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戦国異伝供書

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第百八話 関東管領上杉家その一

               第百八話  関東管領上杉家
 氏康は鉄砲を多く揃えることをはじめた、だが。
 それは上手くいかずこう言った。
「高いことも厄介であるがな」
「買い占められていますな」
「三好家なりに」
「あと織田家に」
「うむ、織田家は近い」
 鉄砲を多く造っている上方にというのだ。
「それでな」
「容易にですな」
「鉄砲を買えてです」
「多く揃えていますな」
「三好家以上に織田家がな」
 まさにこの家がというのだ。
「鉄砲を買ってな」
「買い占めですな」
「それを行うが如きですな」
「どうにも」
「うむ、高くともな」
 それでもというのだ。
「わしとしてはな」
「多く揃えたいですな」
「鉄砲についても」
「やはりよい武器なので」
「多く用いたいですな」
「そう思っておるが買い占められると」
 織田家の様に限りあるものを多く買われると、というのだ。
「参るな」
「鉄砲鍛冶がいれば」
「その者達に造らせるのですが」
「当家にはその様な者もおりませぬし」
「それも出来ませぬな」
「招きたいが」
 その鉄砲鍛冶をというのだ。
「それもな」
「どうにもですな」
「それも出来ませぬな」
「鉄砲鍛冶の数にも限りがあり」
「その者達もですな」
「種子島や国友におってな」
 まさに島津家の領地や上方である、鉄砲鍛冶の者達にしてもそうした場所に集まっているのである。
「この関東、相模にはな」
「来ませぬな」
「既に島津家なり三好家なりに雇われていて」
「織田家から仕事を受けていて」
「こちらまでは」
「来ぬ、鉄砲は東国までには中々来ぬか」
 氏康は苦い顔で述べた。
「すぐには無理か」
「ならばです」
 氏照がここでこう言ってきた。
「時間がかかろうともです」
「腰を据えてか」
「鉄砲を多く買う話を上方の商人達にして」
「じっくりと話してか」
「そうしてです」
「揃えるか」
「はい、そして鉄砲鍛冶も」
 この者達もというのだ。
「こちらがよい条件を出し続け」
「そうしてじゃな」
「雇いましょう」
「やはり時をかけてじゃな」
「話していき」
 そうしてというのだ。
「その様にしましょう」
「それがよいか」
「それがしはそう思いまするが」
「そうであるな」
 氏康は氏照のその言葉に頷きそれからあらためて述べた。
「今あれこれ言ってもな」
「すぐにどうなるかといいますと」
「そうとも限らぬ」
「これはと思うなら」
「そう思うことこそな」
「腰を据えて進め」
 そうしてというのだ。 
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