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チートな転生者の奏でる『俺の転生物語』原作どこいった!?

作者:虚空
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『出逢いと誘拐』

 
前書き
大変遅くなってしまい申し訳ありません。

編集しなおしたら一万字を超えてしまいました。 

 
前回からまた時間がたちなのはは学年が上がり順調に成長をしており、

俺はというと……、

「零様 前回造られた記録媒体ですがかなり好評のようです」

「そうなの?」

「開発部の人達からの報告ですが部品の低コスト化も今のところはめどがたったようです」

「へ~」

「社長……桜華の報告では業務成績は快調のようです」

「さすがだな」

あれから俺は株取引と自分の持つ技術を駆使しながら小さな会社を立ち上げたのだ。

一応最初はパソコン関連に特化した会社を立ち上げ、

この世界ではまだ主流だったフロッピー式の記録媒体からCDへと変え特許を取り、

活動資金を稼ぎ、そこからさらに手を広めた。

黄金律の恩恵と持ち前の技術力によって会社設立からあっという間に大企業の仲間入りを果たし今では様々な分野に手を延ばし世界有数の企業になったのだが……

基本俺はこういうのはめんどくさがりなところがあるので俺の能力やアカシックレコードをフルに活用しガイノイドを創って俺の代わりに経営とかをしてもらっています。

ちなみにCOSUMOSUと茶々丸をモデルにしました。

あのキャラ好きなので、

名前は桜華です。

ちなみに会社名はナイン・テイル・フォックス(九尾の狐)。

パートナーである千歳が九尾の狐でありまた中国の一部の地方では幸せを運ぶ存在とされているので採用しました。

もちろん社章は名前通り九尾の狐です。

基本 経営は桜華に任せ俺は会社の経営方針やここぞという時は俺が決めています。

「ところで先程から何をつくっていられるのですか?」

冒頭から居間の机でカチャカチャと何かを弄くる零に何をしているのかを尋ねる千歳。

「ん? コレか? キーホルダーに似せた護符(タリズマン)だよ なのはに渡そうと思ってな」

「護符ですか?」

「居場所の感知と簡易結界を張る程度だがな」

最近は物騒なので保険としてなのはに渡すつもりだ。

「そうですか……そういえばそろそろお出掛けになる時間では?」

「え? もうそんな時間?」

作業に没頭していたせいか時間に気づいていなかったようだ。

「なのはさんと会われるのですか?」

「ん? あぁ なんか小学校で友達ができたらしいからその子達を紹介したいんだとさ」

まぁ 十中八九あの二人だと思うがな。

「そうですか」

「じゃあ 俺はそろそろ行くよ」

「いってらっしゃいませ」

千歳に見送られながら俺はいつもの公園へと向かう。

そして……向かった先には、

「あっ! 零お兄ちゃん!」

「やぁ」

公園に着きなのはを見つけ挨拶をすると。

「あなたがなのはの言っていたお兄さん?」

「はじめまして」

二人の少女が俺に挨拶をかえす。

その二人はというと、

一人はツンデレに定評のあるくぎゅ〜ボイスなどこか勝ち気な印象を与える少女と、

もう一人は紫の髪の大和撫子という言葉の似合う大人しそうな少女だった。

「はじめまして 黒帝 零 です」

「私の名前は アリサ・バニングスよ!」

「私の名前は 月村 すずかです」

二人がそれぞれ自己紹介をする。

「よろしくね」

俺はそんな二人にニッコリと笑顔でこたえる。

何故か顔を赤らめる三人。

何故に?(無自覚&天然)

