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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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天使とラブソングを……?(第4幕)

 
前書き
書いてて楽しい回でした 

 
(サンタローズ)
フレイSIDE

日曜日のAM9時30分。
お父さんが変装したプーサンを筆頭に、ウルフさん・ヘンリー様・コリンズ様・ポピーさん……そしてお姉ちゃんと10時からのミサを見学する為に集まってきた。

因みに、何故ウルフさんまで来てるのか聞いたところ……
『“してやられた”罰』
との事。よく意味は解らないですけど?

ミサ見学一行は早々に教会の聖堂へと入る。
中ではお母さんが黙々と準備をしている……
私も何時も通り準備の手伝いを始めた。

聖堂内は中央の道を軸に、左右15列の長い椅子が配置されており、入り口入って右側列の一番右後ろとその前列に一行は腰を下ろした。
座り順は、後方右側からお父……プーサン・お姉ちゃん・ウルフさん。そして前列右側からポピーさん・コリンズ様・ヘンリー様となっている。

聖堂内のロウソクに火をともしたりして手伝っていると、開け放しの入り口からマーガレットさんが入ってきた。
マーガレットさんは御年88才のお婆ちゃんで、ほぼ毎回日曜日のミサには参加している得がたい方だ。

“ほぼ”というのは、天気が悪いと膝関節に激痛が走るらしく、天気の良い日しか参加できないのだ。
そうなるとミサの参加者は私しか居なくなる……
それでも続ける事に意味があると言ってお母さんはミサを始めるのだ。

話を戻そう……
マーガレットさんは覚束ない足取りで聖堂に入ってくると、一番前の席に座る為ゆっくりと中央の道を進んでいく。
私は何時も通り、マーガレットさんの手を引き何時もの席まで誘導する。

何時もはマーガレットさんの隣に座るのだけど……
「マーガレットさんゴメンね。今日は他のお客様が来てるから、その人達の方に座るね」
と断りを入れてから例の一団の所へと戻った。

そして一団の端っこ……ウルフさんの隣に腰を下ろすと、入り口付近から人の気配を感じた。
視線を移すと、村の若い男性陣(それでも私より年上)が5人ほど入ってきてた。
行動を観察すると、珍しく日曜に村に居るお姉ちゃんに近付きたいらしく、まごまご入り口付近で煮え切らない態度をしている。

お姉ちゃんには近付きたいが、見るからに怪しいプーサンと何故か睨みをきかせているウルフさんが怖くて近寄れない。
結局近寄る事を諦めた若い衆は、ミサ終わりに声をかける作戦に変えたのか、同じ列の左側に陣を築いた。

因みに連中がそんな消極策に転じたのは、10時になりお母さんがミサを開始したからだ。
そんな気の弱い態度で、この(へんたい)を落とせると思うなよ!
私が心の中で憤慨していると、隣のウルフさんが小さく「くくくっ」と笑った。性格が極悪と聞いてはいたが、紛う事無き!

さて……
村のヘタレ共は無視して、お母さんのありがたい説教に集中しよう。
病気にでもならない限り、このミサには毎回参加しているが、この説教を楽しいと感じた事は一度も無い。

お母さんは努力家で、何時も色々な本を読んで勉強している。
その本も、読みもしてないのに『面白そうだから買ってきた』とお姉ちゃんからプレゼントされた物や、『これ面白かったよ』と読んだ上でプレゼントしてくれるお父さんのだったりで、結構な量になっている。

そんな大量の蔵書の中から、皆さんの為になる事柄を解りやすく再構成して……そして神様への感謝へと繋げて話してくれるのだが、本当に退屈な時間なのだ。
マーガレットさんは何時も『為になりました』と喜んでくれてるのだけど……

「ウルフ……アンタだったら如何(どん)なアイデアを出した? 因みに私は“リュリュの裸踊りを披露させる”よ(笑)」
ポピーさんがこちらを向かずに話しかけてきた。
「ふっ……酷いお姉ちゃんも居たもんだ」
同感だ。

「ポピーの案は一時的で、しかも一部の人間にしか効果が無い。父親として以外でも却下だ」
「確かに万人受けでは無いわね……で、ウルフなら如何(どう)よ?」
流石に顔を少しこちらに向けて尋ねるポピーさん。

「俺の案ですか? そうだなぁ……リュカさんの言う通り一時的で一部の者対象ですけど“リュリュさんの使用済み下着配布イベント開催”ってのを提案します」
最悪な案が出てきた。

「アンタ……私のより酷いじゃない(笑)」
「そうですか? でも客と提供するこちら側とWin-Win(ウィンウィン)じゃないですか。事前に準備が出来るから、リュリュさんが当日ミサに参加しなくても問題ないし、客側は形として永遠に手元に残るし(笑)」
余りの提案にお姉ちゃんはウルフさんを見ようともしない。

「でも大変ね……何人に配るのか分からないけど、一度はパンツを履かなきゃならないなんて……」
「はぁ? ポピー姉さんなら分かると思ってたのに」
ポピーさんでも分かってない事とは?

