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戦国異伝供書

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第百話 両翼を奪いその六

「よいな」
「わかり申した」
「それではです」
「その様にしていきます」
「ではな」
 こう言ってだった、元就は息子達にそれぞれ銀の球を渡した、そうしてそれで用心をさせた。するとだった。
 隆元は暫くして父に言ってきた。
「父上、それがしが昨日水を飲もうとしますと」
「銀を近付けるとか」
「銀が曇りました」
 そうなったというのだ。
「そしてです」
「調べるとか」
「はい、毒が入っておりました」
「尼子家が仕掛けてきたな」
「左様ですな」
「うむ、明らかにな」 
「父上のお陰で助かりました」
「何、当然のことじゃ」
 何でもないという口調でだ、元就は隆元に答えた。
「これは書を読んで知ったことであるしな」
「異朝の書をですな」
「それで知ったからな」
 だからだというのだ。
「お主もこれからも書を読んでな」
「多くのことを知ることですな」
「それが大事じゃ、わしの話よりもな」
「書を読むことですか」
「そうせよ、そしてわしだけでなく多くの者の話を聞いてな」
「知ることですか」
「そうせよ、しかしやはり仕掛けてきたな」
 元就は今度は唸る様にして言った、顔も顰められている。
「来ると思っておったが」
「尼子家も必死ですな」
 共にいた元春も言ってきた。
「追い詰められているだけに」
「策を出してくるな」
「はい、まさに」
「この通りじゃ、追い詰められた者はな」
「何でもしてきますな」
「そしてじゃ」
 それでというのだ。
「銀の球もそうであるが」
「他のこともですな」
「備えがあればな」
 それでというのだ。
「対することが出来てじゃ」
「生き長らえることが出来ますな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「この通りな」
「兄上の様に」
「そういうことじゃ」
「しかし父上、これはです」
 隆景は真剣な顔で父に言った。
「尼子家が必死である証、だからな」
「それでじゃな」
「戦も辛いものになりますな」
「うむ、必死の相手と戦うにはな」
「まさにですな」
「尋常なものではない、尼子家は背水の陣じゃ」
 まさにそうした状況だからだというのだ。
「策を仕掛けただけにな」
「その必死さが出ていますな」
「戦でもその必死さが出て」
 それでというのだ。
「激しい戦になる」
「特に月山富田城では」
「そうなる」
 まさにというのだ。
「それはな」
「もうですな」
「覚悟してじゃ」
「攻めていきますか」
「兵糧攻めも考えておるが」
 それでもというのだ。
「やはり難儀な戦になる」
「しかも山中殿と十人衆がいるとなると」
「尚更じゃ、ここは鉄砲も使う」
 この武器もというのだ。
「近頃当家でも用いておるが」
「はい、島津家ではかなり持っていて」
 隆元が言ってきた。 
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