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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

作者:sorano
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外伝~結成・『灰獅子隊』~  第二部終了

同日、PM3:50――――――

~ノーザン間道~

「リィンさん……!エリスにエリゼさんも……!」
「さすがに今ので”止め”を刺せたと思ったのですが、あの状況で回避行動に移れるとは、予想以上の”化物”ですね、”猟兵王”は。」
「ええ……ですが、完全には回避できず、左腕を失ったのですから”騎神”としての戦闘能力は間違いなく落ちているでしょうね。」
「ふふっ、みんなの”絆”が生んだ”成果”ね。」
ゼクトールが左腕を失った事でヴァリマール達が勝利に限りなく近づいている事を悟ったアルフィンは明るい表情をし、真剣な表情で呟いたアルティナの言葉にセレーネは静かな表情で頷き、アイドスは微笑ましそうに仲間たちを見つめていた。
「団長……っ!?」
「お見事です、御三方共……!」
「ふふっ、利き腕ではないにせよ、左腕を失った事で”紫の騎神は両腕が使えなくなった”のですから間違いなく今後の猟兵王の”騎神”を使っての戦闘能力は下がっているでしょうね。」
「あぁ……っ!これで更なる武功を稼ぎ、そして名声を得る事ができましたね、我が主……!」
「ユ、ユリーシャさん。戦闘はまだ続いているのですから、気を抜かないでくださいね?」
一方左腕を失ったゼクトールを見たレオニダスは信じられない表情で声を上げ、クルトは口元に笑みを浮かべてヴァリマール達に視線を向け、ミュゼは静かな笑みを浮かべて呟き、ヴァリマール達の活躍にふにゃりと顔を崩して喜んでいるユリーシャの様子を見たメサイアは冷や汗をかいて苦笑しながら指摘した。

「クッ……ゼノに続いて団長まで失ってたまるものか……!」
そしてレオニダスはゼクトールの支援の為にクルト達を無視してゼクトールの元へと向かおうとしたが、そこにクルト達はそれぞれ遠距離攻撃を放ってレオニダスを牽制した。
「僕達の事を忘れないでもらおう……!」
「フフッ、私達との戦闘で疲弊している状況でもなお”猟兵王”の援護の為に向かおうとするその忠誠心はご立派ですが、まずはその前にご自分の身を心配すべきと思いますわよ?」
「貴様ら……ッ!」
双剣を構えたクルトと魔導騎銃を構えてレオニダスに狙いを定めて意味ありげな笑みを浮かべたミュゼの言葉を聞いたレオニダスは怒りと焦りが混ざった表情でクルト達を睨んだ。
「ふふっ、確かにその娘の言う通り、まずは自分の身を心配すべきだよ―――ね!」
「!?く……っ!があっ!?」
そこに不敵な笑みを浮かべたフルーレティが転位魔術でレオニダスの背後に現れると同時に鞭を振るい、フルーレティの奇襲に気づいたレオニダスは咄嗟に側面に跳躍してフルーレティの鞭を回避しようとしたがクルト達との戦闘によって疲弊した身体では人間である自分よりも圧倒的に身体能力が優れている”魔神”であるフルーレティが振るった鞭は回避しきれず、脇腹が鞭によってえぐり取られて脇腹から大量の血を噴出させた。

「レオ!?それに嬢ちゃんはカレル離宮の時の……!って事は――――――」
フルーレティの奇襲によって深手を負ったレオニダスを見て驚いたルトガーだったがすぐにジェダル達も近くにいる事に気づいて警戒の表情を浮かべた。
「大地の力よ、今ここに収束せよ――――――メテオグレイブ!!」
「月女神リューシオンよ、邪悪なる者に正義の鉄槌を――――――神槍の流星!!」
「!!」
その時ゼクトールの背後からジェダルと共にゼクトールの背後を取ったリリカと守護天使ユリーシャがそれぞれが放てる魔術の中でもトップクラスの威力を誇る魔術をゼクトールのヘッド目掛けて放ち、二人の声を聞いたゼクトールは振り向くことなく襲い掛かる魔術を大きく側面に跳躍して回避した。
「十戒の鼓動、起死の招来。幻妖の下に馳せすとは御滅による安息と知るが良い!――――――ファントムデストラクション!!」
そこにリリカ達の傍で地面に巨大な魔法陣を展開して詠唱をしていたフィアが大魔術を発動させた。するとフィアの頭上に巨大な光の魔法陣が現れた後魔法陣からはゼクトールを丸ごと覆いつくす巨大な光のエネルギーがゼクトールへと襲い掛かった!
「な――――――!チィ……ッ!――――――オォォォォォォォォォ――――――ッ!!」
フィアが放った大魔術に驚いたルトガーはゼクトールに回避行動を取らせようとしたが背後にレオニダスがいる事に気づいて、自分が回避すればレオニダスがフィアが放った大魔術によって消し飛ばされる事を悟ると残った右腕に持っている武器に全身全霊の力を込めて自分達を襲い掛かる極太の光のエネルギーを切り裂いた!