「俺は『使用済み』とは言いましたが、『着用済み』とは言ってません」
「……(すげ)ーわウルフ。アンタは就く職を間違えてるわ。詐欺師になるべきよ」
“使用済み”と“着用済み”の違いが解らないわ。

私の疑問の視線に気付いたウルフさんは、
「“着用”となれば下着として股間に装着させるべきだろうけど、“使用”となれば話は別。あんなのただの布きれだ。新品であれば汚くないのだし、ぞうきんとして棚やテーブルを拭いても良い。まぁ紅茶を股ぐらの部分で拭いておけば、より勘違いを誘うだろうけどね(笑)」
と丁寧に教えてくれた。紅茶とこの人を嫌いになりそうだ。

「おいおいそんな目で睨むなよフレイちゃん。この案を最初に提示したのは俺じゃ無いんだよ……其奴の受け売りさ」
「誰よ……アンタ以上のクズって!?」
ポピーさんがあり得ないくらいの冷めた目でウルフさんに問いかける。

「母親が姉さんと一緒の女ですが、何か?」
「「「アイツか!」」」
お父さんとポピーさんとヘンリー様が同時に呟いた。因みに私も心の中では呟いた。

「『ファンから効率よくお金を巻き上げたいから、こんなイベントを企画したの♥』って俺にプレゼンしてきました」
あの()歌姫(アイドル)に向いてない。

「……如何やらミサも終わりの様だ」
お父さんの言葉で気が付くと今日のミサも終わっていた。
何時もの様にマーガレットさんが「はぁ~、今日も為になる話でしたよ~」とお母さんにお礼を言って出口へ向かう。

ぶちゃけ……この人達の会話が強烈すぎて、お母さんの話は全然入ってこなかった。
ゆっくりと歩くマーガレットさんを見送りつつ軽く会釈をする……すると同じ列の反対側に陣取った連中に目が行く。

ヘタレはヘタレなりにタイミングを見計らって女に話しかけたいらしく、我々(主にお姉ちゃん)の動向をチラチラ伺っている。イライラする。
気付いてか気付いてないのか(多分間違いなく気付いてる)お父さん達は、ただ黙って連中が帰るのを待ってる。凄い威圧感で……

壇上のお母さんも気付いたらしく、説教に使った原稿用紙等を音を立てて整理し、この威圧感を加速させる。
勿論ヘタレ連中に我慢できる胆力は無く、こちら(主にお姉ちゃん)をチラチラ見ながら聖堂から出て行った。イライラする。

完全に出て行ったのを見計らい、私は聖堂の戸を閉め鍵をかけた。
普段は鍵はかけないが、今日この時間だけは特別だ。
それを見計らったお母さんが近付いてきて「ありがと」と小さく言う。

私が元いた場所に戻ると同時に「如何(どう)だった?」と両手を胸の前でモジモジさせながら上目遣いでお父さんに評価を求めるお母さん。
可愛い!

「うん。凄く良い内容の説教だったよ……退屈だけど」
「あぅ~……やっぱり信者さんが来ないのは私の話が悪いのね~」
お母さんの話が悪いのでは無くて、基本的に退屈なのが原因だと思うわ。

「違う違うフレアさん。良いんだよ退屈で……教会の説教が退屈ってのは最高の褒め言葉だ。とっても為になる良い内容だったんだ」
そうだろうか? 楽しいにこしたことは無いと思うけども。

「まぁお前が言わんとしてる事は理解できる……けど、そうすると如何するんだ?」
ヘンリー様が疑問をお持ちの様に、教会が退屈な場所である以上、手の施しようが無い。
お父さんは如何するのだろうか。

「うん。やっぱり思ってた通り“天使にラブソングを”作戦だね」
「「「……………」」」
作戦名の内容を聞きたく、皆が静かに待つが、答える素振りが見えてこない。

「いや……作戦名じゃなくてさ、作戦内容を言えよ」
「作戦名だけで感じろよ、本当にHH(ヘッポコ・ヘンリー)だなぁ」
いやいやいや……ヘンリー様だけでは無く、誰にも分かる訳が無い。

「いや、お父さん。流石に私でも解らないわ」

フレイSIDE END



 
 

 
後書き
本当は(第4幕)と(第5幕)は
一つのエピソードだったんですが、
長くなり過ぎちゃって
2話に分割しました。
まだ第5幕は書いてる途中ですけど、
それでもかなりの長さです。
3話に分割しても良いんじゃ無いかと思えてるくらいに。 
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