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切り札は二つ

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第二章

「海とかプールとか?」
「水着っていいたいのね」
「それ?ひょっとして」
「それが一番効果があるけれどね」
 梨香子もこのことは認める。水着はスタイルがはっきりと出る為に視覚的な効果は下着と同じだけ効果があるのだ。
 だが、だった。梨香子はここではこう言うのだった。
「それとは別によ」
「別のなの」
「そう、もう一つの夏の切り札を出すべきよ」
「それって何なの?」
「浴衣よ」
 梨香子の目がここで光った。
「それよ。浴衣よ」
「浴衣・・・・・・」
「わかるわね、その破壊力が」 
 二人は何時しか貌を近付け合って至近で向かい合いながら話をしていた。梨香子はその状態で富美加に対して言う。
「富美加にも」
「ええ、何となくだけれど」
「それを使うのよ。丁度四日になったらね」
 八月四日である。
「八条神社で夏祭りがあるじゃない」
「あれっ、火神神社じゃなかったかしら」
「どちらにしても夏祭りがあるわね」
 神社が違うことはここでは些細なことだった。
「その時によ」
「浴衣を着てなの」
「総一郎君とデートしなさい。いいわね」
「夏の夜に浴衣姿で二人きりで」
「これは抜群の効果があるから」
 だからこそだというのだ。
「わかったわね」
「今度はよくわかったわ」
 富美加は納得した顔で頷いた。
「それじゃあね」
「全力でぶつかれば進めるから」
「梨香子ちゃんの持論ね」
「実際にそうだから」
 梨香子は肉食系だ、だからこその言葉だった。
「やってみなさい、いいわね」
「うん、四日の夏祭りに総一郎君を誘うのね」
「そうしなさい。大和総一郎君だけれど」
「彼がどうしたの?」
「結構熱いからね」
 暑いのではなく熱かった、そっちであった。
「すぐに燃え上がるからちょっと油をかけたらね」
「炎上するのね」
「ブログで下手なこと書いた時より炎上するから」
「そう、気をつけてね」
「あの熱いところがいいけれど」
「その熱さが問題でもあるのよ」
 梨香子は強い声で言う。
「気をつけてね。ただ」
「ただ?」
「富美加って浴衣似合いそうだけれど」
 スタイル的にそうだというのだ。
「ただね」
「ただって?」
「もう一つ武器があるわね」
 富美加の明るい貌を見ての言葉だ。
「それを使えば総一郎君もね」
「いいってうの?」
「ええ、仲は確実に進展するわ」
「その武器って何なの?」
 富美加は怪訝な顔になって梨香子に尋ね返した。
「それで」
「それはあんたが一番わかってるんじゃないの?」
「私が?」
「生まれてからずっと持ってるものだから」
 だからこそ一番わかっていることではないかというのだ。
「そうだと思うけれど」
「私が生まれてからずっとって」
「そうよ。ずっと持ってるものよ」
「何、それ」
 しかし当人は怪訝な顔のままでこう言って首を傾げさせる。 
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