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戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~

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第24節「守りたい笑顔」

 
前書き
2クールが終了。原作は全13話だし、第7話が真ん中あたりって考えると、やっぱり来月以内には終わっているかもしれない。

折り返しだけに、ここから物語は加速し始めます。
鬱パートはそろそろ抜けます。適合者は既に第8話を知ってるので、司令が歌っている姿を幻視している頃でしょうw

今日はキスの日なので、Twitterの方に短編流そうかと思います。

推奨BGMは『Next Destination』、それではどうぞお楽しみください! 

 
「数値は安定、年齢の割に大した体力です。それとも、振り絞った気力でしょうか?」

ウェル博士に手による処置が終わり、ナスターシャ教授のバイタルがようやく安定する。
時刻は既に夕刻、エアキャリアは山奥に着陸し、その機体を隠していた。

「よかった……」
「本当によかったデスッ!」

喜ぶ調と切歌に、マリアとツェルトも安堵の息を漏らす。
四人の顔を見ながら、ナスターシャ教授は良心を苛まれていた。

(私はこの優しい子達に、一体何をさせようとしていたのか……。所詮、テロリストの真似事では、迫りくる災厄に対して何も抗えないことに、もっと早く気付くべきでした……)



「それでは、本題に入りましょう」

そう言ってウェル博士は、モニターに回収してきたそれを映し出す。

「これは、ネフィリムの……」
「苦労して持ち帰った覚醒心臓です。必要量の聖遺物をエサと与える事で、本来の出力を発揮出来るようになりました。この心臓と、あなたが5年前に入手した──」
「ッ……!」

そこでマリアが一瞬、息を詰まらせる。

「お忘れなのですか? フィーネであるあなたが、皆神山の発掘チームより強奪した神獣鏡の事ですよ」
「ッ……え、ええ、そうだったわね……」
「マリアはまだ記憶の再生が完了していないのです。いずれにせよ聖遺物の扱いは当面、私の担当。話はこちらにお願いします」
「これは失礼」

歯切れの悪い回答に、ナスターシャ教授がフォローを入れる。
ウェル博士は無駄に恭しく頭を下げ、ツェルトがそれを見て舌打ちした。

「話を戻すと、フロンティアの封印を解く神獣鏡と、起動させるためのネフィリムの心臓がようやくここに揃ったわけです」
「そして、フロンティアの封印されたポイントも、先だって確認済み……」
「そうですッ! 既にデタラメなパーティーの開催準備は整っているのですよッ! あとは、僕達の奏でる狂想曲にて全人類が踊り狂うだけ……ははははは……うわはははは……ッ!」

パチパチと拍手し、小躍りしながらウェル博士は興奮気味に笑った。

(この言い草……やっぱりこいつ、世界とかどうでもいいんだろうな……。自分が英雄になる、その事実だけがこのマッド野郎の欲するものだ。用心しておかなきゃ、計画の土壇場でどんな裏切りを見せるか分かったもんじゃない……。獅子身中の虫ってのは、まさにこいつの事を言うんだろうな)

ツェルトだけでなく、これにはマリアや調、切歌も苦い顔をするしかない。誰がどう見ても気持ち悪いのだから。

「近く、計画を最終段階に進めましょう……。ですが、今は少し休ませていただきますよ……」
「ふん……」

作戦会議の終了を言い渡し、ナスターシャ教授は会議室を後にする。
ツェルトは背中を向けるウェル博士を睨むように見ながら、釘をさすように言った。

「それから……忘れんなよドクター。生弓矢は計画の後、セレナを蘇らせる為の物だ」
「ええ、勿論。既にRN式用コンバーターへの組み込みは終わっています。後は君次第ですよ」
「……ならいい。来るべき日に備え、俺はこの腕を馴染ませておくだけだ」

