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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

作者:sorano
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第72話  断章~深淵の共闘~

同日、PM17:40――――――

一方その頃エリンの里に戻ったトワ達は帝都(ヘイムダル)の特異点を見つけて先に戻っていたⅦ組の面々と再会した後、全ての特異点が揃った事で見つかると思われる黒の工房の本拠地についてを知る為にローゼリアのアトリエの中にある魔法具の場所へと向かった。

~エリンの里・ロゼのアトリエ~

「あ……………………」
「新たに二つ―――これで7つ揃ったね。」
「ええ、クロイツェン州、ノルティア州、ノルド高原……そして先輩達が見つけたサザ―ラント州、ラマール州、クロスベルに、帝都の特異点です。」
「ちなみに帝都はどこに特異点があったんだ?」
魔法具に写る特異点を見たトワは呆け、アンゼリカが呟いた言葉にエマは頷き、ある事が気になったクロウは帝都に向かった面々に訊ねた。
「うん、それが驚きの場所。」
「帝國博物館の地下――――――”本来の歴史”を知るレン皇女殿下の話によると”本来の歴史”で目覚めた暗黒竜そのものの居場所――――――暗黒竜の寝所が現れたという場所だ。」
「あの地下墓所の一角に……」
「……何らかの作為を感じるよね。」
ユーシスの説明を聞いたアリサは驚き、トワは真剣な表情で呟いた。

「”本来の歴史”で思い出したが……オイこら、チビ猫。クロスベルで出会った”特務支援課”とかいう連中と情報交換をした際に、テメェが”黄昏が起こった本来の歴史”の事について随分出し渋っていた事もわかったぞ。」
「ああ……特に”本来の歴史”では死んだと思われた皇子達は実は生きてたって話も黙っていたとかどう考えてもわざとだろ。しかも”敵”だった連中――――――ジョルジュやシャロンさん、それに”西風”の二人も終盤に協力してくれたって話も聞いたぞ。」
「ええっ!?そ、それは本当なの!?」
ある事を思い出したアッシュは厳しい目でレンを睨み、アッシュに続くようにクロウもレンをジト目で睨み、クロウの話を聞いた帝都の特異点に向かったメンバーのほとんどがそれぞれ血相を変えている中エリオットは驚きの声を上げて訊ねた。
「うん…………ただ爆破の事故によってオリヴァルト殿下は左眼を失明、子爵閣下は左腕を失う事になったらしいけど……」
「そうだったのですか……」
「それで?何でそんな重要な話をわざと黙っていたのかしら?」
トワの答えを聞いたラウラは複雑そうな表情をし、サラは厳しい表情でレンに訊ねた。
「え?だって、”聞かれなかったもの♪”」
そして悪びれもない笑顔で答えたレンの様子にその場にいるほとんどの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。するとその時ローゼリアが手を叩いてその場にいる全員に自分を注目させた。

「いずれにせよ、黄昏の開始以降、顕れた黒焔の霊脈の”経穴(ツボ)”じゃ。この7点の流れを見極めれば必ずや”元凶”にたどり着けよう。すなわち紅の騎神や皇太子。そして”終末の剣”が運ばれたと思わしき地精の本拠地にな。」
「…………そうか…………」
「やっと……ここまで辿り着けたんだね。」
「それでエマ君、ローゼリアさん。どのくらいで判明するものなんだ?」
「それまでに万全の態勢を整えておく必要がありそうだが。」
ローゼリアの話を聞いたユーシスは真剣な表情で呟き、エリオットは静かな表情で呟き、マキアスはエマとローゼリアに訊ね、ガイウスは表情を引き締めた。