「む〜(少しうらやましいの)」

餌を溜め込んだハムスターのように頬をぷくりと膨らませるなのは。

「てりゃ」

俺はそんななのはの頬を軽くつついて萎ませる。

「ふに〜」

顔を赤らめながらも何故か若干嬉しそうななのは。

「あぁ 忘れていた なのは ちょっと来てくれるかい?」

そんな姿をよそに俺はなのはを呼び寄せる。

「なぁに?」

トコトコとかわいい足音をたてながらなのはが俺に近付く。

「こんなの作ったんだけどいらないかい?」

俺はなのはに綺麗な紅い石のはまった長方形の板を渡す。

「わぁ〜 きれ〜」

護符に付いている紅い宝石に目が釘付けになるなのは。

「なのはちゃん いいな〜」

「なによそれ?」

二人もやはり女の子であるためになのはに渡した物に興味を示す。

「お守りみたいなものさ 趣味でね たまにこういうのを作るんだ」

「ありがとうなの!」

俺の腕に抱きついてお礼を言うなのは。

「素敵なご趣味ですね」

「なのはばっかりずるいわね」

「なら いつか君達にも作ってあげようか?」

立場的に持っといた方がいいだろうしね。

「いいんですか!?」

目を輝かせながらたずねるすずか。

「お安いご用さ」

「どうしてもっていうならもらってあげるわよ」

おぉう ナイスツンデレ。

「ありかとう」

「べ 別にあんたのためじゃなくて!し しかたなく そうよ しかたないからもらってあげるんだからね!!」

これぐらいのツンデレならまだ可愛いものだな。

「そうか」

「だ だから勘違いなんかしないでよね!」

「了解 そういえば少し喉がかわいたね 自販機で何か買ってくるけど何がいい?」

「私は紅茶!」

「なのはとすずかちゃんは?」

「わ 私も紅茶でお願いします」

「私もなの」

皆紅茶好きだね~、

俺緑茶派だけど……。

「はいはい」

俺は三人から離れ少し離れた自販機へと行き飲み物を買う。

「さて 戻りますか」

俺は三人のもとへと足を進めると。

「ちょっと! 離しなさいよ!!」

「や やめてください!!」

「離して!!」

そこには先程までなかった黒いワゴン車があり、

数人の男達が三人を捕まえ車へと押し込み、

「よし! ズラかるぞ!!」

車を急発進させこの場から逃げる。

「クッ! 誘拐だと!?」

俺はすぐさま追うがすでに車の姿はなくなっていた。

「クソッ!」

自分の不甲斐なさに怒りを通り超しもはや殺意すら湧くが、無理矢理腹の底に押し込め、

俺は千歳に念話を飛ばす。

『どうなされました?』

『千歳! 緊急事態だ! なのは達が誘拐された!』

『えっ!?』

普段冷静な彼女だが流石に今回は驚きを隠せないようだ。

『とりあえず俺はなのはに渡した護符の魔力の波長を辿るからお前は俺の魔力を辿って合流してくれ!』

『わかりました!』


「護符の魔力を探知……」

俺は意識を集中し護符の魔力の波長を辿る。

自分の身体から無数の糸を伸ばすようなイメージで魔力の波長を捉える。

「見つけた!」

俺はすぐさま強化魔法を使い身体能力を上げ、

「待ってろよ! すぐに助けに行くからな!」

自分に認識阻害をかけて高速で移動する。



なのは Side

「ココどこ?」

私が目を覚ますと、

さっきまでいた公園から薄暗い工場みたいなとこに変わっていたの。

「なのは 気がついたの!?」

「なのはちゃん!」

二人の声のする方へと目を向けると、

そこには……、

縄で縛られた二人の姿があったの。

「おっ! 起きたのかい?」

突然男の人の声が聞こえ、

「だ 誰!?」

私が声のした方に目を向けると、

「お嬢ちゃん達を誘拐した犯人だよ」

怖い顔をしたおじさん達がいたの!

「誘拐!?」

「そうだよ」

「用があるのは私だけでしょ! なのはとすずかは離しなさいよ!」

アリサが怒鳴るように声を張り上げる。

「そうもいかねぇんだよ クライアントの命令でな」

「クライアント?」

「確かランだったかな?」

「アニキ確か『(ロン)』だったはずですぜ」

「そう それだ!」

「その龍とかいうのが私達になんの用よ!?」

「ん〜なんでも日本の中で自由に動くために有名なお嬢ちゃん達が必要なんだとさ」

「なによソレ!?」

「さぁな? おっ! 噂をすればハゲってな」

「アニキ……影ですぜ……」

的外れな答えに呆れる子分。

「ウッセー! シャレだつーの!」

下手な漫才擬きを続ける二人を他所に、

「困るなぁ……不必要な事をべらべらと喋られては」

いかにも悪役らしいといった格好をした三人の男達と青竜刀をもち中華風の服装に身を包んだ男の人達が現れた。

「まぁ いいじゃねぇか どうせ調教して精神ぶっ壊して俺らの操り人形にすんだからよぉ」

「どうせなら今やろうぜ」

「うはっ! お前ロリコンかよ!」

「せっかく良い顔してんだからやるっきゃね〜だろ?」

「そうだな」

「あ〜 俺らもいいッスか?」

「お〜 やれやれ」

「勝手な事をするな……」

突如中華風の服装の男が口を開く。

火龍(フォロン)さん?」

男達が火龍と呼ばれた男を見る。

「キサマらは喋り過ぎだ」

「す、すみません!!」

「それに拐うのならそこの小娘一人で良いはずだが余計なものまで拐い無駄な手間を掛けさせるな」

アリサを指差し言い放つ火龍。

「で、ですがこの二人は月村と高町のガキです! 利用価値はあります!」

「ほぅ……高町……なるほどな……」

なのはの名字である高町の名を聞いた火龍は声色を変える。

「ククク……なるほど……奴には少々借りがある……奴の娘を辱しめて奴の前に曝すのもいいだろう……」

火龍は愉悦に染まった表情で楽しそうに言う。

「では……」

「あぁ……やれ」

「ヘヘヘ……悪りぃなお嬢ちゃん」

「たっぷり楽しませてもらうぞ」

男達は下卑た笑いをしながらなのはに手をのばす。

「イヤッ! やめて!!」

助けて零お兄ちゃん!!

