神二人の体を上空に吹き飛ばした。

「ッ……!」

「このまま、終われるか……!!」

 その時、神二人が最後の足掻きに出た。
 二人して理力を集め、この星ごと緋雪と帝を仕留めるつもりだ。

「いい度胸だ……!」

「正面から、打ち砕く!」

 無論、二人はそれを避けようとも防ごうとも思わない。
 真っ向から、競り勝つつもりだ。

「これが、私の全力!緋き輝きよ、貫け!!“其は、緋き雪の輝きなり(シャルラッハシュネー・シュトラール)”!!!」

「俺の憧れた存在なら、この程度……!憧憬を描け!“力を示せ、我が憧憬よ(トゥインクル・ロンギング)”!!!」

 理力の極光に対し、“意志”の極光が放たれる。
 二筋の極光同士がぶつかり合い、衝撃波を撒き散らす。
 周囲の岩が浮き上がる程の力場が発生し、極光の威力が見て取れる。

「っ、ぁ……!やっぱり、地力は凄まじいね……!」

「けどなぁ、俺たちだって、負けてねぇ!!」

 拮抗していた極光の内、緋雪と帝の極光が一回り太くなる。
 直後、拮抗が崩れ、一気に敵の攻撃を押し切る。

「ぅ、ぁあああああああああああああっ!!?」

 そして、極光に呑まれた神二人は、そのまま消え去っていった。
 “領域”が砕かれたのだ。















 
 

 
後書き
“蹂躙の性質”…事象や状況の流れに干渉するタイプ。そんな状態になっていると思えば思うほど、この“性質”は強く働く。

“絶望の性質”…上記の絶望バージョン。この二つが合わさるとかなり厄介。

紅蓮閃刃…魔力を纏わせた斬撃を飛ばす技。一発から何十発もの回数を一気に放つ。中距離程度までならば斬撃を飛ばす事もできる。

力を示せ、我が憧憬よ(トゥインクル・ロンギング)…構えは某かめはめ波に近い。帝の思い描く憧れたキャラクターの力を集束させ、一つの極光として放つ。“固有領域”と同じく、帝のその力に対する絶対的信頼と威力が比例する。


帝の戦闘はZ以降のDB、緋雪はFate(Apoや劇場版HF)のような激しさをイメージしていたりします。(描写出来ているとは言っていない) 
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