「ぐう……っ!?ハア……ハア……」
「無事か、団長……!?」
フィアの大魔術を無効化したゼクトールだったが、その代償も凄まじく、大魔術を無効化するとゼムリアストーン製のゼクトールの得物は木端微塵に砕け散り、更に起動者であるルトガーも相当な疲労によって息を切らせており、その事によってゼクトールも地面に膝をついた。一方それを見たレオニダスはゼクトールに駆けよってルトガーの身を心配した。
「えええええええええっ!?アレを切り裂くなんて嘘でしょう~!?」
「幾ら”不死者”とはいえ”人”の身でありながら大魔術――――――それも”不死者にとっては弱点である光の大魔術”を切り裂くなんて信じ難いことをしますね……」
「ええ……―――ですが”我が主にとっては好機”です。」
一方自分が放った大魔術を無効化された事を見たフィアは驚き、信じられない表情で呟いたリリカの言葉に守護天使ユリーシャが頷いた後口元に笑みを浮かべると、フィアが大魔術を放った後に空高くへと跳躍したジェダルは落下による勢いを利用した凄まじい一撃をゼクトールの右腕の関節部分を狙って叩き込んだ!
「砕け散れ――――――天破虎爪烈斬!!」
「がああああああああ…………っ!?」
「団長――――――ッ!!」
ジェダルが放ったクラフトによってゼクトールの無事だった右腕は斬り落とされて地面に落ち、支えを失ったゼクトールは地面に倒れ、それを見たレオニダスは声を上げた。そして技を放つと共に地面に着地したジェダルは地面に着地した瞬間素早い動作でフルーレティの傍まで下がり、ゼクトールとの距離を取った。

「あ、貴方達は確か異世界の……」
「”傭兵”のジェダル・シュヴァルカ様とそのお仲間の方々ですわね。――――――そのご様子ですと、そちらが”メンフィル軍より受けた依頼を完了した帰り道に偶然この場に鉢合わせた為、将来確実に戦う事がわかっている敵の戦力を低下させる為に”リィン大佐達に加勢して頂けたのでしょうか?」
「ああ。」
一方自分達にとっても予想外のジェダル達の登場にクルトが驚いている中、ジェダル達が現れた状況等をその身に宿っている”異能”じみた力――――――”盤面が見える能力”によって悟る事ができたミュゼはジェダルに問いかけ、ミュゼの問いかけにジェダルは頷いた。
「”メンフィル軍からの依頼”だと……?――――――!まさか貴様ら…………っ!」
「俺達が逃がした”北の猟兵”の連中を”皆殺し”にしちまったのか?」
ミュゼとジェダルの会話とジェダル達が自分達の背後から現れた事でジェダル達の”依頼内容”が自分達がレミフェリアへと逃がした”北の猟兵達の始末”である事を瞬時に悟ったレオニダスとルトガーは怒りの表情でジェダル達を睨んだ。
「お前達がどれだけ逃がしたかは知らないが……少なくても、国境を封鎖するメンフィル軍が到着するまでに現れた連中は全員一人残らず殲滅した。」
「!!…………ッ!」
「国境を封鎖するメンフィル軍……―――!先程の騎馬隊か……!」
ジェダルの答えを聞いたルトガーは目を見開いた後思わず怒りの表情で両手を操縦席に叩きつけて唇を噛み締め、レオニダスはディミトリ達の事を思い返して怒りの表情を浮かべた。

