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楽しく働けど

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第四章

「全然」
「あんた就職したてて忙しい時もそう言ってたけれどね」
「若いからかなり無理してもね」
「そう言って倒れても知らないわよ」
「大丈夫よ、それよりも貯金あるしね」
「それでなのね」
「もっと貯めるわね」
 将来の為にとだ、こう言ってだった。
 麻衣は頑張って働き続けた、そして暫くしてだった。
 麻衣は毎朝早くに店を出て夜遅くに帰って来る様になった、その状況を見て優子は両親に尋ねた。今は麻衣が家に仕事でいないので二人に尋ねたのだ。
「麻衣また忙しいわね」
「何か今お店に人手がなくてな」
「またそうなったらしいのよ」
 両親は優子に麻衣の今の事情を話した。
「しかもお店がネットで評判になって」
「お客さんが倍になったらしくてな」
「それでらしいぞ」
「今はずっとお店にいるのよ」
「最近毎日よね」
 週六日どころかだ。
「お店に出ていて朝早くから夜遅くまでよね」
「六時に出て十一時に帰ってるな」
「そんな感じね」
「それ前より酷いじゃない」
 優子は麻衣が正社員になった時のことから話した。
「絶対に働き過ぎよ」
「麻衣は大丈夫って言ってるがな」
「いつも笑顔で出て帰ってるしね」
「まだ若いしな」
「いけるんじゃないかしら」
「駄目よ、毎日そんなのだと」
 それこそというのだ。
「絶対に倒れるわよ」
「そうなるか?」
「あの娘は」
「全く、働くことはよくても過ぎたら」
 その場合はというのだ。
「倒れるから。ましてや今冬よ」
「風邪か」
「それが心配なのね」
「全く、いつもあっけらかんとしてるから」
 麻衣のその態度についても言った。
「困った娘ね」
「ううん、言われてみれば心配だな」
「あの娘大丈夫かしら」
「ちゃんと食べてるみたいだけれどな」
「それでもね」
「何もなかったらいいけれど」
 優子は苦い顔でこうも言った、そうしてだった。
 麻衣のことを心から心配した、だが毎日朝早くから夜遅くまで働いている彼女に会う機会は少なく会っても大丈夫と笑て言われるだけで。
 時間だけが過ぎていった、そのうえで。 
 早く帰って来る様になった麻衣にこう言われた。
「新しいバイトの子何人も入ったからね」
「やっとなのね」
「私もね」
 明るい笑顔での言葉だった。
「また週五日、休憩入れて九時間でね」
「やっていける様になったのね」
「そうよ、それでお金もね」
 その忙しい間に稼いでというのだ。
「それでね」
「物凄く稼げたのね」
「そうなの、よかったわ」
「あまりよくないわね」
 優子は明るく言う妹にじっとした目で返した。
「働き過ぎたから」
「そうかな」
「だから無理は禁物だって言ってるでしょ」
「それでなのね」
「銀行員は忙しいけれど」
 また自分のことから話した。
「あんた程じゃないわよ。オーナーさんにも休む様に言われてるでしょ」
「まあお店が大変だしね」
「無理に働いてるのね」
「自分からね、残業代いいって言ってるけれど払ってくれるし」
「本当にいい人ね。ただあんた少しはね」
「少しは?」
「有給取って」
 そうしてというのだ。 
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