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おっちょこちょいのかよちゃん

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40 四種の聖なるアイテム

 
前書き
《前回》
 七夕豪雨の翌朝、清水の町はすっかり雨水に浸かっていた。そんな時、三河口の「こんな大雨せめて水不足の国に回せたらその国にとっては恵みの雨になるのにな」という発言に対してさりはある事を思いつき、その護符の能力(ちから)が発動される。その時、雨水の水位が急に下がり始め、町は元の姿に戻ったのだった!!

 今回は豪雨のエピローグおよび次のエピソードのプロローグのようなものです。そして「ちびまる子ちゃん」2期242話に登場した一話限りの登場でありながら杉山君とのカップリングで人気が高い「あの子」が登場します! 

 
 森の石松。死後、平和を司る世界へと移されていたが、かつて住んでいた世界が日本赤軍が行った異世界との接続により、再び清水に舞い戻ってきたのである。その石松は今、御穂神社にいた。
(ここか・・・。三保は今でも美しい・・・)
 そして石松は呼ぶ。
「御穂津姫」
 石松が呼んだのはこの神社の神だった。
「貴方は森の石松ですね。何か御用でしょうか?」
「ああ、聞きたい事がある。お主が29年前に二人の少女に渡したという杖と護符についてだ」

 七夕の大雨から二日後、小学校は再開された。かよ子の隣の家の娘(今は名古屋に住んでいて、帰省の身である)さりの能力(ちから)によって水は干上がり、電化製品も無傷の状態に戻した。また本来は流されたり、どこかに散らかっていたりしていてもおかしくない児童の物や置物などはそのままとなっていた。
(護符の能力(ちから)ってここまで復元できるんだ・・・!!)
 そんな時、かよ子を呼ぶ声が後ろから聞こえた。
「おっはよ~、かよちゃん!」
「あ、まるちゃん、おはよう」
「いや~、昨日は休みでアタシゃのんびりできたよお~。今日も学校休みだったらよかったのにねえ~」
(まるちゃん・・・)
 かよ子は大雨の中の戦いで「次郎長」のメンバーである大野、杉山、ブー太郎は参戦していたが、まる子がその場にいなかった事を思い出した。
「でも、私あの時は大変だったよ」
「え、どうして?学校が休みでよかったじゃん」
「私の家浸水しちゃったし、それに異世界からの人間が襲ってきて大変だったんだよ!」
「え!?そうだったのお~!?」
 休みをただ喜んでいるまる子に少し呆れたかよ子であった。その時、大野、杉山、ブー太郎も近づく。
「おい、さくら。お前、一昨日の夜、どうしてたんだ?」
「あ、いや、その・・・。寝てた」
「お前、『炎の石』持ってんなら『次郎長』の一員としての役目を忘れんなよ!」
「そうだブー!オイラの所も浸水は避けられたけど、出動したんだブー!」
「ご、ごめん、ごめん・・・」
 皆から叱責を喰らうまる子であった。

「某はその杖と護符という道具の事についてよく知らん。渡した意図と共に答えて貰いたい」
 御穂津姫は石松の質問に答える。
「それはあのお二方が空襲を受けた後の苦悩で手を差し伸べたかったからです。我々の世界の『道具』にはその世界の住人も知らぬ機密の道具もあるのです」
「機密の道具とな?」
「はい、それは四つの道具です。剣、杯、そして私がフローレンスから三河口奈美子、今の羽柴奈美子と山田まき子へ渡してほしいと頼まれた杖と護符。これをよく知っているのは大天使・フローレンスとイマヌエルと渡してほしいと頼まれた者のみです。戦後の混乱で苦しむ者のうち、生き抜きたい意志を強く持つ者四名を選抜し、各々の神社で祀られているという者を呼び、分け与えたのです」
「しかし、なぜフローレンスもイマヌエルも直接渡さなかったのであるか?」
「それはあの方々はそれらの道具を渡すのに各々の場所が離れてしまってはすぐには渡せませんし、神社に祀られている私達なら当時は私達のこの世界とこの地球への移動がしやすいと考えられたのです。その為、該当された者達へ『道具』を渡す場所が神社になったのです」
「そういう事か。剣と杯は他の地の者が所有しているのであろうか?」
「はい。剣は厳島の地、広島という所に、杯は東京、今の江戸にございます」
 御穂津姫は言葉を続ける。
「剣、杯、杖、護符。これらはトランプという西洋のかるたのような物に示される四つの紋印から型どったものです。剣はスペード、杯はハート、杖はクラブ、そして護符はダイヤです。平和を司る世界の中でも強力な力を発する物であるゆえに、極秘物として扱われているのです」
「それ故か。決して他の者には言いふらさんと約束する」
「いえ、既にその必要はありません。武力を主とする世界との繋がりが激しさを増し、かつこの世にも及んでいる今、その情報は共有せざるを得ません。今その大きな戦いが始まっているのですから」
「確かにそうであろうな」

 清水市内の高校も授業が再開されていた。三河口は奏子から心配されていた。
「三河口君、無事で良かったね」
「ああ、ありがとう」
「私、あの夜眠れなくて窓見てたら飛行機が飛んでたり爆発があったりして、びっくりしたよ」
「ああ、あの地震みたいな現象から信じられないと思うけど異世界の人間とか日本赤軍が攻めてきてるんだ」
「ええ!?」
 奏子は信じがたい事実に驚いた。
「あの大雨もそいつらが意図的に降らせたんだ。でも、まあ、やっつけたから一応は安心だよ」
「うん」
「そうだ、今日俺が居候してる家に来るかい?従姉もまだいるし」
「うん、そうするよ!」

