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ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル

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第64話 来たぜ、癒しの国ライフ!再生屋与作登場!

 
前書き
 原作とは違いこの時点で小松がランキング入りしているという設定にしていますのでお願いします。 

 
side:小猫


「……という訳で私はイッセー先輩と食材探しの旅に出る事になったんです」
「そっか、イッセーと白音の旅はそこから始まったんだね」
「懐かしいな、思えばあの時小猫ちゃんとぶつからなかったらこうやって一緒に旅をすることなんてなかったんだろうな」


 姉さまと再会できた私はイッセー先輩と一緒に今までの事を姉さまに話しています。まずはイッセー先輩との出会いとガララワニを捕獲するまでの事を話しました。


「白音とイッセーがそんな出会い方をしていたなんて……まるで運命ね」
「イッセー先輩とは赤い糸で結ばれていますから。でも姉さまがグルメ界にいたのも運命だったのでしょうか?」
「あはは、確かに異世界で再会できるとは思っていなかったから運命なのかもね」


 本当にビックリしましたよ、まさか姉さまがグルメ界にいて節乃さんのお店で働いていたなんて普通は思いもしませんから。


「あっ、そうだ。私姉さまに再会できたらコレを返そうと思っていたんです」


 私はリュックから父様の形見である包丁を取り出しました。


「それはお父さんの包丁……白音、持っていてくれたんだ」
「当然です、これは父様の大切な形見なのですから。姉さまがお守り代わりに置いていったものですが漸く返せる日が来ましたね。姉さま、受け取ってください」


 私は姉さまに父様の形見である包丁を渡そうとする、でも姉さまは手を出してそれを止めました。


「白音、その包丁は貴方が持っていて」
「えっ、でも……」
「その包丁、私が貴方にあげた時から全く劣化していないにゃん。白音がちゃんと心を込めて手入れをしていたからそんなにも綺麗な状態になっているんだね」
「どんなに小さな道具でも心を込めて手入れして大事にする、それが父様の教えですから」
「それをキチンと守れる人って実は少ないんだよ。その包丁はもう白音を主だと思っているはずだにゃん、だからその包丁は白音が使うべきだよ」
「私なんかが父様の包丁を使ってもいいのでしょうか……?」
「自信をもって、白音。お父さんだってソレを望んでいるはずにゃん」
「俺もそう思うぜ」


 私はジッと父様の包丁を見つめます、すると包丁がピカッと光りに反射して輝いて見えました。私はそれがまるで父様の答えだと思い包丁をしまいました。


「分かりました、姉さまや先輩がそう仰ってくださるのならこの包丁は私が使い続けさせてもらいます」
「うん、それが良いにゃん」


 父様の包丁を受け継いだからには私も本格的に料理人を目指してみたいです。姉さまは節乃さんの弟子ですし今度食材の調理の仕方について聞いてみよう。


「と・こ・ろ・で……」
「はにゃ!?ね、姉さま!?」
「うおっ!?」


 姉さまが後ろに回り込んで私の胸を揉んできました。今揉むほど無いだろうって思った方は覚悟してください。


「んっ……姉さま……なにを……ひゃん!?……しているんですか……!」
「ふんふん、なるほどねー」


 姉さまは何かを探るように指を動かしています。く、くすぐったいよぅ……


(こ、小猫ちゃんってあんな艶めかしい表情もするんだな……)


 隣にいるイッセー先輩は私を食い入るように見ていました。先輩にそんなに見つめられると嬉しいけど恥ずかしいです……


「はい、御終い」


 姉さまは私の胸から手を離すと顎に人差し指を当てて何か考え込むようにしていました。


「仙術で体の中を見てみたけど女性ホルモンがすっごく出ていたにゃん」
「そ、それがどうかしたんですか……?」
「今は仙術でしか体を大きくできないけどこの調子なら数年にはもっと大人っぽい色気のある体になると思うよ」
「ほ、本当ですか!?」