「ハハ…………俺達のこの”ザマ”といい、北の猟兵の連中の事といい、俺も耄碌しちまったもんだな……これじゃあ大佐やゼノに会わす顔もねぇな……シグムントやザックスも連合の連中に殺られたって話だし、もう西風と星座――――――いや、”猟兵という存在が時代遅れの時代”へと変わろうとしているのかもしれねぇな……やはり、フィーを”西風”から抜けさせて正解だったな。」
「団長……」
寂しげな笑みを浮かべて呟いたルトガーの言葉を聞いたレオニダスは複雑そうな表情をした。
「え…………」
「……その口ぶりからすると、あんた達”西風の旅団”は3年前の”リベールの異変”の件がなくても機会があればフィーに猟兵を止めさせるつもりだったのか?」
一方意外な事実を知ったセレーネは呆けた声を出し、リィンは静かな表情でルトガーに問いかけた。
「おっと、しゃべりすぎちまったみたいだな。今の話の”続き”についてはフィー達が俺達に届いた時にさせてもらうぜ。――――――という訳だから俺達はこの辺で退散させてもらうぜ。」
リィンの問いかけに対してルトガーは苦笑した後不敵な笑みを浮かべた。するとゼクトールは”精霊の道”を起動していた。
「あ、あれは”騎神”達の性能の一つである……!」
「”精霊の道”……!」
ゼクトールが起動した”精霊の道”を見たアルフィンは驚き、エリゼは真剣な表情で呟いた。するとゼクトールとレオニダスは”精霊の道”によってその場から転位して離脱した。

「逃がしてしまったか……今回の戦争で感じたが”転位”は便利な手段だが、同時に相手にも”転位”の手段があるとほぼ確実に撤退を許してしまうから本当に厄介な手段だな、”転位”は……」
「ふふっ、ですが今回の戦いで”紫の騎神”の得物を破壊した上両腕も破壊できたのですから、恐らくですが今回の戦争で”紫の騎神”が戦場に復帰する事は不可能と思われますから、戦果としては十分すぎますわ。」
ゼクトール達が消えるとクルトは真剣な表情でゼクトール達が消えた場所を見つめて呟き、クルトの言葉に対してミュゼは静かな笑みを浮かべて答えた。するとその時リィンのENGMAから通信の音が聞こえ、音を聞いたリィンは通信を開始した。
「――――――こちらシュバルツァー。ええ……ええ……了解しました。それと”例の件”――――――”紫の騎神”との戦闘も発生しましたので、その件についてのご報告をさせて頂きます――――――」
通信を開始したリィンは通信相手にゼクトール達との戦いの報告を伝えた。
「………了解しました、失礼します。―――みんな、先程メンフィル軍・ヴァイスラント新生軍によるハリアスクの占領を完了したとの事だ。遊撃隊はこのまま”グロリアス”に帰還する。それとジェダルさん。ジェダルさん達をクロスベルまで送る飛行艇は既に手配したとの事で、今日の19(ひときゅう):00(まるまる)までにハリアスク内の空港に来て欲しいとの事です。なお、空港までの道のり等で何かわからない事があれば、ハリアスク内にいるメンフィル軍に聞いてくれとの事です。それとジェダルさん達のゼクトールへの支援攻撃の件も報告しておきましたので、この場ではお約束できませんが、もしかしたらジェダルさん達が受け取る予定の報酬も上がっているかもしれません。」
「………そうか。」
通信を終えたリィンは仲間達に今後の事を伝えた後ジェダルにも通信相手からの伝令を伝え、リィンの伝令にジェダルは静かな表情で頷いた。

こうして…………ノーザンブリアはメンフィル軍とヴァイスラント新生軍によって占領された。なお、自治州の領土内にいた”北の猟兵”はメンフィル軍とヴァイスラント新生軍によって徹底的に殺され……国境を越えてレミフェリアとエレボニアに逃亡しようとした敗残兵達もメンフィル軍による”残党狩り”によって一人残らず殲滅され、猟兵団”北の猟兵”は事実上崩壊する事となった。

