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おっちょこちょいのかよちゃん

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39 水浸しの町の復元

 
前書き
《前回》
 七夕の夜の闘いは終わった。しかし、かよ子達は公民館で夜明け、そして朝を迎え、学校は休校となった。さりの帰りも延期を余儀なくされる事になり、三河口はかよ子達にさりの送別会をやらないかと提案するのであった!! 

 
 雨は11時過ぎにようやく止んだ。かよ子達は公民館を出て清水の町を見る。一見ヴェネツィアのような水の町として美しく見えるかもしれないが、浸水は浸水だった。
「私達の町が・・・」
「ああ、あいつらよくもやってくれたよな」
 かよ子も、杉山も、大野も、長山も、他の皆も大量の雨水沈んだ町の様を見た。
「これで水が完全に干上がるのは何週間かかるんだろうか?」
 三河口は呟く。
「晴れてくれないとな・・・」
 北勢田もそう思う。
「こんな大雨せめて水不足の国に回せたらその国にとっては恵みの雨になるのにな」
「でも、日本は元々雨が多い国だから仕方ないよ」
 長山も話に入る。
「干上がる・・・。水不足の国・・・。そうだ・・・!!」
 さりはその会話を聞いてはっと思った。
「お姉さん、どうしたの?」
 かよ子はさりが気になった。
「この雨水を干上がらせて水不足に悩む国に回せたらなって思ってね」
「で、できるかな?」
 その時、護符が光りだした。

 すみ子とその兄は家族で水に埋もれた低地を見ていた。
「埋もれちゃったね・・・」
「ああ、水を掃きだすのも大変だろうな・・・」
 この雨では干上がるのを待ち続けるしかないであろう。しかし、簡単に干上がるのか。それが心配だった。その時、水が急に水蒸気と化していった。
「な、何だ!?」
 水は水位を下げていく。
(急に水がなくなっていく・・・。もしかして、あのかよちゃんの知り合いのお姉さんの護符の力かな?)
 すみ子はそう予測した。

 冬田は休校の連絡による電話を終えると好きな男子の事を考えた。
(大野くうん・・・。どうしてるのかしらあ・・・?)
 冬田はあの戦いの後の大野が今どういう状況なのか気が気でなかった。冬田はフローレンスから貰った羽根を使用する。目指すは大野達が避難している公民館だ。
「待っててえ、大野くうん・・・!!」
 冬田は羽根を見て浸水した町を見る。だが、その浸水した地区に異変が起こった。浸水した地域の水位が下がり始めたのだ。
「急に水が干上がってるう!?」
 なぜこうなったのか、冬田には理解不能だった。

「み、水が干上がってく・・・!!」
 かよ子は急な水位の低下に驚いた。やがて沈んでいた地面が見えていき、水は蒸発後、雲に戻る事はなかった。寧ろ晴れていった。
「す、凄い。これも護符の力?」
 かよ子はさりに聞く。
「そうね、健ちゃんの干上がるとか水不足の国に降ったらいいとかいう話を聞いてそう思ったの」
「さりちゃん、やっぱりその護符の能力(ちから)が使えるんですね」
「そうみたいね」
「凄えぜ、これでもしかしたら世界を守れるかもな!」
 杉山が感激する。
「でも、私利私欲とかには使えんよ。異世界の敵とか日本赤軍が二度と来ないって言う願いも聞くかわからんし」
 奈美子が補足した。その時、何かが飛んでこっちに向かって来た。
「大野くうん!!」
 冬田だった。
「ふ、冬田!?何で来たんだよ」
 冬田の突然の登場に大野は驚いた。
「だって大野君が心配だったからよお!」
「俺は平気だよ!」
 冬田の暑苦しさに何も言えない一同だった。
「でも、水が干上がってるけど何があったのお?」
「ああ、俺の従姉が護符の力で干上がらせてくれたんだ。干上がった水はきっと水不足で困っている国で雨として降らせてくれるはずだよ」
 三河口が答えた。
「ならよかったわあ。明日からまた学校で会えるわねえ!」
 冬田は大野の手を掴んだ。大野はうっとおしそうな顔をしていた。
「送ってあげるわあ、大野くうん」
「いいよ、父さんに母さんと歩いて帰るから」
「そんなあ、恥ずかしがってえ」
 困惑する親友に杉山が冷やかす。
「いよっ、お似合いだぜ!」
「杉山、お前まで・・・」
「けんいち、いいじゃない、お言葉に甘えたって」
「そうだね、折角送ってくれるんならいいかな」
「はあい!」
「ったく、父さんと母さんまで・・・」
 結局大野は家族で冬田に送ってもらった。
「冬田さん、凄い積極的だよね。私だったらあんな事できないよ・・・」
「え?」
 かよ子は杉山に聞かれて恥ずかしくなった。
「私はあんな事寧ろ断られそうで恥ずかしくてできないと思うんだ」
「そうか、でもお前も色々頑張ってたぜ。あの時お前達が飛行機に乗り込むのが遅かったら俺達もやられてたかもしれないんだ」
「杉山君・・・。でも私はまた私の問題に杉山君達を巻き込んじゃったし、すまないって思ってるよ」
「気にすんなよ、何かあったらいつでも協力してやる」
「杉山君・・・。ありがとう!」
「あら、さとしもかよちゃんを大切にしてるのね」
 杉山の姉が話に入ってきた。
「ね、姉ちゃん!俺は山田とは同じクラスメイトとして接してるだけだよ!」
 杉山は困惑した。
「さて」
 かよ子の母はその会話をよそに奈美子に話しかけようとする。
「奈美子さん、私は杖を娘に引き継がせたし、さりちゃんも護符を使いこなす能力(ちから)があったし、引き継がせたらどうかしら?」
「うん、そうね・・・」
 奈美子は娘に護符を持たせた方が良いかもしれないと思った。
「さり」
 奈美子は娘を呼ぶ。
「え?」
「この護符、元は私が使ってたんだけど、この先何が起こるか分からんし、持っておきなさい」
「いいの?」
「うん、でも本当に必要だと思った時に使うんよ」
「はい」
 さりは母から護符を受け取った。
「それじゃ、雨も上がったから、戻ろうか」
「うん!」
 皆はそれぞれの家に戻った。かよ子は自分の家に戻る。
「でも、テレビや洗濯機は水に浸かって壊れちゃったのかもしれないな」
 かよ子の父はテレビの電源が入るか確認した。テレビは問題なく着いた。冷蔵庫も洗濯機も、掃除機も問題なく使えた。
「もしかしたらこれもお姉ちゃんの護符のお陰かな?」
「そうかもしれないわね」
 かよ子はこの町を無傷の状態に戻してくれたさりに改めて感謝した。
(お姉ちゃん、ありがとう・・・)
 謎の地震が起きてから、元の日常が失われてしまったが、最悪の場合から少し戻せた感じがかよ子にはした。完全な日常に戻すには時間がかかるかもしれないが、それでも時は回り続け、空間は保ち続ける。 
 

 
後書き
次回は・・・
「四種の聖なるアイテム」
 学校は再開され、かよ子は学校の期末のテストに臨む。その一方、森の石松はあるところに行って「ある物」についての情報を得る。三河口は奏子を居候中の家に招待する。そして東京にはある「異世界の道具」を持った少女が夏休みに静岡県へ行く事を企画する・・・。
 
  
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