私が祈ったその時!

ー結界・弾ー

紅い宝石が光を放って輝いたの!

「痛ッ!?」

「な、なんだぁ!?」

薄い光の膜がまるでなのは達を護るかのように覆い被さる。

「結界術? まさか今の時代の日本にこれ程の結界を張れる奴など……」

そして……、

「薄汚い手でなのはに触れるな」

私が求めた人が来てくれたの。

なのは Side end




零 Side

あれから俺は魔力を辿って移動をしていた。

「零様!」

その途中で千歳と合流し、

「なのは達はおそらくこの先の廃工場だ!」

魔力の波長の源である場所を突き止める。

「潜入開始」

俺は認識阻害や隠蔽魔法そしてダンボールを使い某蛇も真っ青な潜入し、

「ただの誘拐にしては装備や人員が整っているな……」

不自然な程に整った人員と装備に疑問を抱く。

「ん? 誰かいるのか?」

見回りの人間に見つかりそうになるが俺は気配を可能な限り消し、音も無く背後へと回り込み、

ー掴 捻ー

相手の頭と顎を掴むと同時に無理矢理捻る!
「ガッ!」

血の混じった泡を吹きながら倒れ伏す男。

「零様……殺したのですか?」

暗い表情の千歳が恐る恐る聞く。

「いや……一応手加減はしたから生きてはいる……まぁ 頸椎を無理矢理捻ったから一生ベットの上の生活だがな……」

幼い子供を拐うようなクズには情けをかける気は無い。

「そうですか……」

若干ホッとした表情を見せるが零にこのような荒事をさせた事に対して複雑な表情を見せる千歳。

その後もダンボールを被り人目を欺きつつ見張りや護衛と思われる者達をCQCなどを使って無力化させなのは達の捕われている場所へ着くと。

「ランだったな」


「アニキ確か『龍』ですぜ」

「そう それ!」

おいおい なんであの組織が関わってんだよ!?

この世界ってとらハまで混じっているのか!?

