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戦国異伝供書

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第九十二話 尼子家襲来その二

「そのうえでな」
「そこからですか」
「尼子家と戦う」
「そうされますか」
「尼子家は家中で揉めておる」
 元就はこのことをここで家臣達に話した。
「その為戦の用意も遅れておる」
「だからですか」
「その隙に、ですか」
「熊谷家と宍戸家を取り込む」
「その様にされますか」
「まず宍戸家とは婚姻を結ぶ」
 最初にこの家のことを話した。
「そうしてじゃ」
「当家に取り込み」
「その力を用いる」
「そうされますか」
「うむ、そしてな」
 そのうえでというのだ。
「我等はな」
「さらにですか」
「熊谷家ですか」
「あの家をですか」
「取り込んでな、そして尼子家と戦う」
「して兄上」
 元網が語る元就に怪訝な顔で問うた。
「尼子家の内輪揉めとは」
「うむ、ほかならぬ主の尼子家の父子の間でな」
 まさにとだ、元就は弟のその問いに答えて述べた。
「何かと諍いがあってな」
「それで、ですか」
「戦の用意にも支障が出ておるのじゃ」
「左様でしたか」70
「だからな」
 それでとだ、元就はさらに話した。
「ここはじゃ」
「それを機として」
「そしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「当家の力をさらに強めるのじゃ」
「そうするのですな」
「左様、尼子家の騒動は我等にとって機じゃ」
「家が乱れると、ですな」
「そこで隙が生じる」
「そこに付け入ることも出来ますな」
「そうじゃ、だからじゃ」
 元就は弟に微笑んで話した。
「我等は今はじゃ」
「熊谷家も宍戸家も取り込むのですな」
「そういうことじゃ、ではよいな」
「はい、我等は」
「戦の用意をするぞ」
 尼子家が家の内輪揉めで戦の用意が遅れている今のうちにというのだ。
「万全の状況にしていくぞ」
「わかり申した」
「尼子家が揉めておらねば」 
 どうなるかもだ、元就は話した。
「わしもこうは動けなかった」
「熊谷家と宍戸家を取り込もうともですな」
「思わずな」
 それでというのだ。
「動けなかったわ」
「そうですか」
「そうじゃ、それでじゃ」
 そのうえでというのだ。
「ここで尼子家を退ける」
「そうしますな」
「今以上に力をつけたうえでな」
「そして、ですな」
「勝つ、しかし親子の争いだけでなく身内で争うことはな」
 ふと暗い顔になってだ、元就は元網に話した。
「何としてもな」
「避けたいですな」
「うむ」
 こう言うのだった。 
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