「ええ、それが……」
「こっちの予想以上に黒焔の霊脈が活性化しているみたいなのよね。」
「妾の楔は打ち込んだゆえ、手掛かりを見失う心配はあるまい。が、見極めは少々かかりそうじゃ。少なくとも数日は見てもらおうか。」
「数日か……もどかしいわね。」
「……だが、焦りは禁物でしょう。」
「ええ、皇太子殿下の無事を信じて私達も備えておくしかないわね……」
エマたちの話を聞いて溜息を吐いたサラにラウラとアリサはそれぞれ声をかけた。
「ま、いずれにしても”レン達がⅦ組に協力する期間はここまでね。”」
「あ……………………」
「そういえば、”殲滅天使”達がわたし達に協力する期間は黒の工房の本拠地を見つけるまでだったね。」
レンが呟いた言葉を聞いたトワは呆けた声を出し、フィーは真剣な表情でレン達を見つめて呟いた。

「という訳でレーヴェとエヴリーヌお姉さまは先に帰っていいわよ。レンは”黒の工房の本拠地”が判明するまではこの里に残っているわ。」
「了解した。――――――お前達と次に会う時は恐らく互いの信念を貫くために”敵同士”となり、刃を交える事になるだろう。その時が来るまでに、今よりも更に腕を磨いておくことだな。」
「ま、ちょうどいい”暇潰し”にはなったよ。だけど、今後リウイお兄ちゃんやエヴリーヌ達の邪魔をするんだったら、容赦なく潰してあげるからね、キャハッ♪」
レンに視線を向けられたレーヴェとエヴリーヌはアリサ達に別れの言葉を告げた後エヴリーヌの転位魔術によってエヴリーヌとレーヴェはその場から消えた。
「行ってしまったか……」
「やれやれ……できればせめて、皇太子殿下を助けるまでは”助っ人”でい続けて欲しかったのだがね……」
「”助っ人”……―――!あの、レン皇女殿下。”黒の工房の本拠地”の件ですが、紅き(わたしたち)とメンフィル・クロスベル連合(あなたたち)が”共闘”できると思われるのですが、どうかわたしの話を聞いて頂けないでしょうか?」
「ぼ、紅き(ぼくたち)とメンフィル・クロスベル連合の”共闘”、ですか?」
「まあ、連中は黒の工房の本拠地で何らかの破壊工作をするつもりのようだから、それを考えると”黒の工房の本拠地”の件に関しては共闘”し合えるかもしれないわね。」
「へぇ?さすがトワお姉さん。”よくわかっているじゃない。”それで?そっちの要求内容は何かしら?」
二人が去った後ガイウスは静かな表情で呟き、アンゼリカは溜息を吐き、アンゼリカの言葉を聞いてある事を閃いたトワの話を聞いたエリオットは驚き、サラは真剣な表情で考え込み、レンは意味ありげな笑みを浮かべてトワに問いかけた。

「……要求内容は二つです。一つは救出対象である皇太子殿下や”終末の剣”となったミリアムちゃんを含めたわたし達全員が”誰一人欠けることなく黒の工房の本拠地から生還できる方法”と、”黒の工房の本拠地にあると思われるミリアムちゃんのスペアボディの保護”です。」
「あん?俺達が全員生きて脱出できるようにする件はともかく、話にあったそのミリアムとかいうガキの新しい身体を連中に任せるんだ?」
「まあ、皇太子殿下を救出する為に”黒の工房の本拠地”に突入する私達にミリアム君のスペアボディ――――――子供とはいえ”人一人分という荷物”を抱えるような余裕はないから、トワはわざわざそんな条件を出したんだと思うよ。」
「た、確かに言われてみれば黒の工房の本拠地”――――――”敵の本拠地”に突入する僕達に”人一人分”を抱えて工房内を攻略するような余裕はないよな……?」
トワの要求内容を聞いて首を傾げているアッシュの疑問にアンゼリカは答え、マキアスは不安そうな表情で呟いた。
「………………ま、どっちも許容範囲だから構わないけど、生還の件に関しては脱出するまでの途中の道のりとかで誰かがやられたりとかする可能性だってあるんだから、さすがにそこまでは責任を持てないわよ。」
「はい。その件に関してはわたし達自身の責任ですから。」
「それに私達はこれ以上誰一人欠ける事なんてさせません……!」
「ん。今までのようにみんなで協力してお互いを助け合うから大丈夫だね。」
少しの間考え込んだ後指摘したレンの答えにトワは頷き、アリサとフィーは決意の表情で答えた。