「困るなぁ~」

新たに現れた四人の内三人の男達の下卑た会話と誘拐犯の会話で頭に来た俺は魔法を解き、

「薄汚い手でなのはに触れるな」

犯人達の前に姿を現し、

「己が欲望のために幼き生命を喰い物にする者……人それを外道と呼ぶ」

「誰だ!?」

「悪党に名乗る名などない!!」

俺は○ム兄さんのまねをし、

「『凄把龍昂』!!」

目の前の男を垂直に蹴り上げさらに空中でサマーソルトをかます。

「ぐげっ!?」

凄まじい勢いのせいか男はまるでギャグ漫画のように天井に頭が突き刺さる。

「さて お仕置きの時間といこうか」

全身から殺気を漲らせて威嚇する。

「はっ! こっちには人質が……っていねぇ!?」

男達はなのは達を盾にしようとするがすでにその場にはいなく、

「残念ながらなのはさん達は私が保護させていただきました」

すでに千歳がなのは達を抱え、距離を取っていた。

「千歳 なのは達を頼む」

「はい!」

千歳になのは達の護衛を任せる。

「さぁて 死ぬ覚悟はできてる? まぁ 答えは聞いてないけど」

「ふざけんなガキ!!」

ー発砲ー

一人の男が拳銃を零に向け放つが、

「温いわ!」

それを零は素手で弾く。

弾かれた弾丸は壁に当たりチュインッ!という音をたてる。

「ハァッ!?」

「とある女子高生町長は言いました 銃弾なんて横からマッハ3で(はた)けば簡単に反らせると」

と言い放つ零だが、

「「「「(イヤイヤ!無理だから/です!)」」」」

誘拐犯とアリサ、すずかの心の声がピッタリ重なる。

それに対して、

「お兄ちゃん凄いの…」

どこかウットりとしたまるで憧れのヒーローを目の前にした子供のような眼差しのなのは。

今よりも幼い時から零の身体能力の高さを目の当たりにしてきたなのははあまり動じてはいなかったようだ。

「また身体能力が向上されたようですね」

零の身体能力が上がった事に言葉を漏らす千歳。

「なっ? へ?」

普通ならばあり得ない事態に混乱する男達だが、

「『魔神拳』!」

そんな暇など与えられず、

ー拳 貫通 ー

真っ直ぐストレートに振るわれた拳から拳圧が飛び銃を持った男の鳩尾(みぞおち)を貫く。

ー潰ー

「ゴッ! ゲェッ!?」

拳圧の衝撃によって胃が潰れたために血ヘドを吐きながら地獄の痛みにのたうち回る。

そんな男の姿をまるで害虫でも見るかのような眼で見た後、

「懺悔は十分? 遺書は大丈夫? 部屋の隅でガタガタ震えながら豚のように泣く準備はOK?」

最終宣告を告げる。

「クッ! ガキがぁ!」

男が拳銃を零に向けようとするが、

「ムダだあの小娘の相手は(オレ)がしよう」

中華風の服装の男が青竜刀を片手に前に出る。

「アンタは?」

「ただの処刑人だ……火龍と呼ばれている」

さっきの雑魚とは比べ物にすらならない実力があるのは明白だ。

「ふぅん……あと訂正しとくけど俺は男だ」

その瞬間時が止まる。

「冗談だろ?」

誘拐犯が呟く。

「男だよ!」

その呟きに間髪いれずに返す。

「ふん……まぁいい……先程の戦闘技術そして符術にその容姿キサマを持ち帰れば奴らも文句は言うまい……」

「奴ら?」

なんか気になるワードが聞こえたぞ。

「貴様らには関係無かろう……さて……始めるか……」

火龍は普通の物よりも大きな青竜刀を鞘から抜き放つ。

その際に刀身がギラリッ!と妖しい光を放つ。

「お兄さん逃げて!!」

「速く逃げなさいよ!」

抜き身の刀身と素人目でもわかる程に危ない雰囲気を放つ火龍と対峙する零に逃げろと叫ぶすずかとアリサ。

そんな二人に対して零は、

「大丈夫」

と優しく微笑みながら短い返事を返す。

「楽しませてもらうぞ」

火龍が青竜刀を袈裟斬りに振り降ろす!

その一撃は鋭く洗練されたものだった

それに対して零は、

「ハァッ!」

ー 一閃 ー

けたたましい金属どうしのぶつかり合う音が木霊する。

「ぬ?」

突然響いた音の発信源を辿ると零に行き着き、

その零の手には白と黒の双剣が握られていた。

「まさか……その剣は!」

零の持つ白と黒の双剣に心当たりがあるのか感極まるとばかりにうち震える火龍。

「御察しの通りこの双剣の名は干将・莫耶」

黒い刀身に紅い亀裂模様の男剣干将、

白い刀身に水波模様の女剣莫耶、

古代中国の伝説の剣であり雌雄一対の夫婦剣。

そして正義の味方を目指した男が愛用していた剣。

「何故それほどの剣を持っているかは知らんがそれもいただくぞ」

餌を前にした狂犬の如き顔で良い放つ。

「できるものならな」

それに対し暗にやってみろと皮肉を込めて挑発する零。

「ぬかせ!」

横一閃! とばかりに青竜刀を振り抜くが、

「何!?」

干将の刃で火龍の斬撃を弾き、直ぐ様莫耶で逆袈裟に斬りかかる。

「クゥッ!!」

服を浅く斬られるも肉までは達せず、後方に跳躍し距離をとる火龍。

「逃がすか!」

零は地面スレスレにまで身体を傾かせ地を蹴り地面を疾走する。

「甘い!」

ー投ー

懐から棒手裏剣を取り出し向かって来る零に向かって投擲する。

「チィッ!」

干将を横薙ぎに振るい向かって来る棒手裏剣を全て弾き再び距離を詰めようとするが、

「覇ァッ!」

まるで突き刺すかのような鋭い垂直蹴りで零を迎え撃つが、

「チッ!」

莫耶の腹で受け止めると同時に後ろへ自ら飛び衝撃を逃がす。

「やるな!」

「蒼破刃!」

地を這うかのような魔神剣とは違い疾風の斬撃を飛ばすこの技は真っ直ぐに火龍へと向かい、

「ムッ!」

ー裂ー

火龍の右頬を切り裂き鮮血を飛ばす。

「烈破掌!」

右頬を切り裂いた際に出来た隙を逃す事無く瞬動を用いて懐へと入り氣を込めた掌を腹部に押し合て爆発させる。

「ゴハッ!」

爆発の衝撃によって身体は宙に浮き一瞬とはいえ衝撃のせいもあり完全に無防備になったその身に、

「虎牙破斬!」

流れる様に火龍を上下に切り上げた後拳に力と体重を乗せ地に叩き落とす!

「ガァッ!?」

処刑人の名は伊達ではなく咄嗟に受け身を取り転げながらも距離を取る火龍。

「フゥ〜 その歳で恐ろしい戦闘の才能と動きだな」

受け身を取ったものの完全には防げず受けたダメージによって息を荒げながら良い放つ火龍。


「お褒めに預かり光栄だね」

「ふん……しかし……まぁ……こんな小娘と化物のために健気なものだ……」

「化物?」

ふと火龍の漏らした言葉が妙に耳に残る。

「ッ!!」

そして『化物』という単語に異常なまでに反応するすずか。

まさか……ここでもあの設定が生きているのか?

