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戦国異伝供書

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第九十一話 会心の夜襲その一

                第九十一話  会心の夜襲
 元就は大内家の軍勢の前に安芸の国人衆が率いる軍勢を配した、その国人達は元就から言われたことに真剣な顔になって話していた。
「いや、こうしてな」
「かかしを作ってな」
「具足を着せて立てているだけでな」
「案外騙せるものじゃな」
「敵がおるとな」
「その様にな」
 藁で簡単に作ったそのかかし達を見て話す。
「遠目ではわからんか」
「そしてそれがじゃな」
「敵を騙すことになる」
「こちらの数を多く見せる」
「そうしてその分攻めさせぬのじゃな」
「敵が攻めようとも」
 大内軍は多い、その数を頼りにそうしようとしてもというのだ
「既に堀は用意した」
「柵もな」
「槍も弓矢もある」
「それで陣を守る」
「そしてその間に」
 まさにというのだ。
「毛利殿は秘かに敵の本陣に迫り」
「そうしてじゃな」
「夜襲を仕掛け敵を破る」
「そうするな」
「これが成功すれば大きい」
 まさにというのだ。
「大軍に一気に勝てばな」
「我等は救われる」
「ならばな」
「ここは毛利殿の言われる通りにしようぞ」
「守りに徹しようぞ」
「ここはそうしようぞ」
 こう話してだった、彼等は今は元就の言う通り守りに徹した、そのうえで元就からの報を待つことにした。
 元就は毛利家の精兵達を元網と共に率いつつ安芸の山道を進んでいた、そうしつつ元網に対して言った。
「忍の者達の報が次々と入っておるな」
「はい、大内家の本陣の場所も」
「その数や様子もな」
「本陣は軍勢の遥か後ろにあり」
「陶殿は別の場所におる」
「本陣の兵達は三千」
「今の我等より数は多いが」
 それでもというのだ。
「戦の場からかなり離れ油断しきっておる」
「夜には酒を飲んでおるとか」
「大内の軍勢全体がな」
「かなり気が緩んでいますな」
「大軍ということもありな」
「陶殿は第二陣ですな」
 元網は大内家の今の副将である彼の場所のことを話した。
「左様ですな」
「うむ、先陣は安芸の大内家について国人達の軍勢でな」
「陶殿は二陣で」
「大内家の主力を率いておられてな」
「いざという時に大軍を以て攻めるおつもりですな」
「即ち本陣におられぬ」
 元就はこのことを鋭い目で述べた。
「このことがじゃ」
「狙い目ですな」
「左様、本陣は戦に向いておらずしかも初陣の大内殿のみ」
「初陣というのも大きいですな」
「陶殿も傍におられぬならな」
 元就が見るに直情的であるがそれでも武に秀でた彼がというのだ。
「ならばな」
「一気に攻めまするな」
「それも夜にじゃ」
「その時に、ですか」
「敵の本陣を一気に攻めてじゃ」
 そうしてというのだ。
「敵の本陣を破るぞ、そうして敵を乱してな」
「そこで、ですな」
「すぐに吉川殿や武田殿に忍の者を送り」
 その様にしてというのだ。 
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