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仮面ライダーの力を得て転生したったwwwww

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第3話


『クソ・・・・・・くそっ、クソッ!!』

 先刻の闘いで、アナザージオウに敗北を喫し、命からがらに逃げたアナザービルド。彼の異形にあるのは、アナザージオウに対する怒りであった。

『クソが!!!』

 アナザービルドは力任せに、目の前にあったひび割れたコンクリートを殴る。コンクリートの壁は原型を留めることなく破片を散らしながら粉砕されるが、それでも異形が持つ、心の底から湧き上がってくる怒りが消えることは無かった。
 やがて狂い立つ気力と使い果たしたか、アナザービルドは変身を解き、男の姿へと戻って地べたへとへたり込む。

「・・・・・・ちっ」
 舌打ちを吐きながら、男は瞼を閉じる。意識が消えゆく最中、男はこの世界来る以前の事を思い返していた。


 ───



 アナザーライダービルド───その変身者である男は生前、物理学者であった。御世辞にも優秀とまでは言えなかったが、論文やその世界ではそれなりの地位を獲得し、惰性に人生を生きてきた。


 とある科学者が、その男の前までに現れるまでは。
 ある日、1人の研究員が新人として研究施設へとやって来た。

「今日からこの研究所で働く桐生戦兎って言います。どうぞ宜しく」


 その者は、あまりにも自意識過剰であった。誰もが驚く発想力を持っていた。一つのテーマをとことん突き詰める飽くなき探求さがあった。その者の在り方は正しく「異端」。しかし彼は正しく、「天才」であり、ラブ&ピースを掲げ、人類の発展を願う「科学者」の鑑であった。


 男は次第に、桐生戦兎に対して逸脱した一方的な嫉妬と執着心を抱いていた。そんな自分に嫌悪感を抱きながらも、その想いは募るばかり。それまで自分を慕っていた同僚も上司も、己の元を離れていく。



 自分の居場所が、取られていく。奪われていく。



 憎い。


 憎い、憎い。


 憎い、憎い、憎い。


 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い・・・・・・




 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い


 憎悪が満ちるところまで満ちた男はやがて、「ブラッドスターク」───後の地球外生命「エボルト」 に桐生戦兎に抱く憎悪煽動を受け、スマッシュとして桐生戦兎───仮面ライダービルドと対峙した。しかしライダーシステムの劣化であるスマッシュが、オリジナル──それでもプロトタイプの劣化版なのだが──のライダーに勝てる筈もなく、男は敗れた。
 科学者としても、人としても、異形としても奴に劣った。いや、初めから男には桐生戦兎を上回る素質なんてなかったのだと。そんな現実に打ちのめされた男は、自暴自棄に持っていたボトルを、身体に直接押し当てる。


「───さん、何を?!」
「ぅっ・・・・・・ぐぅ・・・! 黙れぇ!!!」


 身体がネビュラガスに侵されていく。神経という神経に、手に、足に、肺に、心臓に、恐らく脳みそにまでガスが回っていく。苦しい。だが、これから奴の存在に醜く嫉妬する自分がどうしても耐えられなかった。それに、どうせ生き延びた所でスタークに口封じのために始末されるのは必然であった。

 アイツは平気でそれをやれる外道であった。それくらいなら、自決した方がまだマシであった。 やがて身体がネビュラガスを許容できなくなり、粒子を放出するように分解し始める。

「フハハハハハハハッッッッ!!!!!! ファウストに、栄光あれ──!!!」

 男は最後にそう言葉を残して、現世から消滅した──筈だった。


「・・・・・・ここ、は?」


 男が目が覚めると、そこは辺り一帯が瓦礫に積まれた廃墟の中心であった。天国にしては殺伐とし過ぎているし、何よりも自分のいた世界を象徴していた壁が存在していない。
 自分の身に何が起きているのかと困惑している所に、更に男を驚愕させる現象が起きた。