俺の頭の中に忘れかけていた記憶が一部浮かび上がる。

「ふん……何も知らんのもまぁ無理も無い……そこの小娘……月村は……」

「やめて! 言わないで!」

瞳から大粒の涙を流して叫ぶすずか。

「人の生き血を啜る化物……吸血鬼だ」

そんなすずかをよそに淡々と語る火龍。

「あ……あぁ……」

そしてすずかの顔色はまるでこの世の終わりでも来たかのような絶望の色に染まる。

そしてすずかの正体を知った零は、

「随分とまぁ 可愛い吸血鬼もいたもんだな 」

まるで全く気にしていないかのように軽く言い放つ、実際彼は全く気にしてはいないだろう。

「なッ!? キサマ正気か!?」

零の言動は火龍にとっては予想外だったのか驚きの声をあげる。

「彼女は確かに人在らざる者かもしれない……だが……それが何だ?」

零の言動を信じられないものを見るような瞳で見つめるすずか。

「どちらかと言えば自分の欲望のために平気で人を喰いものにするお前らの方が化物だと思うがな?」

理性を持ったまま人を殺す事に馴れたり罪も無いものを喰いものにするような人種の方が遥かに化物だと思う。

「ほぅ……」

「それに俺はちょっとばかり『気質』などに敏感な(たち)でな仮に彼女が人に害を及ぼすような存在ならすでに気がついているさ」

実は俺の持つスキル『直感A』はそういったものにも反応するのだ。

「ほぅ…『気質』まで読めるのか……」

「まぁ そうゆう事……という事でとっとと決着(ケリ)をつけるぞ」

双剣を構え、全身に闘気を漲らせ、

「「いくぞッ!!」」

二人はほぼ同時に地を蹴り駆ける!!

「噴ッ!」

今までのどの攻撃よりも重く鋭い斬撃が零に襲い掛かる。

その斬撃は……無情にも零を切り裂く、

「「イヤーッ!」」

それに悲鳴をあげるすずかとアリサだが、

」「大丈夫だよ/です」」

なのはと千歳が顔色一つ変えずに言う、その表情は焦燥や悲観などなく穏やかなものだった。

「ぬぅっ!?」

切り裂いた時の手応えは確かに切った感触はあったがまるで物体の無い幻影を……まさに質量のある残像を斬ったと言わんばかりに実体感が無かった。

「幻狼斬!」

そして残像が切り裂かれると同時に後ろから現れた零が火龍を切り払い、

「続けていくぞ!『天狼滅牙』!」

切り払いからの逆袈裟、上下左右と流れる様な連撃へと繋ぎ、もはや目にも写らぬ神速の剣撃を叩き込み、

「トドメッ!『戦迅狼破』!!」

闘気を纏わせた右腕を勢い良く振り抜き狼を模した闘気の塊を叩きつけ重い大人の身体を軽々と吹っ飛ばし壁へと叩きつける。

「ガハアァァァッ!」

いくら極限まで鍛えられた身体であっても強力な衝撃には弱く文字通り骨の髄まで響く威力に流石の火龍も白目をむきズルズルと壁を伝って地に沈む。

「ふぅ……」

戦いが終わり一息つき、

「さて……まだやるのか?」

鋭い眼光で残ったチンピラ達を睨み付ける。

「ヒィッ!」

裏組織の実力者を倒し銃弾すら弾くような化物染みた強さを見せつけた事もあり汚い悲鳴をあげながら走り去る。

「さてと……みんな乱暴はされていないか? どこか痛いところは無いか?」

「大丈夫なの!」

元気よく返事を返しながら近づいた零に抱きつくなのは。

「ごめんな……恐かっただろ?」

先程までの張り詰めた空気は既に無くまるで悪さをして叱られた子犬や子猫の様に悲しげな顔をして問う。

「ううん 絶対助けてくれるって信じていたから大丈夫」

穏やかな笑顔で答える。

「そうか……」

ほっと一息はきながら抱きつくなのはの頭を撫でる。

「うにゃ〜」

いつものように撫でられてご満悦になるなのは。

「二人は大丈夫か?」

未だポカーンとした表情で地べたに座るアリサとすずかに問い掛ける。

「あ……」

問い掛けられたアリサが僅かに口を開き……、

「あ?」

まるでオウム返しのように零も同じ言葉を繰り返す。

「アンタ何者よ! 銃弾素手で弾いたりどっからか剣出したり! 映画みたいな動きしたり! あんなヤバい奴倒したりアンタどこの超人よ!!」

まさにマシンガントークと言っていいほどに速く口から言葉を繋ぎさらにアリサの背後からはデフォルメされた虎がガオーッ!と吠えている幻影が見える。

「一応人間だからね! ちょっと鍛えているのと身体能力が(異常に)高いだけの人間だからね!」

「ウソつけー!!」

零の反論を問答無用とばかりにバッサリと否定しさらに吼える小さな虎と化したアリサ。

チビ虎アリサ此処に爆誕!