 姉さまの言葉に私はガッツポーズをしてしまいます。いや仙術で将来性は確認していますがこれが数年後に来ると思うとそりゃ嬉しいですよ。


「今まで美味しいグルメ食材を食べ続けてきた甲斐がありました……」
「そうだね、それもあるけどやっぱりグルメ細胞が目覚めたから体が成長し始めたんだと思うにゃん」
「グルメ細胞……」


 私はその言葉を聞いて改めて自分の体内の中にグルメ細胞があるという事を実感しました。


「でも変じゃないですか?私は異世界の出身なのにグルメ細胞を持っているのはおかしいですよ」
「白音はどうやってグルメ細胞を人間に体内に入れるか知ってる?」
「そういえば知りませんでした」


 私はグルメ細胞を体内に入れる方法にすごく興味がありました。そろそろ先輩に確認してみようかなって思っていたので丁度いいですね。


「なら俺が教えるよ。この世界の食材には大小差はあれど必ずグルメ細胞があってそれを食べ続けるとごく稀に体内にグルメ細胞が宿ることもあるんだ。これを『摂食注入』っていうんだぜ」
「じゃあ私はそれでグルメ細胞を……?」
「どうだろうね?それでグルメ細胞を得た人は長い歴史の中でも数えるくらいしかいないらしいにゃん。大体は『直接注入』をする人が多いんだ」
「直接注入……ですか?」
「注射で体内に細胞を直接入れるんだ。でもこの方法はリスクも大きいし最悪死ぬから気軽には使えない方法なんだけどな」


 イッセー先輩と姉さまがグルメ細胞の取り入れ方を丁寧に教えてくれました、グルメ細胞を得るにはそのような方法があるんですね。


「私は直接細胞を入れていませんしやっぱり摂食注入ですかね?」
「でもそれだとおかしい点があるんだよね」
「何がですか?」
「摂食注入でグルメ細胞を得るのは本当に難しいんだ。それこそセンチュリースープ級の食材を何回も食べなきゃまず無理だしそれでも数パーセントにも及ばない確率にゃん。白音もグルメ界に来てそんなにたっていないんだよね、なら摂食注入である可能性は低いと思うにゃん」
「グルメ細胞について詳しいんですね、姉さま」
「実はね、私もグルメ細胞を持っているんだにゃん」
「えっ……」
「何だって?」


 姉さまの突然の告白に私は思考を止めてしまいました、姉さまもグルメ細胞を持っている?


「私が初めてグルメ界に来た時に死にかけていたのはさっきの話で知っているよね。その際に節乃さんが作ってくれた料理を食べた瞬間、私の体内で何かが目覚めた感覚がしたんだ」
「それがグルメ細胞だと……?」
「うん。節乃さんにも確認してもらったから間違いないそうだよ」


 姉さまがグルメ細胞を持っているのには驚きました。でも確かにそれだと摂食注入にはなりませんね、だってたった一回の食事でグルメ細胞を宿せるとは思えないですから。


「じゃあ私がグルメ細胞を持っているのは摂食注入では無いと……?」
「断言はできないけど本当に低い確率でしか起こらない。広大な砂漠から一欠けらの塩を落としてそれを探し当てるよりも無理な確率だ」
「それは不可能に近いですよ……じゃあ何故私達にはグルメ細胞があるんですか?」
「……これも節乃さんから聞いた話なんだけどグルメ細胞を生まれながらにして持つ人間もいるらしいにゃん。何でも親にグルメ細胞が宿っていると子に受け継がれるとか……」
「そういや節乃お婆ちゃんがそんなことを言っていたな、詳しいことは聞けていないが……ふーむ」


 どうやら節乃さんは何かを知っているみたいですね、今は祐斗先輩と朱乃先輩の回復が優先なのでその話は流しましたがいつかはちゃんと聞いてみたいです。


「でもそれはグルメ界出身の人間の話、私達は異世界の存在にゃん。だから普通ならグルメ細胞が体内に宿っているのはおかしいと思うよね?」
「はい、それは私も思います」
「それで私、実は調べていたんだにゃん」
「何をですか?」
「私達のお父さん……小松の事をにゃん」


