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戦国異伝供書

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第七十四話 元服しその十二

「むしろ甘いものを好まれるとのことじゃ」
「またそれは意外ですな」
「どうにも」
「我等が聞いても」
「全くじゃ」
 こう言うのだった。
「わしもその話を聞いてな」
「意外に思われましたか」
「宗滴様も」
「左様でしたか」
「人はわからぬ、甘いものがお好きとは」 
 信長のそのことをさらに話した。
「全く以てな」
「では柿や蜜柑ですか」
「そういったものを好まれますか」
「栗や瓜も」
「左様ですか」
「その様であるな」
 実際にというのだ。
「あの方は」
「ですか、ではです」
「今度我等も何か甘いものを食いますか」
「そうしますか」
「ははは、それもよいな」
 宗滴は笑って返した。
「それも」
「では、ですな」
「鍛錬の合間にですな」
「休んだ時に」
「甘いものを」
「そうするか」
 こうした話をしつつだった、宗滴は馬に乗りに行った。そうして家臣達と共に汗を流し屋敷に帰った時に。
 宗滴はおはぎを食べた、そうして彼は言った。
「うむ、美味いな」
「全くですな」
「実に美味いです」
「おはぎもまた」
「実に美味いです」
「これはよい、では後は」
 宗滴は共に食う家臣達にさらに話した。
「今度は槍の稽古をし」
「そしてですか」
「その後で、ですか」
「さらにですか」
「そうしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「晩飯も食い後はな」
「学問ですな」
「そちらに励まれますな」
「そうされますな」
「そうするとしよう」
 こうした話をして文武の鍛錬を重ね身を慎んだ、宗滴は高齢だがまだ生きねばならぬと思いそうしていった。


第七十四話   完


                  2019・11・15 
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