「まぁまぁ アリサさん落ち着いてください」

未だ怒り心頭とばかりに吼え続けるチビ虎アリサを千歳が宥める。

「さてと……後が恐いけどまぁ……それはさておき」

零はゆっくりと歩を進め地べたに座るすずかの前に着くと、膝をつき目線を合わす。

「さて……色々あったけど大丈夫かい?」

「あの……」

まるで絞り出すかのようにか細い今にも消えてしまいそうな小さな声ですずかは零に問う。

「ん?」

「貴方は……恐がらないのですか?」

「何を?」

「私は……人じゃないんですよ……あの人が言った様に私は……私は……『吸血鬼』なんですよ」

今にも消え入りそうなそれでいて悲痛な叫びにも似た声を張り上げる。

「…………」

零はただ腕を組み、それを黙って聞き続ける。

「私は化k「それは違う!」え?」

「化物なら涙なんて流さないだろ?」

そういって細くしなやかな指をすずかの目元へと近づけ大きな瞳から溢れる涙をぬぐう。

「あっ……」

「それにさっきも言ったけど俺は君の事を化物だなんて思わないよ」

「どうして……ですか?」

まるで何かにすがり付くかのような眼差しを向けるすずか。

「戦っている時も言ったけど本当の化物は涙なんか流さないし、自分の欲望の人の命を軽く奪える奴こそが化物だってね」

人の生命の重さを知っていてなお人を喰いものに出来る奴が本当の化物だと言えよう。

少なくとも俺はそう思う。

「ッ!!」

「それにアイツが剣を取り出した時に俺に逃げろって言っただろ? 打算的な考えの化物なら奴に俺を始末させて口封じをしたりするハズだけど君は俺の身を案じただろ」

「それは……私のせいで誰かが傷つくのが嫌で……」

「その考え方ができる時点で君は優しい人間さ」

俺みたいな奴と違ってね……。

誰にも聞こえないような小さな声で呟き一瞬だけ自嘲気味な笑いを浮かべる。

「あの……」

「ん?」

「貴方は……私を受け入れてくれますか?」

瞳を潤ませ幼い容姿でありながらもどこか妖艶さを感じさせる表情ですずかは問う。

「こんな可愛い『吸血姫』なら喜んで」

ニコりと微笑みながら無意識にキザなセリフをほざ…ゲフン ゲフン、言うこの男の娘(笑)

いつか後ろから刺されないといいね。

「ありがとう……ございます」

少し遠慮がちにだが確り腕に力を込めて抱きつくすずか。

「いえいえ こちらこそ」

すずかの言葉に答えたその時、

ー殺気・震ー

不意にゾクッ!と背筋に悪寒がはしり殺気の飛んで来た方を向くと、

「アンタ達……アタシ達をほっといて随分とたのしそうねぇ〜」

目を爛々と光らせ再びデフォルメされた虎を背景に投影させたアリサと、

「すずかちゃん一人だけズルいの!」

小さな猫の幻影を背景に投影し涙目でこちらを睨むなのは、

「零様……あまり無自覚なのもいけませんよ」

静かな言動で主たる零を諌める千歳だが少しばかり怒っているのか雰囲気がちょっと恐い。

「え〜と……その……ですね……」

じりじりと近づいて来る三人から逃げるように後ろに下がるが壁まで追い詰められてしまい、

「「「少し頭冷やそうか」」」

制裁を食らってしまう。

「みぎゃーー!!」

ー少年制裁中ー

少年の精神保護のために描写は省きます。

『見せられないよ!』




しばらくして……、

「いくらなんでもこの扱いは酷くない?」

制裁を受けた零の姿は……あえて言うまい……。

「フン! アンタが悪いのよ!」

頬を紅くしながらフン!と息巻くアリサ。

「ちょっとやり過ぎたの…」

流石にやり過ぎたのか少し落ち込んでいるなのは。

「鈍感なのも行き過ぎると罪ですよ」

「お前らな〜」

だからってコレはやりすぎだろ……ギャグ補正無かったらヤバいぞ。

「まぁ 怒ってスッキリしたからアンタの事はもう良いわ」

こういうアッサリとした性格は彼女の美徳と言えよう。

「それよりもすずか!」

アリサがすずかの名前を強く呼んだ事によりビクッ!っと身体を震わせ怯えるように零の腕にしがみつく力を強める。

「アリサちゃん……」

ズンズンと勢いよく足音をたてながら近づいて来るアリサ。

「アンタねぇ〜アタシに隠し事をした事後悔しなさいよ!」

アリサが取った行動は……、

ー抱ー

「え?」

「バカ……全部は無理でも少しくらいは相談しなさいよ……何のためにアタシ達友達やってんのよ……」

殴るでも怒鳴るでもなくアリサが取った行動は抱きしめる事だった。

「そりゃアタシだって話せない事があるけどそれでもね、アタシやなのはは友達でしょ? 少しくらい信用しなさいよ!」

「ごめんね……」

アリサの暖かな言葉に涙するすずか。

「すずかちゃん……ここは謝るとこじゃないよ」

「はい……アリサちゃん……なのはちゃん……ありがとう」

綺麗なサファイアのような蒼色の瞳から大粒の涙を流しながらも心から微笑む彼女の姿がそこにあった。

「よかった」

その光景を見守っていた零は問題に一段落ついた事に安堵し優しい微笑みを見せる。

「さてと……千歳警察に連絡を……」

「もう既に連絡はいれましたよ」

指示を飛ばすよりも速くに行動を起こしていた彼女に脱帽だ。

「速いな……」

「それほどでもありませんよ」

そう言って謙遜する千歳。

「さてと……コイツらは警察に任せて俺達は一足早めに帰るとしようか……」

誘拐犯の事を警察に任せて帰ろうとしたその時!