 姉さまから父様の話を聞いて私は驚いてしまいました。


「どうして父様の事を?」
「白音もお父さんから聞いたことがあるよね?自分が料理人として働いていた事、いつの間にか見知らぬ森にいた事を……これって異次元七色昆虫によって起きた出来事なんじゃないかな?」
「あっ……」


 確かにその可能性はあります。実際に私達も異次元七色昆虫のシュウとマイ、そしてエースによって異世界を移動しました。なら逆にグルメ界側の人が私達の住む世界に来る可能性だってあります。


「それで父様の事は?」
「本人かどうかはまだ分からないんだけど小松っていう名前の料理人がランキングに乗っていたのを発見したにゃ。順位は539位で『HOTEL GOURMET』のレストランで料理長をしていたらしいんだ」
「そういえば先程も先輩が言っていたそのランキングというのはなんなんですか?」
「ランキングというのはIGOが定めた料理人としてのランクの事だ。この世界には1万人近くの料理人がいるがその人たちがどれほど優れているのかを数値化したものだな。特に100位から下はこの世界でも最高クラスの料理人として扱われ彼らしか出られない世界レベルの大会もあるくらいだ」
「そんなものがあるのですね。じゃあもしその人が本当に父様だとしたら父様は539番目に優れている料理人だったって事ですか?」
「そうだな。1万人いて539位だとしたらかなりの腕を持っていたんだろうな」


 本当に驚きです。じゃあ父様はグルメ細胞を持っていたから私達もそれを宿したって事なのでしょうか?


「ただね……」
「まだ何かあるんですか?」
「調べたんだけどその小松さんは25歳だったらしいにゃん……そして行方不明になってまだ数か月しかたっていないらしいにゃん」
「そ、そんな!ありえませんよ!だって父様は姉さまが生まれた時点で36歳だったんですよ!?」


 父様が母様と出会った際は25歳で結ばれるまで8年かかったそうです、そして3年後に姉さまが生まれてその2年後に私が生まれました。


 因みに母様は人間の年で既に50は超えていました。年取り過ぎだろうと思いますが母様は妖怪ですし父様も頑張ったんだよって惚けられていたので覚えています。


「私もそれを知ってやっぱり名前が一緒なだけで違うのかなって思ったにゃん。でもさっきイッセー達の話を聞いて私はエース以外の虹色に光ってワープできる昆虫の存在を知ったにゃん」
「シュウとマイか……」
「だからもしかしたら時間を超えてしまうような昆虫もいるかもしれないにゃん。だとしたら話の辻褄が合うからね」
「それなら確かにあり得ますね」
「ああ、異次元七色昆虫が他にもいるのならそんな奴がいてもおかしくないからな」


 時間を超えてしまう異次元七色昆虫……いるとしたらどんな昆虫なのでしょうか?


「実際にそのホテルに行ったことはないのか?」
「うん、直接訪ねたことはないにゃん。今までは怖くてそこまでは出来なかったから……でも今なら大丈夫だよ」
「なら今度皆で行ってみるか。確かそこはIGOの直属だったはずだ、俺がアポイントのお願いをすれば直ぐに行けるはずだ」
「ありがとうございます、イッセー先輩!」


 私は嬉しくなって先輩に抱き着いてしまいました。姉さまの話を聞いて父様が働いていた場所に行くのがとても楽しみになりました、今度皆と行ってみたいと思います。


「先輩~♪」
「ちょ……小猫ちゃん、皆の前だと流石に恥ずかしいぞ!」
「良いじゃないですか、減るものじゃありませんし♪」


 イリナさんが涙目で見ていますが知った事ではありません。正妻の座は私の物です!


