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夏の甘い時

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第三章

「夏祭りは」
「毎年か」
「お友達と約束してるし」
「最初から行くつもりか」
「晩ご飯の後でね」
「痴漢に気をつけろよ」
「金属バット持って行くから」
 法子は平然として言った。
「大丈夫よ」
「かえって警察に捕まるぞ」
「じゃあスタンガンと特殊警棒にしておくわ」
「それはそれで物騒だな」
「自分の身は自分でだから」
「それでか」
「皆も持って行くから」
 法子の友人達もというのだ。
「だからね」
「それでか」
「そう、護身はちゃんとして」
 そのうえでというのだ。
「行くわ」
「そうするんだな」
「ええ、出店の行列の中で会ったら目で挨拶位はするから」
 こう言ってだ、法子は自分の勉強に戻り彰は彼女が言うデートに向かった、そうして待ち合わせ場所に行くと。
 黒髪をかなり伸ばし左右でツインテールにしている大きくぱっちりとした目で黒目がきらきらしている少女が待っていた、背は一五〇位ですらりとしたスタイルだ。発育がいい法子とは正反対のものだ。
 服はやはり夏らしくラフな黄色の半袖のしゃつに赤のかなり短いミニスカート、素足にサンダルという恰好だ。その彼女南瑠璃がだった。
 彰を見ると微笑んで声をかけた。
「先輩、こんにちは」
「うん、十分前に来たけれど」
 時計を見ればそうだった。
「もう来ていたんだ」
「あっ、今来たところで」
「本当?」
「本当ですよ」
 見れば嘘を吐いている目ではなかった。
「ついつい焦って」
「早く来たんだ」
「そうです」
「それ言うと僕もだけれど」
 それでもとだ、彰は同じバレーボール部の一年後輩の彼女に言った。交際する様になったのは彼女のユニフォームの半ズボン姿を見て惚れ込んで殻からアタックしてだ。
「お互いだね」
「そうなりますか」
「うん、まあ十分早く来たなら」
 それならとだ、彰は瑠璃にあらためて言った。
「それじゃあ」
「それならですね」
「そう、それならね」
 まさにというのだ。
「これからね」
「お祭りにですね」
「行こうか」
「そうしますか」
「十分余計に楽しめるね」
「そうなりますね」
 二人で楽しく話してだった、そのうえでデートを開始したが。
 彰は横で共に歩く瑠璃に対して言った。
「何ていうかね」
「どうしたんですか?」
「普段と違うね」
 こう言うのだった、夕暮れのそろそろ暗くなる中の左右に様々な出店が並んでいる神社の境内を歩きながら。
「どうも」
「そうですか」
「制服やユニフォーム姿ともね」
 そして普段の練習の時のジャージ姿ともだ。 
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