それだけ言うと、ツェルトはシミュレータールームへと向かって行った。

「ケッ……」

ツェルトが出ていった直後、博士が舌打ちしていた事は、誰も気にも留めていない。

日が沈んでから降り始めた雨。それに濡れた窓の外を見る博士の顔が、どんな表情をしていたのかも……この時は誰も知る由がなかった。

ff

「君には、知っておいてもらいたい事がある」

発令所にやって来たわたしの目に入ってきたのは、机に両手をついて俯くクリスと、悔し気に歯噛みしている純くん。

そして、モニターにでかでかと表示される、響と翔くんのレントゲン画像だった。

「これは……」
「胸に埋まった聖遺物の欠片が、翔と響くんの身体を蝕んでいる。これ以上の進行は、二人を人でなくしてしまうだろう……」
「そんな……」

さっき緒川さんに聞いたところ、医療班の人達が頑張ってくれたおかげで、二人の胸から突き出していた結晶は全て取り除かれたらしい。

でも、これ以上二人の症状が進行すれば、それでは間に合わなくなるってことぐらいは、わたしにも想像がついた。

結晶が全身から突き出し、皮膚どころか臓器までを突き破ってしまう可能性が高い。そうなったらもう、手の施しようがない事も気付いている。

これ以上は、二人が死んでしまう。
響と翔くんが本当に、わたしの手の届かないところに行っちゃう。

そう思うと、たまらなく怖くなった。

「今、了子くんが症状を抑える方法、及び治療法を模索してくれてはいるが……」
「くそったれが……ッ!」
「こんな事って……」

クリスが机を思いっきり蹴りつけているのに、今日の純くんはそれを止めない。

純くんにとっても、翔くんは大切な親友で、響はその恋人だ。常に平静な純くんとはいえ、こればっかりは無理もないと思う。

でも、わたしは諦めたくなかった。

わたしが呼ばれた、という事は、わたしにしかできない事があるからだ。

「──つまり、今後に二人が戦わなければ、これ以上の進行はないのですね?」
「響くんにとって、親友の君こそが最も大切な日常……。君の傍で、穏やかな時間を過ごす事だけが、ガングニールの侵食を抑制できると考えている。そして、それは響くんと深く繋がっている翔にも同じ事がいえる。君が響くんを引き留める事が、翔を救う事にも繋がるんだ」
「わたしが……二人を……」
「うむ。響くんを、そして翔を、守ってほしい……ッ!」

その言葉に、わたしは強く頷いた。

「わたしに、出来ることがあるのなら……。わたしがそうすることで、二人の命を守れるのならッ!」



その頃、シミュレータールームでは……翼が一人、鍛錬に勤しんでいた。

「はぁ、はぁ……ッ! もっと……もっと強力な仮想敵をお願いしますッ!」

目の前で翔と響をネフィリムに晒し、戦場から引き離したくて言った言葉で響を傷つけ、そして今回、二人の危機に間に合わなかった。

(私は強くならなければいけない……ッ! 今の私では……あまりにも無力過ぎる──ッ! こんな弱い私では……奏に向ける顔がないッ!)

自分を追い込み、責め続ける。
その命を燃やして自分や響を守ってくれた、奏の最期を思い出しながら。

「足りない……。もっと、もっと私は──私が、二人の分まで強くならなければ……ッ!」

ff

翌日、朝の10時頃の事。
都内のスーパー『STOREカワグチ』から、調と切歌は大量のレジ袋を抱えて出てきたところだった。

「楽しい楽しい買出しだって、こうも荷物が多いと面倒臭い労働デスよッ!」
「仕方ないよ。過剰投与したLiNKERの副作用を抜けきるまでは、おさんどん担当だもの……」
「あ……持ってあげるデス。調ってば、なんだか調子が悪そうデスし……」

調の顔色があまりよくない事に気づき、切歌は調に自分の手を差し出す。

「ありがとう。でも平気だから……」
「むうう……じゃあ、少し休憩していくデスッ!」

そう言って切歌は調と二人、静かに休憩できる場所を探して歩き出した。


辿り着いたのは、解体途中の工事現場だった。

人もいないので、資材の上に座って菓子パンを空ける。

「嫌な事も沢山あるけれど、こんなに自由があるなんて……施設にいた頃には想像出来なかったデスよ」
「うん……そうだね」

クリーム入りメロンパンを齧りながら喋る切歌に対して、調は膝の上に乗せたビターチョココロネを空けもせず、ただ俯いている。

「フィーネの魂が宿る器として、施設に閉じ込められていたアタシたち……。アタシたちの代わりにフィーネの魂を背負う事になったマリア……。自分が、自分でなくなるなんて怖い事を、結果的にマリア一人に押し付けてしまったアタシたち……」