「しかし驚きましたよ、イッセーさんは食べること以外には興味の無い奴だって愛丸さんは言っていましたが……そうでもなかったようですね」
「滝丸……」


 するとそこに先程までリアスさんと話していた滝丸さんが来ました。因みにさっきまでの話は魔法で一部を聞こえないようにしておいたので異世界関係についてはバレてはいません。


「心外だな……と言いたいが確かに昔の俺ならこんな風に女の子と話したりなんてしなかったな」
「そうなんですか?小猫さんやアーシアさん達は皆イッセーさんを慕っているように見えますが……」
「先輩は私の大切な人ですからね」
「きっと小猫ちゃんと出会ったから俺も変われたのかもしれないな」
「んふ~♪」


 先輩の大きな手で頭を撫でられるととても落ち着きますね。


「そうやって心を許せる異性がいるのは羨ましいですね」
「滝丸はそういう相手はいないのか?」
「僕は生憎そう言った相手はいないですね、尊敬できる人は沢山いるんですけど……」
「前に言っていた年下の女の子はどうなんだ?」
「その子は妹みたいなものですし……そもそも愛丸さんや他の騎士たちに可愛がられているのでそんな風に見る輩がいたら速攻でのされてしまいますよ」
「その子に彼氏が出来たら大変だな……」


 アイは紳士的な人間だし女性には優しい性格だ、他のグルメナイト達も同じような性格なんだろうな。それでも可愛い女の子に甘いのは男の性なのかもしれない。


「……滝丸、ちょっといいか?」
「はい、なんでしょうか?」


 イッセー先輩は滝丸さんを連れて私達から離れた場所に向かいました。一体どうしたのでしょうか?



――――――――――

――――――

―――


side:イッセー


 小猫ちゃん達から離れた後、俺は滝丸に小声で話しかけた。


「滝丸、単刀直入に聞くぞ。お前が薬を持っていきたいという人物はアイ……愛丸なんじゃないのか?」
「なっ……!?」
「その反応で確信したよ、俺はあいつの特異体質を知っているからな。いつかこうなるんじゃないのかって思っていたんだ」


 アイは人の病原菌やウイルスを食べることが出来る特異体質を持っている。俺も目の前で病原菌を食べるのを見たことがあるんだ。


 ただその食った病原菌は消えるわけじゃなくてアイの体内に蓄積されていくらしい、あいつは普通に食事もできるので程々にしておけと言った事もあるんだけど……どうやらそれを無視して病原菌を食べ続けたみたいだ。


 だがそれは決して病原菌が好物だからというじゃない、病気で苦しむ人を助ける為に行っているんだ。でも長年病原菌を食べ続けた事によって等々アイ自身が病魔に襲われてしまったのだろう。


「あいつらしいといえばらしいが……実際は深刻なんだろう?」
「はい……愛丸さんの容体は日に日に悪化していくばかりでこのままでは愛丸さんは……」
「だがセンチュリースープはほんの少量しか手に入らなかった。悪いがこれは祐斗と朱乃さんを助ける為に使うからお前には譲れない」
「いえ、それは当然ですよ。グルメ騎士として自らを優先するわけにはいきませんし僕もお二人には早く治ってほしいですから」


 恩人の危機よりも他人を優先するのか、年は若くても流石はグルメ騎士のメンバーなだけの事はあるな。


「その代わりといってはなんだがもし薬を買う金が足らないのなら俺が負担しよう」
「えっ、それは……」
「俺だってアイに死んでほしくはないからな。仮にそれに対して申し訳ないと思うなら後から返してくれればいいさ、それなら筋も立つだろう」
「イッセーさん……」


 俺は金だけは持っているしアイの為なら別に惜しくはないからな。ただ滝丸の性格を考えたらそれでは納得しないから後から返せと言った、まあ俺はどっちかというと美味い食材のほうが嬉しいんだけどな。


「ありがとうございます、イッセーさん。このご恩は必ず……」
「おいおい、お礼はアイを助けてから言ってくれよ。でもあいつはかなり頑固だからな、素直に薬を受け取るとは思わないんだが……」
「はい、僕もそう思います……」