また…………ジェダル達はゼクトールの右腕と武器破壊の功績によって、本来の報酬より1,5倍多い報酬を受け取る事となった。

作戦を終えたリィン達がグロリアスに帰還すると、既に先にグロリアスに帰還していたステラとフォルデがリィン達を迎えた。


同日、PM18:05――――――

~グロリアス・格納庫~

「よっ、リィン。お疲れさん。」
「遊撃隊の皆さんも本当にお疲れさまでした。」
「そちらも騎馬隊を率いての攪乱、お疲れ様です、フォルデ先輩、ステラ。―――そうだ。二人とも”黒獅子の学級(ルーヴェン・クラッセ)”の誰かとはもう会いましたか?」
お互いを労ったリィンはある事を思い出して二人に訊ねた。
「ああ、公都内の戦闘が終了した際に偶然バッタリ出会ったぜ。」
「フフッ、最初会った時は本当に驚きましたね。エーデルガルトさん達からも教えてもらいましたけど、確かディミトリさんにドゥドゥーさん、それにフェルディナント先輩も郊外で行う軍事作戦の為にエーデルガルトさん達と共に今回の作戦に参加したそうですよね?もしかしてリィンさん達は、ディミトリさん達とも会ったんですか?」
リィンの問いかけにフォルデと共に苦笑しながら答えたステラはリィンに確認した。
「勿論会ったよ。ハハ…………これでフランツ達やセシリア教官とも会えることができれば、”黒獅子の学級(ルーヴェン・クラッセ)”の全員と再会した事になるな……」
「あら。――――――だったら、これで”私”とは再会した事になるわね、リィン。」
ステラの確認に答えたリィンが苦笑したその時女性の声が聞こえ、声を聞いたリィン達が視線を向けるとそれぞれノーザンブリア占領作戦の際に再会した”黒獅子の学級(ルーヴェン・クラッセ)”の面々に加えてセシリアがリィン達に近づいてきた。

「おいおい…………かつての”黒獅子の学級(ルーヴェン・クラッセ)”の連中がほぼ勢揃いじゃねぇか。」
「セシリア教官……!?グロリアスに乗船しておられたのですか……!」
「お久しぶりです、教官。」
セシリア達を見まわしたフォルデは目を丸くし、リィンは驚きの表情でセシリアを見つめ、ステラは会釈をした。
「フフッ、3人とも息災で何よりね。」
「あの、お兄様…………もしかしてそちらの方が以前お兄様の話にあった……」
セシリアはリィン達に微笑み、セシリアの事を知らないセレーネは戸惑いの表情でリィンに確認した。

「ああ…………俺やステラが訓練兵時代にお世話になった担当教官のセシリア教官だ。」
「――――――お初にお目にかかります。現メンフィル皇帝であられるシルヴァン皇帝陛下直轄の親衛隊を率いる”皇帝三軍将”が一人にしてシルヴァン陛下の側妃の一人、セシリア・シルンと申します。今回の戦争ではメンフィル軍の”総参謀”兼シルヴァン皇帝陛下の”名代”として征伐軍に派遣された者ですわ。」
「ええっ!?シルヴァン皇帝陛下の……!?」
「しかもメンフィル帝国軍――――――それも、リウイ陛下ではなく現メンフィル皇帝であられるシルヴァン陛下直轄の親衛隊を率いる将軍の一人ですか………」
「”皇帝三軍将”という事はシルヴァン陛下の親衛隊にはセシリア将軍以外にも親衛隊を率いる”将軍”クラスが存在しているのですか?」
リィンがセレーネ達にセシリアを紹介するとセシリアは自己紹介をし、セシリアの事を知ったアルフィンは驚きの声を上げ、クルトは真剣な表情でセシリアを見つめ、アルティナはリィン達にある事を訊ねた。
「ええ、一人は私が所属している重騎士(アーマーナイト)重騎将(ジェネラル)を中心として、その厚い装甲で味方を守る”近衛軍”を率いる将軍であられる”大軍将”ダグラス将軍閣下よ。」
「もう一人は俺やドゥドゥーが所属している騎兵(ソシアルナイト)騎将(パラディン)を中心とした騎馬を駆って戦場を縦横無尽に駆ける”騎士軍”を率いる将軍は”騎士軍将”パーシバル将軍閣下だ。」
「そして私が所属している魔術師(メイジ)賢者(セージ)等”魔術”を主力として、時には味方を支援、時には攻撃の主力となる”魔道軍”を率いる将軍であられる”魔道軍将”セシリア将軍閣下の三人が”皇帝三軍将”と謳われているのですよ。」
「ふふっ、なるほど。話を聞いた感じ、リィン大佐のトールズ時代の担当教官であった紫電(エクレール)殿はリィン大佐達の話によるとどちらかというと脳筋――――――失礼。自らも最前線に立って生徒達を導く方のようですから、後方から生徒達への指示や支援、そして作戦立案をするセシリア将軍閣下は”紫電(エクレール)”殿とは”真逆”の方のようですわよね♪」
エーデルガルトとディミトリ、リシテアの説明を聞いたミュゼはからかいの表情で答え、ミュゼの発言にリィン達はそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
「頼むから、サラ教官の前で今の話は絶対に言わないでくれよ……」
我に返ったリィンは疲れた表情で指摘した。

