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愛犬の願いごと

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第一章

                愛犬の願いごと
 悠木桜はこの時愛犬のベル、雌のゴールデンレッドリバーである彼女と共に散歩をしていた。この時彼女は大学の講義が終わって気楽な気持ちでいた。
 その彼女は一緒に散歩をしている、健康の為に医師に毎日歩く様に言われている祖母の菖蒲に言った。
「ねえ、ベルがね」
「どうしたの?」
「あっちに行きたいって言ってるの」
 前のすぐ左手にある路地裏の方を指差して祖母に話した。
「そう言ってるの」
「路地裏の方に?」
「こっち見てね」
 見れば実際に桜を見ている、桜は黒髪を少し長く伸ばしアーモンド型の目と整った形の眉に小さな唇を持っている。背は一六四程でジーンズがよく似合っている。菖蒲は白髪で穏やかな皺が目立つ顔にロングスカートがよく似合っている。
 その祖母にだ、こう言うのだ。
「行こうって見てるわ」
「よくわかるわね、そんなこと」
「だってベルさっきそっちを見てね」 
 路地裏の方をというのだ。
「それで私の顔見るから」
「それでわかったの」
「そう、それでね」
「今から路地裏の方行くのね」
「そうするわね」
「わかったわ、ただね」 
 祖母はここで微妙な顔になって孫に言った。
「路地裏に何かあるのかしら」
「さあ。気まぐれかも知れないわね」
「ただ路地裏に行きたいだけで」
「それだけかも知れないわね」
「そうなのね」
「けれど」 
 それでもとだ、孫娘は祖母に話した。
「今からね」
「そっちに行くのね」
「ええ、そうするわ」 
 こう言ってだった。
 二人はベルに引っ張られる形で路地裏に入った、すると。
「ワン」
「ニャアア・・・・・・」
 ベルが鳴くと小さな黒猫がそこにいた、見れば動きは鈍く痩せこけていて毛も酷いものだ。しかも。
 その猫の目を見て祖母は言った。
「真っ赤ね」
「ええ、目がね」
 孫娘もその目を見て言う。
「随分弱ってるわね」
「そうね、このままだと」 
 祖母は孫娘に心配する顔で言った。
「この子長く生きられないわよ」
「そうよね」
「うちはワンちゃんがいるけれど」
 ベルはじっとその猫を見ている、猫はその場からあまり動かない。かなり弱っていることがそのことからもわかる。
「どうしようかしら」
「ワウ・・・・・・」
 ベルはここで二人を見た、その目を見て。
 孫娘は祖母に話した。
「ベルはね」
「この猫ちゃん助けて欲しいのね」
「そう言ってるわ」
「そうなのね」
「だからね」
「この子は」
「このまま放っておけないから」
 それでとだ、孫娘は言った。
「だからね」
「助けるのね」
「そうしましょう」
 こう祖母に答えた。
「今から」
「そうしましょう」
 こう話してだった、そのうえで。
 祖母が猫のところに近寄り抱え上げた、ベルはその間ずっと猫を見て心配そうにしている。その猫狗と猫をみながらだった。
 孫娘は祖母に言った。 
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