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レーヴァティン

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第百七十話 甲斐攻めその八

「しかしこの世界では戦は具足を着けた者が行うな」
「はい、それは絶対です」
「具足を着ないと危ないですから」
「陣笠を被り」
「そして旗もさして」
「それはかなりいい、百姓や町民の服を着てだ」
 そうしてというのだ。
「隠れてこそこそ攻めて来られるとな」
「そうした戦なぞです」
「考えられませぬ」
「あまりにも異様ではありませぬか」
「具足を着けず旗を掲げぬ戦なぞ」
「それがあるのだ」
 この浮島にはなくとも、というのだ。
「これがな」
「そうなのですか」
「また異様な戦ですな」
「百姓達の一揆でも旗は掲げますぞ」
「むしろのそれを」
「そして堂々と前から来るな」
 英雄は実は一揆を前にしたことはない、聞いているだけだ。政がよいので一揆は起こさせていないのだ。
「そうだな」
「一揆もです」
「こそこそとはしませぬ」
「常に前からです」
「前から戦を仕掛けます」
「だが百姓や町人の服を着て村や町でだ」
 戦場ではなく、というのだ。
「後ろから攻めてくる」
「何と姑息な」
「そして陰湿ですな」
「その様なもの戦ではありませぬ」
「賊のやることです」
「それがある、だがこの浮島ではないことはな」 
 戦うのは具足を着た者達だけである、このことがというのだ。
「非常に助かる」
「そうした無体な戦がない」
「そのことがですね」
「非常にいい」
「左様ですね」
「全くだ、具足を着ているならだ」
 それならというのだ。
「実にわかりやすい」
「全くです」
「百姓や町人に紛れて仕掛けるなぞです」
「武士にあるまじきことです」
「武士は武士の服を着て戦うべきです」
「何といっても」
「しかも」
 英雄の周りの者達はさらに話した。
「百姓や町人の服を着て戦をすれば」
「百姓や町人が間違えられます」
「そうなってしまいます」
「そしてです」
「百姓や町人を攻める事態になります」
「そうなってしまいます」
「それも狙いだ、敵に百姓や町人を攻めさせてだ」
 その様にしてというのだ。
「そうしてだ」
「そのうえで、ですか」
「敵の評判を落とす」
「それも考えのうちですか」
「そうした戦ですか」
「そうなのだ、百姓や町人に紛れて戦えばわからない」
 誰が攻めてくるかだ。
「そうして疑心暗鬼にもなる」
「百姓や町人が敵か」
「そう思ってですね」
「疑う」
「そうなりますか」
「村や町で襲われるなぞだ」
 その浮島ではだ。
「ないな」
「敵の軍勢がいるならともかく」
「百姓や町人が襲うなぞ」
「そうしたことはありませぬ」
「戦うのは我等です」
「武士です」
「そうした戦だな、所詮少しの兵が急に襲って来るならだ」
 そしてすぐに逃げるならというのだ、英雄がゲリラ戦術について強い顔で話した。その顔でさらに言うのだ。 
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