 アイは一度決めたことは死んでも譲らないところがあるんだ、死にそうになっていてもグルメ騎士は薬を使わないと決めているから絶対に受け入れようとはしないだろう。


「もしあいつが薬を受け取ろうとしなかったらこう伝えてくれ。『近い内にGODが現れる』ってな」
「なっ!?ゴッ……GOD!?」


 まさかの食材の名が出たので滝丸は心底驚いた顔をしていた。


「GODって実在するんですか?名前は聞いたことはありますがてっきりおとぎ話のようなモノかと……」
「確かに実在する。何せIGOの会長が認めたくらいだからな」
「驚きすぎて何だか変な気分になってきました……そういえば以前愛丸さんがイッセーさんとどちらが先に見つけ出すか競争している食材があると聞いたことがあります。もしかしてソレが……」
「ああ、GODの事だ。俺は伝説の食材をメインデッシュにしたいと思っているんだ」
「すごい……!何だか僕まで興奮してきました……!」


 アイとはGODをどっちが先に見つけられるか競争しているんだ。流石の頑固者もGODが現れると知れば生き永らえようとするだろう。


「イッセーさん、このことは必ず愛丸さんに伝えさせて頂きます」
「ああ、頼むぞ」


 滝丸との会話を終えた俺は小猫ちゃん達の元に向かって談笑を再開した。何を話していたのか聞かれたがプライベートな事だと言って誤魔化した。


 アイの事はいつか皆にも会わせようとは思っているが今アイは危険な状態らしいからな、余計な心配はさせたくないから今は話さないでおこうと思ったんだ。


「な、なんだって!?お前がゼブラ兄を捕まえたのか!?」
「ああ、師匠の手もちょっと借りたけどね」


 そんな中俺は鉄平がゼブラ兄を捕まえたって聞いて心底ビックリした。いやだってあのゼブラ兄をだぜ?そりゃ驚くだろう。


「信じられない、あの化け物を本当に捕まえたっていうのか?」
「ああ、今はハニープリズンに収容されているぜ」
「いつか捕まるかなーとは思ってたけど……まあしょうがないか」


 マッチは自身も戦ったことがあるからか鉄平の話を信じられなさそうな様子だ。まあ実物知っていたら疑うよな。でも鉄平が嘘をつくわけ無いしそんな話をココ兄からも聞いていたから事実なんだろう。


 しかしあのゼブラ兄をねぇ……やっぱり鉄平は凄い奴だな。


「仮にも義理のお兄さんが捕まったって聞いてもそんな反応したら駄目でしょうが……」
「いやでもゼブラ兄知ってる人なら大体こんな反応すると思うんですけどね」
「うう……私何だかお会いするのが怖くなってきました……」


 俺達の反応にリアスさんが呆れた視線でため息をついた。アーシアに至っては会ってもいないのに恐怖で怖がり始めてしまった。悪い人ではない……ないよな?でも善人とも言えないし……


「まあゼブラ兄の事はまた追々な。そろそろライフに着くんじゃないか?」


 リムジンクラゲから外を見てみると緑豊かな光景が広がっていた。


「おおっ!ここが癒しの国ライフか!」
「素敵~!緑がいっぱいで何だか気分が穏やかになってきたわ!」


 ゼノヴィアとイリナの言う通り人工物など殆どない緑豊かな光景だった。リムジンクラゲが地面に降り立つと沢山の蝶が出迎えてくれた。


「なんだ?この蝶俺の傷ついた個所に集まっているぞ?」
「そいつは『バタフライセラピー』……人や動物の弱っている部分や病気の個所を見つけて止まる習性を持っているんだ」
「赤色と青色の蝶がいますね、何か意味があるんですか?」
「青色の蝶は比較的軽い傷に止まり赤色は重症に止まるんだ」


 俺の質問に鉄平が丁寧に説明してくれた。ルフェイが青と赤の蝶について聞くとそれぞれの仕組みを教えてくれた。あれっ?でも祐斗と朱乃さんには両方止まったぞ?