「な、なんだ・・・・・・!?」


 男の周りの時の時間が、完全に静止したかのように、動かなくなったのだ。景色や風、何もかもが。 腐っても物理学者である男から見ても、余りにも非現実的であった。そして男の背後から、初めからそこに居たかのように小柄の少年──ウールが現れる。

「やあ、僕はウール。君に力を与えに来たんだよ」
「・・・・・・何だと?」
「君は死んだ。 だけど、僕はその君の中に眠る憎悪に目をつけたってわけさ! もし君が望むなら、力を与えてあげるし、新しい生も与えよう。どう?」

 ウールとの名乗る少年からの提言は、実に非現実的で、バカバカしかった。 だが、1度死を経験したからなのだろうか。2度目の生などどうでもよかったのだが、男はこれも一興だと嗤う。どうせ自分にはもう何も無い。ならばあの男が掲げた思想の真逆へと逝ってやる。その憎しみを胸に、男は二つ返事で承諾をした。


「なんだ分からねぇが、乗ってやるよ」
「契約成立っと」


 ウールはほくそ笑むと、ブランクライドウォッチを起動、すかさず男の身体の中に突っ込む。 すると、ネビュラガスに侵されていくのとは違った、力が漲ってくる充足感が男を満たしていく。


『ぐぉぉぉああああああっっ!!!!』
「今日から君が、『仮面ライダービルド』さ!」



《BUILD・・・・・・!!》

『ぐぅぅ!! ・・・・・・フンッ!!!』
 かくして、憎悪のマッドサイエンティスト。アナザー(仮面ライダー)ビルドがとある世界に顕現した瞬間である。


 ─────


 砂嵐が眼前の視界を奪う。俺に激しく叩きつける砂から身をを守るようにフードを一段と深く被り、素肌を出さないように厚着を羽織り、1歩ずつ砂の大地を歩んでいく。
 どうにか砂の一帯を抜けると、俺の目の前には今まで訪れた中で比較的健在な街があった。 街一帯は活気づいており、人々の目からは決して希望が失われていなかった。今までは違う街の雰囲気に俺は少しばかり面を食らったが、そんな街もあるだろうと脳の奥隅に追いやり、近くで野菜の売買を行っていた人に話を聞く。

「すみません、少しいいですか?」
「どーしたお兄ちゃん、野菜が欲しいんかい? うちの野菜は採れたてやで〜?」
「あ、いえ。何処か、泊まれる場所は無いですか?」
「泊まれる場所? うーん、悪いけどうちの街はそういう場所は無いわねぇ」
「そうですか・・・・・・ありがとうございました」


 俺は八百屋さんのおばさんに詫びと礼を言うと、おばさんは「そうかい」という返事を言い、何事も無かったかのように販売を再開する。どうしたものかと肩を若干落としてため息をついていると、後ろから声を掛けられる。


「あ、あの。何かお困りですか?」

 視線を声主へと向けると、そこには女の子がキョトンとしながらコチラの様子を伺っていた。黒髪のロング、曇の蒼い瞳に控え目なつり目と、美少女といっても差し支えない容姿である。俺は話そうか少し迷いながら、事情を口にする。

「あぁ、えっと…………宿を探してるんだ」
「宿? …………もしかして、旅をしてる方なんですか?」
「まあ、大体そんな所」
「そうなんですね…………今の世の中、旅人なんて滅多にいませんから。何時ぐらいから旅をしてるんですか?」
「えっと、2・・・・・・」
「2?」
「2ヶ月、かな」


 少女の会話に釣られ2年、と思わず言いかけたが、既のところで抑える。2年という期間放浪していたなど誰も信じてくれるわけが無い。この世界で2年生き延びられる者など、アナザーライダーの襲撃を受けなかった幸運者か…………アナザーライダー本人しか居ない。初対面の人とは分かっていても、変に自身の秘密について嗅がられるのが嫌でだった。
 少女も俺の空気を察したのか、それ以上は追求する事はしなかった。 その様子を見て俺は話は終わりと言わんばかりに踵を返そうと──

