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戦国異伝供書

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第九十一話 会心の夜襲その十三

「攻めて来るのが速まる」
「そうなりますか」
「そうじゃ、だからな」
 それでというのだ。
「我等としてはな」
「これよりですな」
「戦の用意を速めてじゃ」
「尼子家を迎え撃ち」
「退ける、よいな」
「わかり申した」
「さて、尼子家は強いが」 
 元就は今度は彼等のことを話した。
「しかしな」
「それでもですな」
「無敵ではない、安芸の地の利もな」
「ありませぬな」
「だからじゃ」
 それ故にというのだ。
「この度も仕掛ける、ただな」
「尼子家としては」
「我等が武田家や大内家相手に奇襲を仕掛けたことを見ておる」
「だから奇襲を警戒しますな」
「十二分にな」
「その敵にどうして勝つか」
「それが問題となる」
 志道にこう話した。
「やはりな」
「そして殿の頭の中には」
「もう戦の勝ち方がわかっておる」
「既にですな」
「もっと言えば尼子家のどなたが出て来てどれだけの兵の数で何処から来るか」
 その全てがというのだ。
「もうな」
「わかっておられますか」
「読みと忍達の知らせでな」 
 この二つからというのだ。
「わかっておる」
「そこまでわかっておられるとは」
「敵のことはおおよそわかっておる」
 その尼子家のことはというのだ。
「だからな」
「それでは」
「軍議を開き」
「そのうえで、ですな」
「全てを話そう」
 家臣達にとだ、こう言ってだった。
 元就はここで水を飲んだ、その水を飲む彼に志道はあることを話した。そのあることは何かというと。
「殿、近頃茶がです」
「広まっておるな」
「上方の方で」
「そして周防や長門でもな」
「大内殿や大友友は近頃です」
「茶もじゃな」
「飲みはじめておられるとか」
 その茶のことを話すのだった。
「どうも」
「それは聞いておる」
「はい、これまで寺で飲まれていました」
「修行の時の眠気覚ましにな」
「左様でしたが」
「それがじゃな」
「我等武家の間でもです」
 寺だけのことでなく、というのだ。
「飲まれだしていてです」
「茶器も注目されておるな」
「そうだとか」
「ふむ。わしは酒は控えておる」 
 決して飲まぬ訳ではない、だがどうしても父や兄のことがあり控える様にしているのだ。節度を弁えているのだ。
「しかしな」
「茶は、ですな」
「飲めればな」
 その時はというのだ。
「飲みたい」
「それでは」
「うむ、しかし当家はな」
「茶を飲むには、ですな」
「貧しい、また茶を嗜む者もな」 
 そうした者もというのだ。
「家中におらぬ」
「大内家や大友家と違い」
「だからな、それはな」
「茶を嗜むにはですな」
「まだ先じゃ」
 こう志道に話した。 
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