八条学園騒動記
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第五百六十五話 歌劇も観てその七
「どうもね」
「そういえばそうかな」
マルティも言われて思った。
「あの作品は」
「うん、マクベスはそうしたね」
「倒されて万々歳で終わりか」
「そんな簡単なキャラクターかな」
「作中最初は根っからの武人とか言われてたね」
「これヤーゴもだけれどね」
オセローの悪役であるこのキャラクターも同じだ、その根っからの武人が醜い邪悪な性格になってしまったのだ。
「権力欲とかで変わって」
「暴君になったから」
「何故そうなったのか」
「そこを考えないと駄目だね」
「そう思ったよ」
実際にというのだ。
「僕はね」
「それで言うんだ」
「うん、マクベスは好きな作品だけれど」
「最後が腑に落ちないんだ」
「終わり方としてね、まあマクベスが死ぬことは」
このこと自体はというと。
「別にね」
「いいんだね」
「ああしたキャラは滅ぶものだよ」
「物語の中では」
「まあ現実でもね」
菅はこちらの世界の話もした、つまり自分達の世界の。
「因果応報ってあるから」
「悪いことをしたら報いを受ける」
「そうなるから」
だからだというのだ。
「それでね」
「マクベスがああなること自体はだね」
「当然だと思うよ」
「沢の人を殺した報いかな」
「そうだよ、けれどね」
「それでもなんだ」
「何か倒されただけで万々歳で終わるのは」
簒奪者にして暴君であるマクベスが倒されてだ。
「それはね」
「ちょっと違っていて」
「そこで彼が何故ああなったか」
「その描写が欲しいんだ」
「どうもね」
こうマルティに話した。
「僕としては」
「そうなんだね」
「そう思ったよ」
「成程ね」
「あとヴェニスの商人は」
この作品はというと。
「当時はともかく今だとね」
「ああ、シャイロックだね」
マルティは菅の言いたいことを察して話した。
「ユダヤ人の」
「あの商人の描写はね」
「ユダヤ人差別だね」
「そうだよね」
「エウロパじゃユダヤ人差別されていたからね」
「物凄く嫌われていて」
ただしシェークスピアは当時のヴェニスつまりヴェネツィアでのユダヤ系の状況のことは知らなかったという。
「それでね」
「ああして書かれていて」
「それがね」
「気になるね」
「うん、ユダヤ人差別だから」
「そのことは言われるね」
マルティもこう言う。
「そういえば」
「シャイロックってそこまで悪いか」
「契約のお話だし」
「それを反故にされるし」
「ペテンみたいにね」
「しかも」
菅はどうかという顔で述べた。
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