「フフ…………――――――セレーネ嬢達の件は話に伺っています。皆様、それぞれの”思惑”があるとはいえ、我が軍に加勢して頂いた事、陛下に代わり厚くお礼を申し上げますわ。」
「い、いえ。わたくしは今回の戦争の元凶の一人としてせめてもの罪滅ぼしをしているだけですわ。」
「恐縮です。」
「わたしはメンフィル軍に投降後はリィン大佐達によってシュバルツァー家の方々をサポートする身としてリィン大佐達に引き取られたのですから、当然の事をしているまでです。」
「ア、アルティナさん。」
セシリアに会釈をされたアルフィンとクルトは謙遜した様子で答え、いつもの調子で答えるアルティナの様子を見たセレーネは冷や汗をかいた。

「それで教官。かつて私達が訓練兵時代に共に切磋琢磨した”黒獅子の学級(ルーヴェン・クラッセ)”の面々がここに集まったのは偶然ではないですよね?」
「フランツ達は見当たらねぇが……大方フランツ達も後で俺達と合流する手筈になっているって所ですか?」
「ふふっ、さすがにあからさま過ぎたわね。その件については後で説明するとして……まずはリィン。今回の戦争のメンフィル軍側の”総大将”であられるリウイ前皇帝陛下とシルヴァン皇帝陛下の両名より貴方に対して”辞令”が下りているから、それを伝えさせてもらうわ。」
「両皇帝陛下より俺に”辞令”が……一体どのような内容なのでしょうか?」
ステラとフォルデの問いかけに苦笑したセシリアは表情を引き締めてリィンを見つめ、セシリアの話を聞いて驚いたリィンは表情を引き締めてセシリアを見つめ返した。するとセシリアは懐から一枚の書状を取り出して宣言した。
「『エレボニア帝国征伐軍総大将リウイ・マーシルン並びに現メンフィル皇帝シルヴァン・マーシルンの名において、リィン・シュバルツァーを遊撃軍”灰獅子隊”の軍団長に命じる。なお、軍位は今までの功績を考え、”大佐”から”少将”に昇進する事とする。』――――――以上よ。」
「え……………………」
「に、兄様が”軍団長”――――――それも”少将”に昇進ですか……!?」
「確か”少将”は”中将”を務めていた叔父上の一つ下になるから……”准将”を飛ばした二階級昇進ですか……!?」
「ふふっ、おめでとうございます、リィン大佐―――いえ、リィン少将閣下。これでまた、少将閣下の目的に大きく近づけましたわね♪」
セシリアの宣言を聞いたリィンは驚きのあまり呆け、エリスは信じられない表情で声を上げ、クルトは驚き、ミュゼは微笑みながらリィンを称賛した。