 かよ子はたまえに大雨の中での戦いを話していた。
「そうだったの!?大変だったね」
「うん、でも皆で何とかやっつけたよ。それで隣の家に住んでたお姉さんが明日清水に帰るから送別会するんだよ。たまちゃんも行く?」
「ごめんね、私今日ピアノのお稽古あるんだ」
「いいよ、いいよ」
 かよ子は送別会が楽しみだった。帰る時、かよ子は大野と杉山、ブー太郎と集合場所を打ち合わせた。
「今日のお姉さんの送別会、私の家の隣の家に集合だよ」
「オーケー!」
「じゃ、後でな、ブー!」
 皆は別れようとした。かよ子はその後、まる子も誘う。
「あ、まるちゃん、明日、隣の住んでるお姉さんが名古屋に帰るんだ。今日、送別会やるんだけど一緒にどうかな?」
「いいねえ〜、行く、行く!ご馳走楽しみだねえ〜」
 まる子は食い意地がはった。
「もう、まるちゃんったら・・・」
 何も言えないかよ子だった。

 三河口は居候している家へ奏子を招待した。
「只今帰りました。今日は友達を連れてきました」
「友達?」
「あ、徳林奏子と言います」
「ああ、宜しくね」
 三河口は奏子を連れて居間に入った。その時、さりも入ってきた。
「健ちゃん、お帰り。あら、友達連れてきたの?」
「はい」
「徳林奏子です」
「こんにちは。三河口健の従姉の羽柴さりです。宜しくね」
「あ、あの、この辺り、大雨の被害とかは大丈夫でしたか?」
「え?ああ、大丈夫よ。浸水はしたけど、今は干上がったわ」
「そうですか、よかった・・・」
「良かったって?」
「私、三河口君と日本平の花火大会に行こうって誘ったんです」
「日本平の花火大会?良かったね、健ちゃん、デートじゃん」
「さりちゃん・・・」
 三河口は赤面した。
「やあね、顔赤くしちゃって」
 さりも奏子も笑った。奏子はクッキーをコーヒー牛乳をご馳走になった。三河口がトイレに行ったところで、さりは奏子に話しかける。
「奏子ちゃん」
「え?」
「もしかして健ちゃんが好き?」
「う、は、はい・・・」
「健ちゃんは小学生の頃まで、色々と大変でね、それで中学生の頃からここに住むようになったのよ」
「はい、それは聞いてます」
 三河口は自身の過去を隠す事はなく、学校の同級生達に話していた。
「でも、今の三河口君はそうは見えません」
「そうよね、健ちゃんは人と違う『もの』を持っていて、それを抑える為に清水に来たの。それは何か、何か恨みとか憎しみを持つとその相手に怒ってとんでもない攻撃をしちゃう能力だって」
「そうだったんですか!?」
「うん、でも今はそれを抑えられてるみたいよ」
「でも私、それでも三河口君が好きなんです」
「健ちゃんは奏子ちゃんとは仲良くしてるし、能力を暴走させる事はないと思うわ」
「はい」
 そして奏子は帰る時になった。
「それではありがとうございました」
「またおいでね」
「奏子ちゃん、花火大会、楽しみにしてるよ」
「三河口君・・・、うん、じゃあね!」
 奏子は三河口の最後の言葉が嬉しくなり、帰って行った。
「さて、そろそろ皆来るね」
 30分ほどしてかよ子が杉山達を連れてきた。
「こんにちは!」
「あら、こんにちは」
 そしてかよ子の両親、濃藤とその妹、すみ子、北勢田も訪れ、利治も帰ってきた。
「それじゃ、楽しい送別会にしよう!」 
 皆は送別会を行う場所へと向かった。

 東京。ここに一人空襲後の混乱を乗り越えようとする者に一つの杯が与えられた。その杯は様々な分子を入れるとその精霊を生み出す杯だった。それを木の枝などを使用して植物の精霊を生み出し、様々な木の実を作らせ、飢えを凌いだという。混乱も収束し、その杯は長らくしまわれていたが、29年ぶりに使用される事となり、その者の娘に引き継がれた。その娘は安藤りえといった。だが、りえの住む所は東京から横浜まで跨がる工業地帯の中だった為、空気が悪く、喘息が持病となってしまった。りえはその杯に空気を入れ、風の精霊を作り出して自身の周囲の空気を浄化する事で何とか凌いでいた。
「りえ」
 りえは母からある提案をされた。
「この夏休み、静岡のおばあちゃんの家に遊びに行ってみたら?あそこは空気はそんなに汚れてないからね」
「え?うん、楽しみにするわ」
 りえはこの夏休み、静岡県へと遊びに行く事に決めたのだった。 
 

 
後書き
次回は・・・
「護符の所持者、名古屋へ戻る」
 名古屋へ戻るさりの送別会を行うかよ子達。そして次なる作戦を開始する日本赤軍。そして東京ではとある少女が清水へ行く事を予定しており・・・。 
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