「――――――結構。”黒の工房の本拠地”が判明次第、”黒の工房の本拠地”に対するメンフィル帝国軍による”軍事作戦”のブリーフィングをする手筈になっているから、そのブリーフィングに特別に”視聴”できる手配をしてあげるわ。」
「”メンフィル帝国軍による軍事作戦のブリーフィングの視聴”、ですか?」
「”視聴”…………――――――要するにあたし達はただその”軍事作戦”とやらの内容を知る事ができるだけで、作戦の内容に”意見”とかはさせないつもりね?」
満足げな笑みを浮かべて答えたレンの答えを聞いたエマは不思議そうな表情で問い返し、ある事に気づいたサラは厳しい表情で指摘した。
「それは…………」
「当り前じゃない。今まではリィンお兄さん達の件で”お情けで協力関係を結んであげていた”けど、”ここからはお互いを利用し合う関係”よ。メンフィルにとっては”部外者”の貴方達の意見なんて聞く”義理”もそうだし、”命を奪い合いをする本物の戦争のプロであるメンフィル軍にとって他国所属で、それも本物の戦争の経験もしていない人達の意見なんて価値はない”でしょう?だって、これから行われるメンフィル軍による黒の工房に対する襲撃も、”軍事作戦”なんだから。」
「………………」
サラの指摘を聞いたラウラが真剣な表情を浮かべている中意味ありげな笑みを浮かべて答えたレンの答えにその場にいる全員は誰も答えられず、その場は重苦しい空気に包まれた。
「ブリーフィングの場所や時間等はロゼを通してみんなに伝える予定だから、それまでに”準備”と”覚悟”を万全にしておくことね。」
そこに追撃するかのようにレンはアリサ達を見回して不敵な笑みを浮かべて指摘した。

そして3日後、ローゼリア達によってついに”黒の工房の本拠地”の場所が判明し……アリサ達はローゼリアを通して伝えられたレンからの連絡であるメンフィル帝国軍による”黒の工房の本拠地”に対する軍事作戦のブリーフィングの視聴の時間や場所等を伝えられ、ブリーフィングを参加する為にレンと共に騎神や機甲兵が待機している広場で待っていた。


2月2日、同日PM17:20――――――

~広場~

「――――――そろそろ時間ね。」
広場で待っていたレンがENGMAを取り出してENGMAに表示されている時間を確認して呟くと、結界に包まれた空に魔法陣が現れた後魔法陣からある存在が現れようとした。
「あ、あれ……?この駆動音って確か………」
「……どういう事だ?殿下達との合流は明日のはずだが……」
魔法陣から現れようとするある存在が出す音を聞いたその場にいる多くの者達が血相を変えている中エリオットは困惑し、ユーシスは戸惑っていた。すると魔法陣から”灰色の翼レヴォリューション”が現れた!
「なああああああああっ!?」
「は、”灰色のカレイジャス”………!?」
「!まさか…………あの飛行艇は”カレイジャス”と同じ”アルセイユ”の姉妹艇――――――”メンフィルが開発したアルセイユ”なの!?」
”灰色の翼”の登場にその場にいる多くの者達が驚いている中マキアスとエマは驚きの声を上げ、察しがついたサラは信じられない表情でレンに訊ね
「うふふ、察しがいいわね。――――――”灰色の翼レヴォリューション”。リベール王国の協力によって”カレイジャス”の開発後に開発されていた”アルセイユ三番艦”よ。」
「は、”灰色の翼”って事は……!」
「まさか――――――」
意味ありげな笑みを浮かべて答えたレンの答えを聞いたトワは信じられない表情をし、ある事を察したガイウスは真剣な表情を浮かべた。するとレヴォリューションが着地すると格納庫の開閉装置が開いて、そこからある人物が現れた。その人物とは――――――
「リィン――――――!」
格納庫から現れた人物―――リィンを見たアリサは声を上げた。一方リィンはアリサに視線を向けて一瞬だけ複雑そうな表情をしたがすぐに表情を引き締めてレンの所へと向かって、レンと対峙するとレンに敬礼した。

