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レーヴァティン

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第百七十話 甲斐攻めその十一

「出陣しなければならない」
「そうした状況だからですか」
「彼等は出陣してきた」
「こちらの圧倒的な数と装備を知りつつ」
「そうしてきたのですか」
「甲斐は大名が治めているが」
 そうした国だがというのだ。
「しかし家臣達はそれぞれ国人だな」
「はい、この国もです」
「多くの国人がいます」
「そしてそれぞれ力を持っています」
「そうした状況です」
「彼等は若し自分が腰抜けと見れば」
 英雄は甲斐の主の立場に立って述べた。
「反旗を翻す」
「その危険がある」
「そう見てですか」
「この度は出陣した」
「劣勢でも」
「それでもですね」
「そうかも知れない、だが」
 それでもというのだ。
「それは俺達にとってはだ」
「好都合ですね」
「敵がうって出たならな」
「迎え撃って倒す」
「そうするだけですね」
「そうする、これよりな」
 こう言ってだった、英雄は自軍を敵軍に向けて進めさせた。そうして正面から来る敵を大軍で迎撃することにした。
 だがここで謙二は英雄にこう言った。
「少数で正面から来るなら」
「まず、だな」
「相手に何か考えがあります」
「伏兵か」
「それは注意しておくべきです」
 こう言うのだった。
「流石に一万で十二万の大軍をです」
「正面から迎え撃ってもな」
「負けるに決まっています」
「まさにな」
「ですから」
「伏兵にだな」
「用心していきましょう、特にです」
 謙二はさらに話した。
「夜にです」
「大軍を夜に奇襲すればな」
「それが成功すればです」
「勝機が得られることが多い」
「ですから」
 それでというのだ。
「この度はです」
「伏兵、特に夜にな」
「注意していきましょう」
「そうだな」 
 英雄も頷いた、そうしてだった。
 英雄は大軍を進ませた、だがその進軍はさらに慎重なものになっていた。その姿勢で戦に向かうのだった。


第百七十話   完


                   2020・7・15 
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