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足首の護り

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第一章

               足首の護り
 英雄アキレウスは母テティスによってあらゆる攻撃が通じない無敵の身体になっていた、だがその彼にも弱点があった。
 テティスは彼を神の川に入れてその身体をその様にした、だがその時彼の足首を持っていたのでそこだけは弱点だった。
 それで彼の親友であるアイアネアスはいつも彼に言っていた。金髪で碧眼の友人とは違い茶色の髪に黒い瞳だ。美貌の友とは違う整った顔立ちである。神を思わせる友人と違い人間的な顔立ちで背も長身の友人より少し低い。
「足首、踵の辺りも護らないか」
「神の加護を受けてか」
「そうしたらどうだ」
 こう言うのだった。
「そうすれば万が一ということもない」
「ははは、心配は無用だ」
 アキレウスは友の言葉に笑って返した。
「それは」
「それはどうしてだい?」
「私は無敵の身体に加えて武勇もある」
 だからだというのだ。
「その私を誰が倒せるか」
「だが足首は」
「足首はどれだけの広さだ」
 こうアイアネアスに言うのだった。
「一体」
「それは」
「そうだ、僅かだな」
「そこを攻められる筈がない」
「そうだ、それは無理だ」
 こう言うのだった。
「流石にな」
「だからか」
「私は足首のことはだ」
「神のご加護を求めないか」
「一切な、そして戦い」
「勝っていくか」
「どういった相手にもな」
 こう言ってだった、アキレウスは戦場で戦い続けた。神の子故の武勇と勇気そして不死身の身体は確かに強く。
 それでまさに無敵だった、その彼だからこそ。
 アイアネアスはアキレウスがギリシアとトロイアとの戦に来た時に心から喜んだ。
「君が来てくれたからにはな」
「ギリシアの勝利はか」
「約束された、だが」
「それでもか」
「足首のことにはだ」
 アイアネアスはここでも彼のそのことを話した。
「くれぐれもだ」
「やれやれ、ここでも言うのか」
「万が一ということがある」
「万が一もない、足首を攻められて死んだ者なぞ聞いたことがない」
 アキレウスは友に笑って返した。
「違うか」
「今のところはな」 
 これがアイアネアスの返事だった。
「だがこれからはわからない」
「それでか」
「くれぐれもだ」
「注意してか」
「戦ってくれ」
「だから言っておく、私はだ」
 アキレウスは友に笑ったまま話した。
「足首のことはだ」
「一切心配していないか」
「私自身が心配していない、それでどうして君は心配する」
「しかし」
「しかしも何もない、私が来たのだから」
 また言うのだった。
「もうな」
「この戦はか」
「勝った、トロイアを降伏させるぞ」
 こう言ってだった、アキレウスは遅参したがそれでも誰よりも勇敢かつ見事に戦いトロイアの軍勢を圧倒した。トロイアの王子の一人でありこの国第一の勇者ヘクトールを一騎打ちで破りもした。それで余計にだった。 
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