「――――――”灰獅子隊”軍団長リィン・シュバルツァー少将、レン皇女殿下並びにブリーフィングを視聴される”紅き翼”の皆様方をお迎えに上がりました。」
「ハアッ!?」
「しょ、”少将”って事は少し前の父さんの軍位の一つ手前の軍位にリィンは昇進したの……!?」
「それに”灰獅子隊”の”軍団長”という事は……」
「予想通り以前俺達に”宣戦布告”をした連中と既に合流していたようだな。」
「ハッ、あんたが噂の”灰色の騎士”サマかよ。」
リィンの名乗りを聞いたレンを除いたその場にいる全員が驚いている中サラは思わず驚きの声を上げ、エリオットは信じられない表情をし、ある事に気づいたアンゼリカとクロウは真剣な表情で呟き、アッシュは鼻を鳴らして目を細めてリィンを睨んだ。
「ご苦労様。今回のブリーフィングの参加者でレン達以外の人達はもう揃っているかしら?」
対するレンも敬礼で返した後リィンに確認した。
「ええ、後はレン皇女殿下達だけです。――――――そちらの女性は確か”魔女の眷属(ヘクセンブリード)”の”長”殿でしたね?お初にお目にかかります。トールズ時代、エマとセリーヌには随分と世話になりました。」
「うむ…………その件に関してはお互い様じゃし、むしろ妾はヌシに謝る側じゃ。妾の教育不足によって放蕩娘(ヴィータ)がヌシもそうじゃが、ヌシの周りの者達にも随分と迷惑をかけたそうじゃからの、現代の灰の起動者(ライザー)よ。」
「リィンさん…………」
「……………………」
レンの言葉に頷いたリィンはローゼリアに視線を向けて声をかけ、声をかけられたローゼリアは重々しい様子を纏って答え、リィンのローゼリアに対する挨拶に”リィンは自分にとってトールズ士官学院の生活は過去の事である言い方”をした事に気づいていたエマは辛そうな表情でリィンを見つめ、セリーヌは目を伏せて黙り込んでいた。

「いえ…………紅き終焉の魔王(エンド・オブ・ヴァーミリオン)が顕現した時はクロチルダさんの協力がなければ皇太子殿下を救えなかったでしょうし、戦後クロチルダさんはエリスの件で自分達に謝罪するとの事ですから、自分はその件に関してそれ程気にしていません。」
「そうか…………ああ、それと妾の事は”ロゼ”と呼んでよいぞ。」
「わかりました。でしたら自分の事も名前で呼んで頂いて構いません。――――――ようこそ、”灰色の翼”レヴォリューションへ。」
ローゼリアとの会話を終えたリィンはアリサ達を見回して敬礼をした。

そしてアリサ達はリィンの先導によって艦内を歩き始めた。

~格納庫~

「あ……………………」
「ヴァリマール……!」
「その両隣にいるのは”金の騎神”に”神機”ね。」
「加えて機甲兵達も配備している所を考えると、”灰獅子隊”とやらにも”機甲兵”達を運用しているようだな?」
格納庫に入ってすぐに見えた光景――――――それぞれメンフィル兵達に整備されているヴァリマール達を見つけたアリサは呆けた声を出し、エリオットは声を上げ、セリーヌは目を細め、ユーシスは真剣な表情でリィンに訊ねた。
「ああ。とは言っても格納庫の広さの関係で配備される機体の数は限られている為、この艦に配備されている機甲兵は大した数じゃないがな。」
「”大した数じゃない”って言っても、どう見ても少なくてもこっちの倍は確実に配備しているよね。」
「ったく、”騎神”どころか機甲兵の数までこっちの倍とか、チート過ぎだろ……」
リィンの説明を聞いたフィーはジト目でヴァリマール達の周囲に待機している機甲兵達を見回し、クロウは呆れた表情で指摘した。