メロンパンを食べ終え、切歌は黙りこくったまま喋らない調の方を見る。

「はぁ……はぁ……」
「調ッ!ずっとそんな調子だったデスか?」

調は息が荒く、額には汗が浮かんでいる。
どう見ても正常な状態ではない。体調がよろしくないのは明らかだ。

「大丈夫、ここで休んだからもう──」

切歌に心配をかけまいと、無理して立ち上がったその時──。

立ち眩みを起こした調は、すぐ傍に立てかけられていた足場用の鉄パイプを倒してしまった。

「──調ッ!」

慌てて駆け寄った切歌は、ガラガラという金属音に頭上を見上げる。

「あ……ッ!」

そこには、立て付けの悪さから、今の衝撃で崩れた足場から落下してきた大量の鉄パイプが迫っていて──



ff

昨日降ったからか、今日の天気は朝から晴天だった。

マリアはナスターシャ教授の車椅子を押し、近くにあった湖の湖畔まで来ていた。

晴れ渡る青空と温かな太陽、それを映す湖面はきらきらと輝き、昨日の雨で濡れた草花もまた、涼やかな秋風に揺れている。

彼女らが身を潜めるテロリストでなければ、絶好の散歩日和だと言えただろう。

「これまでの事で、よく分かった……。私の覚悟の甘さ、決意の弱さを……。その結末がもたらすものが、何なのかも……。だからねマム、私は──」
「その必要は、ありません」
「──え……?」

ナスターシャ教授の意外な言葉に、マリアは目を見開く。

「あなたにこれ以上、新生フィーネを演じてもらう必要はありません……」
「──マムッ!何を言うのッ!?」
「あなたは、マリア・カデンツァヴナ・イヴ……。フィーネの魂など宿していない、ただの優しいマリアなのですから……」

既にナスターシャ教授は、その覚悟を決めていた。

これ以上、未来ある子供達に“必要悪”という名の重責を背負わせるのは、彼女にとっても心が痛むことなのだから。

一人の大人として、彼女達の育ての“母親(マム)”として、その罪を背負うのは自分一人であるべきだったのだから……。

「フィーネの魂はどの器にも宿らなかった……。ただ、それだけのこと」



「ふ……」

(やはり、そういう事でしたか……)

だが、その言葉を陰で盗み聞きしていた者がいることに、二人は気付かない。

その男を最も警戒していた少年もまた、底を尽きかけている食料や日用品を調達するため、街に出払っている。

ウェル博士の邪なる野望が、フィーネの面々でさえ及ばぬ水面下で今、動き出そうとしていた……。

ff



「あれ……?」

落下する鉄パイプから調を庇い、目を瞑っていた切歌は、いつまで経っても訪れない痛みと衝撃を不審に思い、顔を上げる。

「な、なんデスかこの力……こんなの、まさか……」

反射的に空へと伸ばした手の先を見ると、そこには……半球状で紫色に発光する、亀甲模様のバリアが、切歌と調を囲むように展開されていた。

「何が……どうなってるデスか……?」

それが何かを理解した時、少女の心を恐怖が駆け巡った。 
 

 
後書き
きりしらが買出ししてる頃、ツェルトは……。

八百屋のおじさん「おっ、ツェルトくんじゃないか」
ツェルト「ご無沙汰してます。今日もいつもの、貰えます?」
八百屋のおじさん「ああ! ほれ、全部持ってってくれ!」
ツェルト「ありがとうございます!」
肉屋のおばちゃん「あら~、ツェルくんじゃな~い」
ツェルト「マダム、本日もお美しいですね」
肉屋のおばちゃん「んも~、お上手なんだから~。はい、切り落とした部位ね~」
ツェルト「ありがとうございます……って一キロも!? いいんですかこんなに!?」
肉屋のおばちゃん「いいのいいの~。捨てるのも勿体ないし、うちで食べるよりは困ってる子にあげちゃう方が、お肉も喜ぶわ~」
ツェルト「では、遠慮なく!」
パン屋のお姉さん「ほら、パンの耳詰めといたから!」
魚屋のお兄さん「昨日売れ残っちまった鮭の切り身、盛って行っちまいなァ!」
青果店のおばあさん「形が悪くて並べられなかったりんごも、持っていきなさい」
ツェルト「ありがとうございます! これだけあれば、家族全員を食べさせていけます!」

商店街へのコネ:アイドルとしての活動が出来なくなった後、来る食糧難に備えてツェルトは商店街にコネを作っていた。
短い時間だが、仕事を手伝われたお年寄りや、彼らから話を聞いた周辺店舗の人々は、「家族に食わせるために商品にならなかった食材を貰っていく健気な若者」への恵みを惜しまない。
商店街というコミュニティを利用したツェルトの地道な働きが、フィーネの台所事情を支えていることは、あまり知られていないのだ。
ちなみに、大鍋一杯のシチューにパンの耳を浸して食べる。これがツェルト一番の得意料理である。



原作よりは多少マシになっているであろう、F.I.S.組の食事事情。

次回はいよいよスカイタワーか……。
それでは次回もお楽しみに! 
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