「あの、今日泊まる場所が無いんだったら、私の家に来ませんか?」
「・・・・・・え?」

 出来なかった。

 それどころか、この世界に来てから初めて俺は素っ頓狂な声を漏らした。彼女が何を言ったのかを、自分の中で何度も咀嚼するように呟き、ようやく少女の言った言葉を理解する。

「ご、ゴメンなさい、私困ってる人を見るとついお節介を焼いちゃうもんで・・・・・・」


 少女はあたふたと、自分の発言を思い返してか顔を僅かに紅くして謝ってくる。その少女の様子から善意で申し出てくれたのを悟った俺は、今後の予定や安全を考慮した上で・・・・・・


「あの、君が良ければ今日ご厄介してもいいかな?」
「っ!・・・・・・うん、勿論!」


 彼女の大袈裟にも見える反応が、何故だか泣きたくなるくらい懐かしく、新鮮で。俺は思わず笑みが零れた。彼女もそんな俺の顔を見て、また笑顔を零す。と、少女は何か思い出したように、言葉を述べる。


「そう言えば、まだ名前を言ってなかったですね。 私は琴音って言います。 お琴の琴に、音って書いて琴音です」

 美しい名前だと思った。だけどそれだけじゃない。なにか、特別な感情が湧いてくる。例えるなら、見知ってる誰かと再会した、そんな感覚が。不意に彼女へと意識を向けると、不思議そうな顔でこちらを見てたので俺は慌てて会話へと戻る。

「あ、ああ。琴音、さんね」
「いいよ敬語は。普通に呼び捨てで読んで?」
「じゃあ、琴音」
「ん、宜しい。それじゃあ次はあなたの番!」
「と、言うと?」
「だーかーら! 君の名前だってば! 私だけ自己紹介しといて、君は名乗らないなんて不公平じゃん」

「俺の・・・・・・名前」

 琴音との会話で、俺はどうしようかと言葉に詰まる。今の俺に憶えている記憶はライダーの記憶が殆どで、それ以外の事は擦り切れてしまったかのように思い出せない。

 それでも懸命に必死に消えかかっている俺自身の記憶を探り──自身の名前を口にする。


「アラタ。それが俺の名前」


 その言葉を呟いた時の俺の濁っていた目は、少しだけ澄んでいる気がした。


ーーー


「どうぞ! 広くは無いから期待しないでね」
「いえ、泊まらせて貰えるだけでも有難いから。…………お邪魔、します」


 琴音の家に着いたのは、夕日も沈みかけた頃であった。案内された家は、思ったよりも少し大きかった。彼女に先導されるがまま、俺は琴音さんの家の中へと入る。部屋へと入ると、1人で暮らしているにはやや広く、隅々まで掃除が行き届いており、綺麗に整頓されている。壁に遺っている銃痕さえなければ、至って普通の女の子の部屋だった。


 俺達の肥大したエゴが、戦いとは無縁な女の子の生活をも変えてしまったのだと改めて突きつけられているのを感じていると、琴音が心配そうに様子を伺ってくる。隠せてるつもりでも、顔に浮かんでいた曇りまでは誤魔化せなかったらしい。


「……どうかした?」
「いや、別に。イイ部屋だなって」
「でしょ? 内装には拘ってるんだ〜。まあでも、壁に穴空いてるのは勘弁してね。お茶でも飲んでて待ってて。すぐご飯作るから」


 琴音は笑ってそう言うと、俺にお茶の入ったグラスを出してくる。俺は机に出されたそれを手に取り、お茶を飲みながら待つ。



「お待たせ! これが採れたての野菜だけを使ったサラダ。で、ご飯と味噌汁と卵焼き。あと魚の開き。ホントなら美味しいやつ作れるんだけど、今の状況じゃ作れるやつに限りあるからさ」

