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おぢばにおかえり

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第五十七話 卒業式その十一

「これでもう後は入学ですね」
「来たのね」
 その阿波野君を見て言いました。
「ここで」
「はい、駄目ですか?」
「駄目じゃないけれどどうして来たの?」
「どうしたって先輩に挨拶に来たんですよ」
「挨拶って」
「ですから今日の挨拶に。それに」
 それ以上にと言ってきました。
「今の言葉言いにきました」
「卒業おめでとうって」
「はい、言いにきました」
 それでというのです。
「それで嬉しそうで何よりです」
「全く。そこまでしなくていいわよ」
「そうですか?あと泣いておられないですね」
「泣くってね」
 このことはです。
「だって私卒業してもおぢばにいるのよ」
「だからですか」
「ええ、一旦実家に戻るけれど」
 それでもです。
「またおぢばに帰るから」
「だからですか」
「卒業してもね」
 本当にです。
「それからもあるから」
「だからですか」
「これで終わりって思えないで」
 そのせいで、です。私自身が思うには。
「泣いてないのよ」
「そうですか」
「ええ、だからこれからもね」
「はい、今度はこの詰所に住まれるんですね」
「ひのきしんをさせてもらいながらね」
 勿論大学にも通います。
「そうしてね、それで阿波野君毎日よね」
「詰所来させてもらいますね」
「そうよね。奥華の子だしね」
 それならです。 
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