「あれはマズイな、命にかかわる重体者には両方止まるんだ」
「そんな……」
「大丈夫です、二人はまだ生きていますよ。俺達は二人を助ける為にここに来たんです」
「イッセー……そうね、ここで悲しんでも意味なんてないわよね」


 悲しそうな表情を浮かべるリアスさんを慰める、気休めにしかならないだろうが彼女は笑みを浮かべて頬を叩いた。リアスさんの為にも二人を絶対に救わないとな。


 俺達は鉄平の案内でライフの町を歩いていくがあちこちに怪我人ばかりが歩いていた。


「怪我人が多いんだな」
「当然さ。ライフは世界中から重傷者や病気の患者が集まってくる、皆最先端の医療ではなく自然の癒しを求めて来る人ばかりなんだ」


 伊達に自然を使った医療で世界一になった国って訳じゃないんだな。こんなにも怪我人ばかりの光景を見たのは初めてだぜ、それだけの人が自然での医療を求めているってことか。


「あの大きな建物は何なの?」
「あれは総合病院だな。人工の薬や機械は一切使わない全て天然の自然物で治療を行う世界でも唯一のナチュラル医療機関だ」


 ティナが指さした建物は総合病院みたいだ。よく見ればあの病院もそこらにある建物も土や植物で出来ているな、鉄筋コンクリートみたいな人工物は殆どないみたいだ。


「こっちを通っていくぞ。近道なんだ」
「あら、大きなサメがいるわね」
「しかも背中に温泉があるぞ」


 近くの高台に上がると大きな川にこれまた大きなサメが何匹が泳いでいた、更にその背中には温泉があり多くの人がそこに浸かってのんびりとしていた。気持ちよさそうだな。


「あれは『温泉鮫』だな。へこんだ背中にクジラのような穴があってそこから温泉を出しているんだ」
「へー、でもいっぱいいるんだな。小さいのもいるぞ」
「温泉鮫の背中には『ドクターフィッシュ』がいて鮫によって様々な効果の魚がいてな、例えばあそこのサメには肌の汚れや古くなった角質を食べてくれる魚がいるんだ」
「あたしゃも偶に入浴しに来るじょ」
「節乃お婆ちゃんの美貌の秘訣って訳だな……あれ?ゾンゲ達が入っているぞ?」


 鉄平が教えてくれた温泉鮫の背中にゾンゲとその仲間たちがいた。姿が見えないと思ったらいつのまにか……それにしても騒いでいるようだけど何やってるんだ?


「どうやら集まっているドクターフィッシュに驚いているみたいだな」
「っていうかどんだけ集まっているのよ……」
「浸かっている部分にお魚さんがいっぱい集まっていますね」
「汚いにゃあ……」


 ゼノヴィアの言う通りゾンゲは自分の体に集まったドクターフィッシュに驚いているみたいだな。しかしどんだけ身体が汚いんだよ……ほぼ下半身が見えないじゃねえか。ティナやアーシア、黒歌も呆れているぞ。


「はは……あっちのサメには更に優秀なドクターフィッシュがいるんだ。例えばあのサメには『ダイエットフィッシュ』がいて細い口を毛穴から差し込み余分な皮下脂肪のみを吸い出して食べる魚だ。痛みも感じないで痩せられるぞ」
「えっ?それって本当?凄い良いじゃない!」
「まあ料金も一時間一万円とするけどな」
「うっ……一万円か……」
「でもそれでも入ってみたいお風呂ですね」


 ダイエットフィッシュにティナを始めとした女性陣が食いついた。やはり女の子は痩せたいモノなんだろうな。


 でも俺は最近の女の子は少しやせ過ぎじゃないのかって思うんだよな。そりゃ太ってるのは良くないとは思うけど痩せ過ぎるのも駄目だと思うぜ、平均的な体系からほんの少し肉が付いているくらいが好みかな、俺は。


『ほう、お前も女の好みが出来たのか!がっはっは!面白いな!』
(うるさいぞ、ドライグ!)


