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星河の覇皇

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第七十五部第五章 宣戦布告その十五

「後ろから撃たれていた」
「そうでしたね」
「懲罰大隊なぞはだ」
 犯罪者とみなされた者達が配属されていた、そして完全に消耗品として扱われていた。
「完全にそうだった」
「常に後ろにでしたね」
「督戦隊がいた」
 彼等に対して銃を向けていた部隊がだ。
「そして容赦なく突っ込まさせられていた」
「そうしてでしたね」
「撃たれていた」
「何かあれば」
「そうした軍隊はサハラにもあった」
 この宙域の千年に渡る戦乱の中でそうした国もあったのだ。
「有害な者を即座に粛清するものがな」
「そうでしたね」
「そうだった、だが」
「我が国は違いますね」
「私はそうしたことはしない」
 アッディーンははっきりと言い切った。
「それは究極の独裁国家がすることだ」
「ソ連の様な」
「私は独裁者になるつもりはない」
「決してですね」
「サハラを統一する考えはあってもだ」
 これも成り行きでそうなったと言っていい、勝っていく中で。
「しかしだ」
「それでもですね」
「独裁者になるつもりはない」
「皇帝ですね」
「皇帝は独裁者か」
 アッディーンは幕僚達に問うた。
「どうなのだ」
「いえ、違います」
「独裁者は自身が神になる者です」
「自らを神格化すらして」
「絶対者となります」
「そしてそのうえで」
「自身が法律にすらなります」
 これはスターリンだけでなくヒトラーにしろそうであったし彼等以降の独裁者もそうだった、ヒトラー以前に出た最も成功した独裁者と言われたケマル=アタチュルクは今のトルコは自分自身と言った。とはいっても彼は節度がありトルコの為に尽くしたので独裁者によるある極端な粛清や弾圧等はなかった。むしろトルコに近代法を導入した程だ。
「しかしです」
「皇帝は法律の中に入ります」
「明治期の日本に添うならば」
「そうなります」
「教育勅語がある」
 その戦前の日本において極めて重要な道徳の規範になった文章である。
「あの文章ではだ」
「どうだったか」
「あの当時の日本においては」
「法律と同格だったと言われれていますね」
「あの文章は」
「その教育勅語でだ」
 憲法に等しいその文章でというのだ。
「天皇も守ると書いてある」
「天皇の名に出されたその文章の中で」
「そう書かれていたのですか」
「天皇も守ると」
「その様にですね」
「当然法律もだ」
 憲法のそれもというのだ。
「天皇も皇室も守っていた、その中にあったのだ」
「だから皇帝もですね」
「法律の中にあるのですね」
「皇帝が法律ではない」
「そうですね」
「古代はそうだったかも知れない」 
 古代の皇帝達はというのだ。 
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