 琴音は申し訳なさそうに詫びの言葉を入れるが、食他に並べられている料理の見栄えに、俺は舌を巻かずにはいられなかった。

「それじゃあ…………頂きます!」
「…………頂きます」


 琴音は箸を両手にとると、頂きますといい、早々に食べ始める。 そんな彼女の言葉に続くように俺も箸を手に取り、アジの開きの身をほぐし、口に入れ、味わうように咀嚼を繰り返す。
 何十回も噛んで飲み込み、琴音の方へと顔を向けて素直な感想を口にする。


「……美味しい」
「ホント? 良かった!」


 彼女の目もくれず、俺はひたすら食べ続ける。琴音はそれを見て驚きつつも、俺が完食するまでの間、微笑ましそうに両肘を机の上に起き、両手を両頬に添えて何処か嬉しそうに見ていたのだった。



「なんか悪いな、その」
「ううん、気にしないで」


 風呂を済ませ、時刻が21時を指す頃には俺達はかなり早めの就寝になろうとしていた。最初は「床で寝るからアラタはベッド使っていいよ」とまで勧められはしたが、流石に転がり込んだ身で贅沢など言える度胸は俺には持ち合わせてなかった。
 俺が床で寝るかベッドで寝るかでそれなりに話が膠着してしまったが、何方かと言えば野宿をしてる方が多かったし、自分は床でも有難いから大丈夫。と言うと、彼女は渋々と引き下がってくれた。

 俺は用意してくれた毛布を被り、掛け布団で体を覆うと寝着へと着替えた琴音に一声掛ける。


「その、お休み」
「うん、お休み」


 そのやり取りをした後、部屋の電気が消える。
 それから数時間経つも、初対面の人、それも異性の人と同じ屋根の下で寝ているという状況下に意識しているのだろうか。なかなか寝付けずに、とっとと意識を手放そうと蠢いてると。


「・・・・・・ね、まだ起きてる?」
「あぁ、起きてる」


 既に寝てると思われていた琴音に話し掛けられる。その口調は先程話していたよりもずっと弱々しい。

「私ね、家族が居たんだ」

 それは、1人の少女の普通の家族の話。何でそんなことを、とはとても言える雰囲気でもなく。 そこから琴音は彼女の家族と過ごした時間を、楽しそうに語っていく。


 自分の家族は4人家族で、父親と母親、彼女と弟がいた事。


 彼女の父は威厳を持ちながらも優しい父であったということ。


 彼女の母は優しく、彼女や弟を大事に育ててくれた愛のある人だということ。


 彼女の弟はちょっと生意気だったけど、彼女の弟らしくお人好しであったこと。


 そこまで語った琴音だったが、何かに怯えてるかのように、声が震える。

「でも・・・・・・2年前。私達の家族は怪物に殺された。私は必死に息を殺してる中で怪物は悲鳴を楽しむように、笑いながら私の家族をみんな殺したの。・・・それで、それで・・・・・・」
「・・・・・・そっか」
「ご、ごめんね! グスッ・・・・・・もう寝よっか!」


 琴音はやがて堪えきれなくなったのだろうか。啜り泣く音が部屋中に響き渡る。
 弱ってる彼女に言葉を掛けようとして、俺は唾を飲み込む。一体、自分が彼女に何が出来るのだろう。俺もまた、彼女の家族を手に掛けた怪物でもあるのに。今更誰かに寄り添うなど、白々しいにも程がある。


俺が罪悪感と葛藤に魘されている間に、彼女はこれ以上弱い所は見せまいと見栄を張って再び眠りについた。


 泣き疲れたのか、寝息をたてている彼女に続くように、俺も瞼を閉じた。


 彼女の、人々の平穏を間接的に壊した、罪悪感から目を背けて。
 
 

 
後書き
(ストック切れてきたなぁ・・・) てなわけで、主人公君の名前とヒロインちゃんが出てきました。 アナザービルド編もあと数話位ですかね。

前書きは基本的には書きませんが、気まぐれにやる事もあるので御容赦を()

感想、評価等お気軽にお待ちしております。 
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