 脳内でドライグにからかわれた俺は脳内でドライグに叫んだ。でもドライグは笑うのを辞めずに楽しそうに笑っていた。


 因みに今左腕は負傷しているためか籠手を出せない状態だ。ただでさえ使える技も制限されるというのにこれは痛手だな……祐斗達を優先するのは勿論だが俺の左指もしっかりと戻さないとな。


 その後も色んな温泉鮫やドクターフィッシュを鉄平に教えてもらいながら先に進んでいく。しかし医療の国ライフか、中々良い所じゃないか。祐斗と朱乃さんが回復したら皆でのんびりしたいな。


「おっ、あそこにも温泉があるんだな」
「確かあそこには肌の黒ずみを吸い取る『メラニングラミー』が泳いでいたな。温泉の名前は美白湯だ」
「美白湯か。サニー兄が好きそうな名前だな」
「ん?今俺の名を呼んだか?」
「えっ?」


 突然美白湯から誰かが現れて俺達にお湯がかかる。うわっ、あっちぃな!?


「何するんだ……ってえっ?」
「ごめっ……ってはぁ?」


 何と出てきたのは今話の話題になったサニー兄だった。それも素っ裸だ。


「キャ―――――!?サニーさん、何で裸なのよ―――――――!!」
「そりゃ風呂入るなら裸は常識じゃね?」
「湯着着用って書いてるじゃないですか!」
「えっ?マジ?そりゃごめっ」


 リアスさんが目を隠しながら叫ぶがサニー兄は「何を非常識な事を言っているんだ?」的な態度でそう言う。だがアーシアの指摘した通り湯着を着用するルールだったらしくサニー兄は見落としてたらしい。でも全裸で謝るなよ!?


「イヤ―――――!アレが揺れてる―――――!?」
「アレが男性の……意外とグロいんだな……」
「これはスクープね!四天王サニー!アソコのサイズも四天王級だった!」
「なに最低なレポートしてるにゃ!恥じらいはないのかにゃ!?」
「えっ、そんな恰好をしているあなたがそれ言っちゃうの?」


 イリナも顔を真っ赤にして目を隠すがゼノヴィアは興味深そうにサニー兄のアレを見ていた。女の子がそんなものを見るんじゃない!


 そしてティナ!そんなもん放送したら苦情がくるぞ!あと黒歌は反応は正しいんだけど気崩れた着物で(しかも多分下着を付けていない)格好で言っても説得力ないぞ。反応は可愛いけど。



「先輩と互角のサイズですね、流石四天王です」
「前に小猫さんから聞きましたが師匠のアレもアレくらいあるんですね」
「えっ?何それ詳しく教えて!」
「取り合えず服着ろって……後小猫ちゃんは後で俺と話そうか」


 小猫ちゃんとルフェイの会話にティナが食いついたが話を中断させてとりあえず場所を移動して場を落ち着かせた。


「まさかこんな所でイッセー達に会うなんてな!面白い縁だぜ」
「俺はどっと疲れたけどな……」


 サニー兄は笑っているが俺はかなり疲れたぞ……まったくとんだ兄貴だぜ。


「こいつがお前やゼブラと同じ四天王の一人か?ただの優男にしか見えないが……」
「油断するなよ、マッチ。正直真正面からサニー兄に勝てる奴はほとんどいないぜ」
「だろうな。お前やゼブラとは違った得体の知れなさを感じるぜ」


 マッチの言葉に俺をそう答えた。実際サニーゾーンに捕まったらどうしようもないし俺もまだまだだな。


「でも何でお前らがライフにいるワケ?ユウやヒメもヤバそーだしお前も指ねーじゃん」
「ああ、実はな……」


 俺はアイスヘルでの出来事をサニー兄に話した。


「へー、そんな事があったのか。しかし奇遇だな、俺もその与作っていう男に用があったんだ」
「サニー兄も怪我をしたのか?」
「バーカ、ちげぇよ。俺はある食材について聞きに来たんだ?」
「ある食材?それも態々師匠に尋ねに来たって事は……それはまさかアカシアにまつわる食材について聞きに来たのか?」