「……セシリア様、失礼を承知で訊ねさせて頂きますが、何故両皇帝陛下は兄様をいきなり二階級昇進させることにしたのでしょうか?」
「それに”灰獅子隊”とは一体……」
その時エリゼが困惑の表情でセシリアに訊ね、セレーネも続くようにセシリアに訊ねた。
「まずは昇進の件ですけど、今回の軍事作戦でリィン達が”紫の騎神”に今後の戦闘に間違いなく支障が出る致命的なダメージを与えた功績で元々”准将”に昇進する予定でしたけど、”軍団長”を務める以上既に軍位が”准将”である者達と同じでは色々と都合が悪いことを考慮して、”灰獅子隊”所属の者達の中で最も上の軍位である”少将”に二階級昇進することを両皇帝陛下は決められたのです。――――――まあ、要するにエレボニア帝国を救う為に今まで辛い思いを抱えて戦ってきたリィンに対するお二方のせめてもの気遣いでもありますわ。」
「あ……………………」
セシリアの説明を聞いたアルフィンは複雑そうな表情でリィンを見つめ
「ちなみに明らかにリィン少将の存在を意識して付けられた名前である”灰獅子隊”とはどういう部隊なのでしょうか?先程のセシリア将軍がリィン少将に伝えた辞令で”遊撃”を担当するようなことを仰っていましたが…………」
「皆さんもご存じのように大規模の人数を要する”軍”を動かすには時間がかかります。そこで精鋭部隊ばかりを集めた中規模の軍団を”遊撃”―――様々な戦場へと即座に派遣することで戦争を有利な状況にする為に今回の戦争で試験的に実施されることになった”遊撃軍”が”灰獅子隊”なのです。名前の由来に関してはお気づきかもしれませんが、軍団長であるリィンから由来されて付けられた名前です。」
「”灰色の騎士”と”黒獅子の学級(ルーヴェン・クラッセ)”ですか……教官。一つ気になる事があるのですが、よろしいでしょうか?」
アルティナの問いかけに答えたセシリアの答えを聞いたリィンは静かな表情で呟いた後セシリアに質問した。

「何かしら?」
「先程”灰獅子隊”は”遊撃軍”と仰りましたが、迅速に様々な”戦場”を遊撃する為には飛行艇、もしくは”転位”の手段が必要と思われますが、そこのところはどうなっているのでしょうか?」
「そういえば貴方達にはまだ”アレ”を見せていなかったわね……―――ついてきなさい。」
リィンの質問に頷いたセシリアはリィン達に自分についてくるように促した。そしてリィン達はセシリアの案内の元甲板に出ると、そこにはある存在がメンフィル軍によって整備されていた。

~甲板~

「え………………」
「な――――――」
「ええっ!?あ、あの飛行艇は……!」
「は、”灰色のカレイジャス”……!?」
「――――――なるほど。さしずめあの飛行艇はメンフィル帝国の技術によって開発された”カレイジャス”に続く”アルセイユ三番艦”といった所でしょうか?」
ある存在―――”姿形がカレイジャスに似ている灰色の飛行艇”を見たエリスは呆け、リィンは絶句し、セレーネとアルフィンは驚き、すぐに事情を察したミュゼは意味ありげな笑みを浮かべてセシリアに確認した。
「ええ。リベール王国が開発した高速巡洋艦”アルセイユ号”の三番艦――――――”灰色の翼レヴォリューション”よ。」
「別名”革命の翼”ですか……」
「戦況を変える――――――つまり、戦場に”革命”を起こすって意味で、名付けられたんッスか?」
セシリアの説明を聞いたステラは考え込みながら呟き、フォルデはセシリアに確認した。

