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盲導犬の幸せ

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第二章

「もう」
「ええ、あと少しだけしかね」
「僕達としかいられないね」
「けれどいいわね」
「うん、それまではね」
「一緒にいてあげてね」
「わかったよ」 
 翔太は母の言葉に頷いた、そうしてだった。
 両親と一緒にエドワードとの生活に入った、エドワードは大人しいだけでなく優しく礼儀正しい犬で。
 翔太の言うことをしっかりと聞いて動いてくれた、それで翔太は両親にエドワードに対して話した。
「あんな賢い犬はじめてだよ」
「ああ、流石だな」
 父も応えた、三十五歳だが髪の毛はかなり白くなっている。
「盲導犬だっただけあるな」
「言うこと何でも聞いて」
「悪いことしないからな」
「何もないとぴしっとしていて」
 礼儀正しく座っていてというのだ。
「凄いね」
「ああ、あんな立派な犬はな」
「お父さんもはじめてなんだ」
「そうだ」 
 その通りだというのだ。
「本当にな」
「そうなんだね」
「けれどな」
「けれど?」
「お爺さんだからな」
「ああ、だから」
 翔太もその一言でわかった。
「これから長くは一緒にいられないね」
「ああ、けれどな」
「それでもだね」
「最期までな」 
 その時までとだ、父は息子に話した。
「家族だからな」
「一緒にだね」
「いてやろうな、大事にして」
「それが僕達がエドワードにしてあげられることだね」
「ずっと人の為に役立ってくれたしな」
 それにとだ、父はさらに話した。
「家族になったんだ」
「それならだね」
「大事にしてあげような」
「人も犬も同じよ。大事にしてもらったら嬉しいのよ」
 それならとだ、母も翔太に話した。
「だからね」
「僕達はだね」
「大事にしてあげましょう」 
 エドワードをとだ、こう話してだった。
 そうして家族三人でエドワードと接していった、家族として。するとエドワードは家族にそして翔太にも懐き。
 家族の一員として仲良く暮らしていった、だがその中で翔太は不安になって両親に聞いた。
「エドワードって僕達と長く一緒にいられないんだね」
「もう歳だからな」
「十二歳ってワンちゃんだとお爺さんだから」
 だからだとだ、両親は翔太の不安な言葉に答えた。
「いつも言ってるけれどね」
「一緒にいられる時間は短いな」
「そうだよね。ずっと一緒にいたいけれど」
 エドワードに親しみ、家族としてそして友達としてそれを持った。それが為にだ。
「それでもだね」
「それは仕方ない。生きていると誰だって絶対に死ぬんだ」
 このことは避けられないとだ、父は息子に話した。
「お父さんもそれがわかってな」
「エドワードを引き取ったんだね」
「そうだ、最期まで人と一緒にいられたらな」
「エドワードも幸せだから」
「そうしようと決めたんだ」
「そうなんだね」
「犬も人も同じなんだ」
 どう同じかというと。 
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