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星河の覇皇

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第七十六部第一章 動きはじめる両軍その二十

「シャイターン主席は鋭い、若し何かがあればだ」
「気付かれますね」
「そうすればだ」
「必ずですね」
「その時は対応を取られる」
 アッディーンはシャイターンがわかっていた、その軍略も勘のよさもだ。だからこう言ったのである。
「だから連れて行かない」
「最初はですね」
「まだな、機会があるまではな」
「用意はしていても」
「連れて行かない、戦場にはな」
「ではこの度の戦いは」
「戦う、しかしだ」
 それでもというのだ。
「勝てる戦いではない、負けはしないが」
「互角ですね」
「兵力も互角だ」
 ティムールは兵力で劣る、このことは国力特に人口からくることでありどうしようもないことなのだ。
 しかしだ、シャイターンは国境の防衛ラインを機雷や磁気、コロニーレーザー等で幾重にも固めたのだ。
 そのうえで防衛ラインにある艦隊を可能な限り自軍に組み入れてアッディーン率いる軍勢と同じ規模の軍勢を整えたのだ。
 それでだ、アッディーンも言うのだ。
「だからだ」
「この度の戦いはですね」
「五分と五分の戦いになりそしてだ」
「勝敗はつきませんか」
「何もかもが互角ならばだ」 
 装備に規模、そして将帥の質がだ。
「勝敗はつかないな」
「どれも全て互角ですと」
「完全に拮抗していればだ」
 双方の軍のそれがだ。
「勝敗がつく筈がない、互角だ」
「では今回は」
「完全な互角で終わる」
 アッディーンは確信を以て言い切った。
「そうなる、そうした戦いが幾度か続く」
「そのうえで、ですね」
「機を見てだ」 
 その時にというのだ。
「あの艦を使う」
「そうされますか」
「しかし最初から切り札は切るものではない」
「だから今はですね」
「連れて行かない」 
 そうするというのだ。
「あえてな」
「それでは」
「このまま戦う、本来は最初の戦いで勝敗を決したいが」
 長期戦になるとそれだけ国力を消耗し犠牲も出てしまう、それでアッディーンも国家元首として長期戦を嫌うのだ。
 しかしだ、今回はというのだ。
「今は仕方がない」
「シャイターン主席との戦いでは」
「確実に私が戦った中で一番の強敵だ」
「ですから」
「最初で決められない」
 そこで勝敗は決しないというのだ。
「だからだ」
「まずはですね」
「幾度もだ」
「戦われますか」
「そうする、犠牲は覚悟してだ」
 そうしてというのだ。
「幾度か戦うぞ」
「わかりました」
 ガルシャースプはアッディーンの言葉に頷いた、彼はバグダートからアリーの艦内に入りそうした話をしていた。
 そしてだ、その中でだった。
 他の幕僚達も口々に言って来た、彼等はモニターに映るオムダーマン軍のティムール軍の動きを見ていた。そうしつつアッディーンに言ったのだ。
「こちらに来ています」
「それも真っ直ぐに」
「我等もそうしています」
「おそらく一時間後に遭遇します」
「一時間後か、いよいよだな」
 アッディーンもモニターを見て言う、三次元モニターのそれを。 
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