「そうなるわね。ちなみに最高速度は3200セルジュで3600セルジュの”アルセイユ”には及ばないけど持久力、速度維持機能武装はカレイジャスを上回るし、武装が乏しい”アルセイユ”や”カレイジャス”と違って、”主砲”は導力と魔導の合成エネルギー砲、その他の武装として機関銃、自動追跡ミサイル、魔導弾、高速徹甲弾を搭載しているから空からの支援攻撃もそうだけど空中戦でも十二分に活躍してくれると思うわ。それと、”灰獅子隊”に所属する精鋭部隊は今後も増やす予定になっているわ。」
「つまり俺達はこの飛行艇を使って、今回の戦争の様々な”戦場”にかけつけて”遊撃”するという事ですか……教官。もしかして、”灰獅子隊”は去年の内戦の俺達―――”紅き翼”を参考にされたものなのですか?どことなく、”紅き翼”を思い浮かばせる部分がいくつかあるのですが……」
「あ……………………」
「リィンさん……セレーネさん……」
セシリアの話を聞いて静かな表情で呟いたリィンは複雑そうな表情でセシリアに訊ね、リィンの疑問を聞いたセレーネは呆けた声を出して辛そうな表情をし、その様子をアルフィンは心配そうな表情で見つめた。
「………確かに”紅き翼”を参考にした事は否定できないわ。身も蓋もない言い方をすれば、”灰獅子隊”は”紅き翼”を戦争方面へと特化したものと言っても過言ではないもの。」
「やはりそうですか……――――――返事が遅くなりましたが、リィン・シュバルツァー、両皇帝陛下からの辞令、謹んで受けさせて頂きます……!」
セシリアの答えを聞いて静かな表情で呟いたリィンはすぐに決意の表情を浮かべてセシリアに敬礼して宣言した。

「18:30(ひとはちさんまる)。リフィア皇女殿下親衛隊リィン隊所属リィン・シュバルツァーのメンフィル帝国遊撃軍団”灰獅子隊”軍団長の着任をメンフィル帝国エレボニア征伐軍総参謀セシリア・シルンが確認致しました。戦いはまだまだ続くけど、かつての担当教官として貴方達の活躍を心から応援しているわ。」
「はい……っ!」
リィンの宣言に対してセシリアも敬礼で返して答えた後リィンを含めたかつての”黒獅子の学級(ルーヴェン・クラッセ)”を見回して微笑み、リィン達はそれぞれ力強く答えた。

その後リィン達と”灰獅子隊”の部隊長となった”黒獅子の学級(ルーヴェン・クラッセ)”の面々はお互いに自己紹介等をして交流を深めた―――――― 
 

 
後書き
今回の話でノーザンブリア篇は終了です。なお、レヴォリューションのBGMは閃4の”紅き閃影 -光まとう翼-”で、今回の話が終わった際に第二OPとしてゼスティリアクロスの第二OPの”illuminate”のフルVerがかかると思ってください♪OPの内容としては最初の部分でリィン隊や灰獅子隊の面々(後に加わることになる灰の閃3編でも登場したフランツとアメリア、更にその二人を担当した先輩)が映った後プリネ、ツーヤ、レーヴェ、エヴリーヌ、レン、鉄機隊とオリエが映り、歌が盛り上がるところはそれぞれ戦場で活躍しているシーンが映り、ゼスティリアクロス第二OPのヘルダルフの背中が映る所は”鉄血のオズボーン”の背中が映り、各神衣が映る所は片手に光の魔力を纏った聖剣を構えてもう片方の手には暗黒の魔力を宿したメサイア、ウインクをして投げキスをするベルフェゴール、スティルヴァーレで飛燕剣を放つ様子のアイドス、杖を構えて光の魔法を放つ様子のユリーシャが順番に映り、二番目の歌の部分はⅦ組側が映って各神衣が映る歌の部分は銃を構えてウインクをするオリビエ&剣を構えるミュラー、魔術を放つ様子のクロチルダ、光の翼と化した剣を構えるアルゼイド子爵、鋼糸とダガーを振るうメイド服姿に戻ったシャロンが映り、サビから始まる3番目の歌の部分はラストダンジョンでリィン率いる灰獅子隊戦うクレア率いる鉄道憲兵隊、特務支援課&ジェダル達と戦うルトガー、レオニダス、シャーリィ、セリカ達と戦うアルベリヒ達黒の工房組が順番に映った後それぞれ最後の一撃をラスボスに放つ様子の神気合一化したリィン、キーアの祈りによる加護を受けた状態のロイド、翼を生やしてセリカやサティアと同じ髪の色や瞳の色になったエステルが映り、その後はリウイ達メンフィル陣営、ヴァイス達クロスベル陣営、ジェダル達、エイドス達が映り、レヴォリューションの甲板でリィン側で仲間になる全ての仲間達が集合している状況で一番前にいるリィンが神剣アイドスを自分達が向かう方向に向けて号令をかけるシーンで終わると思ってください♪ 
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