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戦国異伝供書

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第百五話 氏康の治その九

「よいな、我等はじゃ」
「はい、何時でもですな」
「戦える様にしておき」
「両上杉が動けば」
「その時は、ですな」
「すぐに動いてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「戦うぞ」
「わかり申した」
「それではです」
「備えをしておきましょう」
「そして河越の城から狼煙があがれば」
「その時は」
「全軍を以て動いてじゃ」
 氏康はさらに話した。
「敵を倒すぞ」
「しかしですな」
 大道寺政繁が言ってきた、何処か陰のある顔の男だ。
「敵が多いならば」
「その時は普通に向かわずな」
「知略を使ってですか」
「そうしてじゃ」
「戦いますか」
「両上杉は河越の城を奪う為に総力を挙げて来てじゃ」 
 そしてというのだ。
「関東の他の家も集めてじゃ」
「多くの兵を集めてきますな」
「幾万というが」
 その数はというと。
「五万、いや八万おってもな」
「八万ですか」
「それだけの数であってもじゃ」
「不思議ではありませんか」
「うむ」
 まさにというのだ。
「だからな」
「その八万に八千の兵で向かう」
「そう考えるとな」 
 これはというのだ。
「最早じゃ」
「普通に戦って勝てるものではないですな」
「だからじゃ」
「知恵を使ってですか」
「そしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「戦いそしてじゃ」
「勝ちますな」
「そうする」 
 まさにというのだ。
「よいな」
「さすれば」
「八万の兵に八千の兵で普通に戦っても勝てぬ」
「そこをどうするか」
「敵を普通でなくさせる」
「そうするのですな」
「それを今考えておる」
 こう大道寺に話した。
「油断させようとな」
「そうさせますか」
「油断して勝ったとでも思えばな」
「如何なる大軍といえどですな」
「ものの数ではないですな」
「そうなってしまえば」
「だからですか」
「その様にする、我等の数は少ないが」
 両上杉や関東の諸侯に比べてだ。
「しかしな」
「その少なさをですな」
「逆に使い」
「そしてですか」
「戦いますか」
「そうする、敵は必ず来る」 
 このことは確信していた。 
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