「あの機体は初めて見る機体だが……あれも機甲兵なのか?」
その時見慣れない機体――――――パテル=マテルを見つけたガイウスは不思議そうな表情で訊ね
「ああ、あの機体は”パテル=マテル”だから機甲兵ではないわよ。」
「!あの機体が例の……」
「サラ教官はあちらの機体について何かご存じなのでしょうか?」
ガイウスの疑問に答えたレンの答えを聞いて血相を変えたサラの様子が気になったラウラはサラに訊ねた。

「あの機体――――――”パテル=マテル”は3年前の”リベールの異変”時に結社に運用されていた巨大人形兵器だったそうだけど、リベールの精鋭部隊と共に浮遊都市に乗り込んだメンフィル軍によって奪われて、その結果”殲滅天使”専用の機体になったそうなのよ。」
「ええっ!?メ、メンフィル軍が結社から奪った人形兵器!?」
「ひ、非常識な……」
「しかもそこのチビ猫の”専用機体”って事は…………どれだけ”手札”を持っているんだよ、このチビ猫は……」
「クスクス、これでもレンの”手札”は結構みんなに見せてきたから、”手札はもうそんなに残っていないわよ♪”」
「そういう口ぶりをするって事は、まだわたし達に見せていない”手札”があるって事だよね?」
サラの説明を聞いたエリオットは驚き、マキアスは疲れた表情で呟き、目を細めたアッシュに見つめられて小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンの答えにその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中フィーは真剣な表情でレンを見つめて指摘した。

「ええっ!?あ、あの翼の生えた馬ってまさか……!」
天馬(ペガサス)…………」
「それによく見たら鷲獅子(グリフィン)に竜―――いえ、飛竜までいるわね……もしかして、あれらも異世界には存在しているこの世界には存在していない空想上の幻想種なのかしら?」
その時軍馬の傍でメンフィル軍に世話をされている天馬や飛竜、鷲獅子(グリフィン)を見つけたトワは驚きの声を上げ、ガイウスは呆けた声を出し、セリーヌは目を細めてリィンに訊ねた。
「ああ。どれもメンフィル軍の空を駆る騎兵達の”相棒”となる”騎獣”達だ。」
「そ、”空を駆る騎兵”って事は、メンフィル軍の中には天馬(ペガサス)みたいな翼が生えた生き物達に乗って生身で空を飛び回る人達もいるの!?」
リィンの説明を聞いたエリオットは信じられない表情で訊ねた。