「「なのは! 大丈夫か!!」」

「「お嬢様!」」

突如壁を破壊して現れたのは士郎さん、恭也さん、あと執事みたいな人とメイドさんだった。

遅いっすよ皆さん……。

「俺達が来たからもう大丈……あれ?」

「どうやら既に終わっているようだな」

周りの惨状を見て呟く士郎さん。

「これを全部お前がやったのか……?」

信じられないようなものを見るような眼で零を睨む恭也。

「えぇ〜と……」

反応に困る零だが、

「そうなの!」

「そうよ! 銃弾素手で弾いたり、剣でそいつ倒したのよ!」

そんな零の事などそんなの関係ねぇ!とばかりに一部始終を語るなのはとアリサ。

「ちょっ!?」

「ほほぉ〜」

何やら怪しい光を宿した眼で零を見つめる高町親子。

「とりあえず皆さん……こんなところで立ち話も何なので一度離れませんか?」

はぐらかすかのように一度この場を離れる事を提案する。

「そうだな外で忍も待たせているしな」

「えっ! お姉ちゃんも来ているんですか!?」

恭也の漏らした一言に驚くすずか。

「ん? あぁ 危険だから外で待たせている」

「そう……ですか……」

「ではそろそろ出ましょうか」

千歳の号令で中に居た人間はぞろぞろと外へ出て行く、その際に未だに気絶している火龍の頭に右腕を当て記憶の読み取り『サイコメトリー』で火龍の記憶を読み取りそれを特殊な魔方陣を刻んだ宝石に写す。

「まさかあの『組織』と繋がりがあるなんてな……」
まさかの出来事に驚愕しつつも千歳達の後を追って零もまたこの場から去る。

ちなみに気絶した奴らは内部に鋼糸を編み込んだロープで縄脱けすら出来ないようにガチガチに縛りあげておきました。

その後は外に出た後恭也さんの彼女であり、すずかちゃんの姉である 月村 忍さんを回収し今いる場所から一番近い高町家へと移動する。

「〜と言う訳でして……」

俺は今回の件を一部誤魔化しつつ正確に伝える。

「まさか……奴らが……」

今回の敵である『龍』について何か因縁があるようだ。

俺は残念ながらとらハの方はさわり程度しか知らないのでこの場に置いては何も言えない。

「知っているのですか?」

「奴らは中国のマフィア『龍』……犯罪と名の付く事ならなんでもやっていると言ってもいい程の組織だ……」

「そして構成員は全員龍の刺青をいれているらしい」

そういや火龍の服を切り裂いた時にちらりとそれっぽいのが見えたな。

「そして私が仕事でとある人物を護衛していた時に起こったテロにも奴らが関係している可能性があった……今となっては調べようがないがな……」

あの大怪我って護衛中に起こった事故で負ったものとしか知らなかったけどまさかそんな因縁があるとはね。

「そういえば……零……お前……いやお前達は月村の秘密を知ったんだよな?」

何時もの兄バカ具合は完全に成りを潜め真剣な表情で零に問う恭也。

「はい……すずかちゃん……いや……月村が吸血鬼である事を知りました。」

今回は茶化す事なく真剣に答える。

「ならお前はこれからどうするつもりなんだ?」

これからと言うのは恐らく契約を結ぶか記憶を消すのかという事だろう。

「そうですね……ですがその前に俺の身体に関する秘密をバラしましょう」

「秘密?」

何の事か解らず聞き返す恭也。

「えぇ……俺のこの異常と言える身体能力ですが……恭也さんも気になりませんか?」

普通の人間ならあり得ないからな。

「確かに気にはなるな…」

「まずは……」

懐から一本のナイフを取りだし……、

ー切ー

「痛ッ!」

人差し指の腹を横一文字に切る。

零の白く細い指からポタポタと紅い血が流れる。

「これからですが……ん?」

切った指の腹の血を拭おうとするのだが……、

「………ゴクッ!」

すずかと忍さんがその流れる血を喉を鳴らしながら見つめる。

「………」

俺が無言で指を右に動かすと……、

それに合わせるかのようにすい〜とすずかの目線と首が動く。

さらに右〜左〜と動かすと追従する。

右、左、右上、下、左上! このコマンドによって、

まさにパクッ!っといった感じで零の人差し指をくわえるすずか。

「ちょっ!?」

口の中の指を舐める舌の動きが以外に激しいんですけど!?

