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女子高の男子生徒

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第三章

「女の子が全体の八割っていうからな」
「もてるって思って試験受けてな」
「見事合格して入学出来たけれど」
「実際に彼女出来たけれど」
「それでも」
 夢は適った、だがそれでもというのだ。
「怖かったな」
「もう肉食獣みたいに迫ってきてな」
「僕二人で取り合いだったよ」
「僕もだよ」
「僕三人だったよ」
「両手をそれぞれ片方から引っ張られる感じで」
「大岡裁きみたいに」
 ソロモン王の逸話が日本に来てそうなったと言われている話だ、時代劇では定期的に題材になっていた。
「凄かったな」
「本当に」
「女の子って可愛いかって思ったら」
「凄いよな」
「生徒会長なんて」
 その美緒のことも話された。
「いきなり相手を生徒会長室に呼び出して告白したっていうな」
「両目ハートマークにさせて涎流して」
「凄い勢いで迫って告白したらしいな」
「それで相手も断れなかったって」
「どうなんだよ、それ」
「餓えた豹みたいだな」
「凄いな」
「男子が一年の二割で」
 共学を取り入れたばかりなのでそうなっているのだ。
「男子は圧倒的少数だから」
「もうな」
「僕達なんか激しい取り合いで」
「彼女いない奴いないけれど」
 入学してすぐにそうなった。
「女の子って怖い一面もあるんだな」
「もう凄い取り合いになったな」
「本当に」
「とんでもないことになったな」
 このことを話してだ、そしてだった。
 彼等は女の子達と付き合いながらそのうえで女子生徒達との交際をしていた、だが栄子はそんなことには気付かず。
 あくまで女性それも教師の視点これまで女子校だった学校の人間の立場から見て考え心配していた、そんな中で。
 肝心の娘が入学した、それで言うのだった。
「いいわね、男の子にはね」
「気をつけろっていうのね」
「十代の男の子なんてそれこそ」
 実は栄子自身この学園に幼稚園から通っていて高等部も卒業している、そして大学も女子大で夫とは見合い結婚で男性をほぼ知らないのだ。
 それで生半可な知識からこう娘に話すのだった。
「見境がないから」
「中等部も男の子いたから」
「そういえば中等部もだったわね」
「小学校も幼稚園もでしょ」
「共学になったから」
「中等部でも男の子いるから」
 だからだというのだ。
「もうね」
「もうっていうと」
「取り合いだったし。私はゲット出来なかったけれど」
「待って、ゲットって」
「だから彼氏の子が出来なかったの」
 娘はこう母に答えた。
「残念だけれど」
「待ちなさい、彼氏って」
「いや、普通でしょ」
 娘は母にこうも返した。
「それ位は」
「普通って」
「そうよ、中学生になったらね」
「普通じゃないわよ、お母さんはね」
「真面目ね、共学になったのよ」
 それならとだ、娘は感情的になる母にさらに話した。
「それならね」
「交際相手の人が出来ても」
「普通でしょ、女子校でも」
 つまりこれまでのままでもというのだ。 
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