「うふふ、当たり前じゃない。ちなみにメンフィル軍の空を駆る騎兵達には当然この世界の飛行艇――――――要するに空挺部隊への”対処法”があるから、達人(マスター)クラスでなくても一般兵でも生身で空挺部隊を”撃墜する事ができる”わよ?」
「い、”一般兵クラスでも生身で空挺部隊を撃墜するみたいな非常識過ぎる方法”って一体どういう方法なんだ……?」
「……いずれにしても、エレボニアは未だメンフィル軍の”力”を正確に把握していない事は確実でしょうね。」
意味ありげな笑みを浮かべて答えたレンの答えを聞いたリィンを除いたその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中マキアスは不安そうな表情で呟き、サラは重々しい様子を纏って呟いた。
「ちなみにリィンも訓練兵時代に天馬(ペガサス)のような空を駆る騎獣達を駆った事があるのか?」
その時ある事が気になっていたガイウスはリィンに訊ね
「ああ、訓練の一環で当然軍馬を含めた騎獣の類は一通り乗らされたよ。――――――とはいっても、天馬(ペガサス)がこの世界での伝承通り女性しか自分の”騎手”として認めないから”男”の俺は天馬(ペガサス)を駆った事はないがな。」
「そうなのか……少し残念だな……馬に乗って大空を駆けるとはどのようなものなのか気になっていたのだがな……」
「チッ、馬の分際で乗り手を選ぶとは生意気な。」
「ハッハッハッ、”男”の君達には残念だったね。フッ、機会があれば女の子達とのデートプランで空のデートとしゃれこみたいものだね。」
「アンちゃん…………」
「お前が言うと洒落になってないっつーの。………それよりも、さっきから気になっていたが”灰色の翼”だったか?まさかとは思うがカレイジャスに続くアルセイユ三番艦であるこの船は”灰獅子隊”のように、俺達に対する嫌がらせの為にわざわざメンフィルが開発したのかよ?」
リィンの答えを聞いてそれぞれ”馬術”を趣味の一つとしているガイウスは”天馬(ペガサス)”を駆れない事を残念がり、ユーシスは舌打ちをして天馬(ペガサス)を睨み、アンゼリカは呑気に笑った後口元に笑みを浮かべ、アンゼリカの発言にその場にいる全員が冷や汗をかいて脱力している中トワと共にクロウは呆れた表情で呟いた後目を細めてレンに訊ねた。

「さすがにそれは考え過ぎよ。元々メンフィルでもリベールの協力によって”アルセイユ”の姉妹艇は”カレイジャス”とほぼ同時期に開発されていて完成したのは”カレイジャス”よりも二月(ふたつき)遅れだから、今回の戦争が始まる前からこの飛行艇自身は存在しているわよ。――――――まあ、完成したとはいっても、今までこの船を最大限に生かす方法を思いつけなかったから緊急用の高速飛行艇としてお蔵入りしていたんだけど………皮肉にも去年のエレボニアの内戦で紅き(あなたたち)がそのヒントをくれたお陰で、試験段階として今回の戦争で運用開始(ロールアウト)されることになったのよ。」
「な、”内戦での紅き(ぼくたち)の活躍がヒントになった”って……」
「………もしかして”灰獅子隊”の連中はエマ達のようにこの飛行艇でメンフィルの領土内を回ってエマ達みたいな活動をするのかしら?」
レンの説明を聞いたエリオットは不安そうな表情をし、セリーヌは目を細めてレンに訊ねた。
「うふふ、”灰獅子隊”の活動の一つとして要請(オーダー)という形でこの世界のメンフィル領土内にいるメンフィル軍の関係者は当然として時間があれば民間人の要請(オーダー)を受ける事も予定されているから、その推測には否定しないけど……この艦の最優先の目的は様々な戦場に駆けつけて味方を勝利に導く事だから、”カレイジャス”の運用目的とは全く異なるわよ。」
「”最優先の目的は様々な戦場に駆けつけて味方を勝利に導く事”という事は、この飛行艇は最低限の武装しかないカレイジャスと違ってこの飛行艇を使っての戦闘を想定されている為、武装もかなり搭載されているのでしょうか?」
レンの答えを聞いてある事に気づいたアンゼリカは真剣な表情で訊ねた。