「あ……」

指を引き抜いた際にチュポンという音をたて、さらに指についた唾液が銀糸のアーチをつくる。

「ごめんなさい……我慢出来なくてつい……」

名残惜しそうにかつどこか妖艶な声色で呟くすずか。

ちょっ! 周りの女性陣の視線がヤバいんですけど!?

てかなのはは分かるけど
何でアリサちゃんまで睨んでんの!?

「と……とりあえず今切った指を見てください」

指に付着した唾液を拭き取り、切った指を見せると……、

「傷が無い!?」

その指にはあるべき傷は痕跡すら無く綺麗なものだった。

「万能細胞って知っていますか? 文字通り血肉どころか骨や内臓にも変化する特殊な細胞です……俺の身体の8割から9割は万能細胞で出来ているみたいなんですよ」

厳密には状況に応じて進化する特殊なもので栄養価の高い物を食べたり負荷を掛ければ掛けるほど細胞がそれに負けないように進化するのでどちらかというとグルメ細胞に近い、

違う点をあげると特殊な儀式を踏んだ状態の体液交換でしか他人に適合しないといったところか。

ちなみに万能細胞は一応人の骨髄とかにも存在はするけどあんまり数が無い特殊な細胞なのだ。

「そのせいか身体は常に進化を続け異常な身体能力と再生力をもっているんですよ」

自分で言っててなんだが本当に化物染みているな。

「なるほどな……」

「だから俺の種族は一応人間ですがある意味化物とも言えます」

人間離れしててもまだ人間だからね!

「何故……今この場でそれを話したんだ?」

「意図せずとはいえ他人の秘密を知ってしまった事に対する詫びと……俺自身もまた好きな人達に受け入れてほしいからですよ……」

自分で望んだ力とはいえやっぱり好きな人達に拒絶されるのは恐い……人は孤独に弱い。

「なのは……君はこんな俺を受け入れてくれるかい?」

俺はなのはの方を向きしっかりと瞳を合わせ問う。

正直……今この子に拒絶されるのは嫌だ……俺の身体についてはいつかはバレる事だがそれでも……。

「お兄ちゃん……大丈夫だよ!」

最悪の場合も覚悟していた零だがそれとは真逆の答が返って来た。

「え?」

「お兄ちゃんは昔も今日もなのはを助けてくれたの! なのはが一人ぼっちで辛い時に一緒にいてくれた……だからなのはは嫌ったりしないよ!」

「なのは……」

今の言葉で不覚にも泣きそうになりました。

「ありがとう……」

気がつけば俺はいつの間にかなのはを抱き締めていた。

ちなみにその際にもう地獄の鬼も裸足で逃げ出すような恭也さんの顔は俺は見てませんよ……。

そして少し離れた場所から零達のやり取りを見ていた士郎達はというと、

「なるほどな……確かに身体能力は納得できるがあの武術の腕自体は本人の腕前……恐ろしい才能だ」

「それでもあの子はまだ子供……親としての義務もまともに果たせていない私達だけど娘を助けてもらってきたのだから私達もあの子を受け入れましょう」

「そうだね……しかし……今さら『龍』が現れるとはな」

苦虫を噛み潰したかのような表情の士郎。

「もしもの時は……」

「わかってるさ……」

決意を込めた眼を見せる士郎。

「では……零君……でよかったのよね?」

すずかの姉忍が零に問う。

「貴方は私達と契約を結ぶという事でいいのよね?」

「はい」

「では契約について詳しい話はまた後日でもいいですか?」

「ええ もちろん 千歳もそれでいいか?」

今まで静かに零の背後で佇んでいた千歳に問い掛ける。

「はい」

「では お願いします」

「零君……妹を助けてくれてありがとうございます」

忍は深々と頭を下げる。

「お気になさらず」

「お嬢様を助けていただき この鮫島感謝いたします」

アリサの執事である鮫島が忍と同じように頭を深々と下げて礼を述べる。

「怪我が無くてなによりです」

「一応感謝するわ! ……その……ありがとね」

おぉう ここでデレるとは……。

「どういたしまして」

「それでは私共はこれにて失礼いたします」

再び頭を深々と下げてからアリサを表に停めていたリムジンに乗せて去る。

「それでは私達も失礼しますね」

「はい」

そして月村姉妹も頭を下げ使用人の運転する車で帰路につく。

「それじゃあ 俺達も帰りますね」

そう言って帰路につこうとする零と千歳。

「君が何者でも私達は受け入れるよ」

帰路につこうとする零に小さく囁くように語る士郎。

「ありがとうございます」

零は静かに礼を返し振り返る事無く帰路へつく。

その後警察が誘拐現場に到着し、犯人達を逮捕したがただ一人火龍だけが見つからず斬られたロープの残骸だけが見つかったらしい。

こうして今回の件は終わりを迎える。

後日談ではあるが今回の件が切っ掛けとなりアリサとすずかの二人に懐かれたのは役得だろうか?

 
 

 
後書き
今年初めての投稿です。

遅くなってしまい申し訳ありません。

こんなダメ作者ですが応援よろしくお願いいたします!!

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