| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦国異伝供書

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第七十七話 諱その四

「これまで通りです」
「盟約を保っていくか」
「そして朝倉殿にもです」
「織田家との盟約をか」
「結んで頂きたいとです」
 その様にというのだ。
「考えております」
「そうなのか」
「織田殿は必ずです」
「天下人になられるか」
「間違いなく」
 父に対して断言で答えた。
「あの方は」
「うつけ殿と呼ばれておるが」
「ですが尾張の政は見事であり」
「まとまっておってか」
「優れた家臣の方も多く」
「戦もじゃな」
「尾張を瞬く間に統一され」
 さらにというのだ。
「今川家を降しましたな」
「あれにはわしも驚いた」
 久政は眉をぴくりと動かした、そのうえで長政に話した。
「二万五千の大軍を僅か二千で倒すとはな」
「思わぬ奇襲により」
「あれで今川家は倒れた」 
「はい、ご当主殿に跡継ぎ殿が捕えられ」
 そうなってしまってというのだ。
「そうなってしまいました」
「三河は松平家が立ったそうじゃな」
「そして遠江の西もです」
「領地とされたか」
「合わせて五十万石、そして徳川家と名を変えられ」
 そうしてというのだ。
「やはり織田家と盟約を結ばれました」
「そうであるか」
「弾正殿の姫君をご子息の正室に迎えられて」
「そして当家もじゃな」
「織田家と盟約を結びます」
「織田家の動きは速いな」
 久政もその動きについて述べた。
「実に」
「はい、そして伊勢と志摩の国人達を取り込んでおられ」
「そしてか」
「北畠家や神戸家の家臣の方々も篭絡されているとか」
「では伊勢や志摩もじゃな」
「領有され美濃では」
 近江とも接しているこの国はというと。
「四人衆を味方につけられるとか」
「左様か、しかしお主」
 久政は今度は長政に対して言った。
「よく知っておるな」
「実は甲賀者を雇いまして」
「そうして聞いておるか」
「調べさせたうえで」
「そうであるか」
「はい、どうやら織田家は」
 長政は父に答えたうえであらためて話した。
「これからです」
「大きくなることはか」
「間違いありませぬ」
 まさにというのだ。
「尾張だけでなく伊勢と志摩、美濃を領有されて」
「合わせて二百二十万石か」
「そうなるかと」
「そこまでなれば」
 どうかとだ、久政は述べた。
「天下もな」
「狙えますな」
「近江の南の六角家を降せば」
 織田家の拠点である尾張から上洛すればどうかというのだ、久政は頭の中で考えてそのうえで我が子に話した。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