「ええ、この飛行艇に備わっているスピードは当然として、武装の火力、そして魔導技術による障壁を活用すれば少なくてもエレボニア帝国の正規軍の空挺部隊はこの飛行艇だけで”全滅”に追いやる事ができるわ。」
「こ、この飛行艇一つで正規軍の空挺部隊を”全滅”に追いやる事ができるって……!」
「………今までの話を聞いて気になることがでてきたわ……この飛行艇の名前も運用目的も全てあの女将軍――――――セシリア将軍の仕業なのかしら?」
レンの説明を聞いたアリサ達がそれぞれ血相を変えている中マキアスは不安そうな表情で声を上げ、サラは厳しい表情でレンに訊ねた。
「ええ、そう聞いているわ。」
「やっぱりね……次に会った時、タダじゃすませないわよ、あの女将軍……!」
そしてレンが自分の質問を肯定するとサラは怒りの表情でセシリアを思い浮かべ
「フウ………悪い事は言いませんから、今までのように受けた借りを返すみたいな事をセシリア教官にしたら、サラ教官が”返り討ち”に遭う事は目に見えていますから、自分の思い通りにする為だけにセシリア教官に喧嘩を売る事は止めた方がいいですよ。」
「ハッ、最近まで自分を世話していたサラよりも昔の自分の世話をしていたその将軍とやらの肩を持っているが、そんなにその将軍とやらは強いのかよ?話に聞いた感じ、その将軍とやらはこの里の連中と同じ”魔女”とかいうオカルトじみた使い手なんだろ?アーツもそうだが、魔術とやらも発動するまでに時間があるんだから、それまでに接近しちまえばいいだけの話じゃねぇか。」
「フン、放蕩娘(ヴィータ)半人前(エマ)はともかく、妾をそこらの”魔女”と一緒にするでない、小童(こわっぱ)。」
「そこでわざわざ威張る必要はないでしょうが……」
「アハハ…………」
サラの言葉に対して呆れた表情で溜息を吐いて指摘したリィンの指摘にアリサ達がそれぞれ驚いている中アッシュは鼻を鳴らして訊ね、アッシュの言葉に対して得意げな笑みを浮かべて胸を張ったローゼリアにセリーヌが呆れている中、エマは苦笑していた。

「アッシュ、だったか。現メンフィル皇帝であられるシルヴァン陛下直轄の親衛隊を率いる将軍の一人であられるセシリア教官が、そんな”魔術師にとっての初歩的な弱点の対策をしていない”と思っている時点で、大間違いだ。」
「そういう口ぶりをするって事は、お前のメンフィル軍時代の担当教官とやらはヴィータや委員長みたいな魔術師の類でありながらも、接近戦もこなせるのか?」
リィンのアッシュへの指摘を聞いたクロウは真剣な表情でリィンに訊ねた。

「ああ。訓練兵時代の俺や黒獅子の学級(ルーヴェン・クラッセ)は当然セシリア教官と模擬戦をする機会はあったけど、それぞれ”俺達の世話をしてくれたフォルデ先輩達を含めた誰もがセシリア教官相手に模擬戦で勝てた事はなかった。”」
「”剣鬼”と呼ばれていたリィンどころか、最低でも結社の”執行者”候補クラスで中には”執行者”クラスの強さを持つ黒獅子の学級(ルーヴェン・クラッセ)の人達の誰もがセシリア将軍に勝てなかったという事はヴァンダール流を”皆伝”しているフォルデ殿でもセシリア将軍に勝てなかった事にもなるのだから、一体セシリア将軍はどれ程の使い手なのだ……?」
「少なくても無策で突っ込めば痛い目に遭う事は目に見えているだろうね。」
「何でそこであたしを見るのよ!?というか、リィンもまるであたしが喧嘩っ早くてなんでも”力”で解決するような言い方をしているけど、あたしの事を何だと思っているのよ!?」
リィンの答えを聞いたラウラが驚いている中、真剣な表情で呟いたフィーはジト目でサラに視線を向け、その様子を見たアリサ達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中サラは顔に青筋をたてて反論し、それを聞いたアリサ達に加えてリィンもそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「まさにどの口が、だな。」
「全くだな。バリアハートの特別実習で反論した僕達に自分の言う事を聞かせる為に”力づく”で黙らせたじゃないですか。」
「そこ、うっさいわよ!」
ジト目のユーシスとマキアスの言葉を聞いたサラは二人を睨んで声を上げた。そしてリィン達は再び先へと進み始めた――――――

 
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