 俺とサニー兄の話に入ってきた鉄平から衝撃の言葉が出てきた。そういえば節乃お婆ちゃんにアカシアにまつわる食材がどうたらと鉄平が言っていたな。


「ん?てか誰お前?」
「えっ?」


 まさかのリアクションに鉄平は唖然としてしまった。


「嘘だよ、知ってるさ。再生屋鉄平を知らないなんて美食屋としてモグリじゃね?」
(てっぺ……)


 サニー兄のテンションに鉄平は困惑しているみたいだ。まあ最初は誰でもそうなるな。


「まっ、鉄平の言う通りだ。俺は美食神アカシアにまつわる食材……即ち『アカシアのフルコース』の一つであるデザート『アース』の情報を求めてここに来たんだ」
「ア、アカシアのフルコースだって!?」


 以前親父から聞いたアカシアのフルコースの一つをこんなところで耳にするとは思わなかったぜ。でも鉄平はアカシアにまつわる食材って言っていたな、それってフルコースって意味だったのか。考えてみれば分かる事だったな。


「でもどこでそんなことを?」
「ま、俺も色んなツテを持ってるワケ。とりあえず目的は同じみたいだし一緒に……」
「お客様、困ります!」
「がはははは!!」
「なんだ?」


 俺達の話をさえぎって大きな笑い声が聞こえてきた。そっちの方に視線を送ってみると何やら血まみれの白衣を着た男が店員に注意を受けているみたいだ。


「なんだ、あれ?」
「まさか……」


 俺達はその男性を奇妙なものを見る目で見ていたが、鉄平だけは気まずそうにしていた。


「……」
「お、お婆ちゃん……?」
「こ、怖いにゃ……」


 いや違った。何が違うかって言うと節乃お婆ちゃんだけ怒っていた。見た目では分からないが明らかに纏っていた雰囲気が重くなった、黒歌も震えて俺にしがみついてきた。正直腕にすごい柔らかな感触がするがそれを楽しむ余裕はない。


「師匠、何やっているんですか」
「おーっ鉄平!帰ってたか!」
「また禁煙の店で喫煙していたんですか?」
「仕方ない!そうしなければ見えない景色があるからな!」
「まったく……そうそう、グルメショーウインドーの事ですが……」


 師匠?じゃああの男性が与作って人か?何だかハイテンションだな。


「がっはっは!やっぱりか!グルメショーウインドーはもうダメだったみたいだな!こりゃ傑作!!」
「何がおかしいんですか……」
「まあ仕方ねーさ!食材にも寿命はある、定めだったのさ。まあ俺ならそのルール破っていたかもしれんがな」
「じゃあ破ってみんしゃい」
「がっはっは!なんだかセツ婆の声が聞こえたが気のせいだよな?」
「いえ、いますよ」
「がっはっは……えっ?」


 大笑いしていた与作は今頃になって背後にいたお婆ちゃんに気が付いたようだ。


「な、なぜセツ婆がここに……?」
「与作……あたしゃの依頼をほっぽりかして弟子任せにするとはいい度胸じゃなぁ、ん?」
「いや、その……これには深い訳が……」
「覚悟しんしゃい」
「ぎえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 ……うん、お婆ちゃんは怒らせないようにしよう。俺はアーシアの目を隠しながら血まみれになって絶叫する与作を見ながらそう思った。


 因みに店には騒いだ迷惑料と血で汚れた為清掃料を払っておいたぞ。皆もお店のルールは守って正しく使おうな!



 
 

 
後書き
 イッセーだ。再生屋与作、予想以上に濃いキャラだったぜ。だがその腕は確かなようだ、頼む!祐斗と朱乃さんを助けてくれ!


 ……えっ!そんな!?それじゃ二人はどうなっちまうんだ!?



 次回第65話『生きるか死ぬかの選択!祐斗と朱乃、地獄の苦しみを乗り越えろ!』で会おうな。 
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