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剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ

作者:炎の剣製
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050話 幕間2 従者達の修行(後編)

 
前書き
更新します。 

 
そして修行が始まった。




修行:近衛木乃香の場合


木乃香はエヴァとイリヤとともに三人で別荘のコテージにいて、まずエヴァの講義を受けていた。

「まず木乃香。まだお前は魔法使いとしては初歩も初歩の段階だ。それは理解しているな?」
「はいな」
「で、だ。以前にも話はしたがネギのボウヤ共々にお前の魔力容量は強大だ。いや、実際お前は容量だけ見ればボウヤ以上はある。
だが今のままではそれを扱うすべを知らないがゆえに現在は宝の持ち腐れだ。だからまずは魔法を教える前に精神力強化を常に実践し自身の魔力容量を完全に把握することに専念することが第一だ。…しかしだ。お前を本格的に育てる事を決めた私としては一から細々と指導していくのは効率も悪く別荘を使っても様になるのも相当の時間を有するだろう。私の性分でもないし、そしてなにより面倒だ」

眼鏡をかけて教鞭を振るって真面目に指導していたエヴァだが最後に本音が出て思わず関西人の血から木乃香はツッコミをしそうになった。
だがそこで終わるほどエヴァンジェリン・A・K・マクダゥエルは甘くは無い。
まぁ落ち着けと前置きをして、

「…イリヤ、礼のブツは回収できたか?」
「誰に聞いているのかしら? 当然じゃない。コノエモンはかなり渋ったけど『孫の成長の為だ』と書かれたエヴァの紙を見せたら快く譲ってくれたわ。まぁ少しやりすぎた感があるけど気にしないでいきましょう♪」
「同感だ。日々人をおちょくる性格をしている奴にはお灸を据えねばならんからな。よくやったぞ、イリヤ」
「光栄ね。でも本音を言えば実は私も見たかったから…」
「実は私もだ…」

イリヤとエヴァは二人して「フフフ…」と微笑を浮かべていたため木乃香はとても気になった。
ついでに言えば自身の祖父の名が出てきてさらに何事かと思い怯えこしながらもなにがあったのか木乃香は恐る恐る聞いてみた。
するとイリヤが笑みを浮かべながらある分厚い本を背負っていたリュックから取り出した。
それはどこか見覚えのある本だなと木乃香は思想し、ハッ! となってようやくそれが何の本か理解した。
そう、それはまだ中学二年の時に学年末テストのために図書館探検部、バカレンジャー、ネギ、イリヤとともに探し出し、後一歩のところで士郎によって返還された魔法の本だった。
本の名を『メルキセデクの書』。

「なんでイリヤさんがそれを持ってるん…?」
「あら、理由は簡単よ。あの時この本の噂を流したのは学園長で、あのゴーレムを操っていたのも学園長本人だったんだから」
「………へ?」
「しかし、私ですら貸してもらえなかったこの本をよくもまぁ簡単に入手できたものだな?」
「色々精神攻撃をして参っているところに叩き込みをかけたのよ。“図書館島の時のことを皆にバラスわよ?”とね」
「…トドメの一撃だな。しかしそれを平然と木乃香に教えるところお前も存外悪だな?」
「あらひどい。私は“皆”と言ったのよ? だから契約は完全に破ってはいないわ」
「暴論だな。だが面白い…お前は悪の素質を持っているな。元々がアレなだけに…」
「…エヴァちゃん、イリヤさん…」
「ん? なんだ木乃香…? うっ!?」
「どうしたのよ、エヴァ? …ひっ!?」

二人が楽しく会話している中、ただ一人無言でなにやらブツブツ呟いていた木乃香がまるで幽鬼のように無表情かつ冷たい声で二人の名を呼んだ。
そしてそれを聞き見た二人を思わず小さい悲鳴を上げた。
…―――そこには修羅がいた。いや、いるような感じがしたというのが二人の共通認識だった。
その後はもう根掘り葉掘り問いただされエヴァはともかくイリヤは木乃香に恐怖していた。
最後まで聞き終わって木乃香は二人に負けないほどの怖い笑みと「フフフ…」と囁く声とともに、



―――じいちゃん…本気でシメナあかんなぁ…?



余談だがこの時の木乃香の迫力にはさしものエヴァとイリヤも外面は平然としていたが内面は恐怖した。
そのことに対してエヴァは「このような小娘に…」と嘆いていたのを聞いたのは休憩の飲み物を持ってきていて、だが声をかけるタイミングをはずしてしまいただ後ろで控えていることしか出来ないでいた茶々丸だけの秘密であったりする。
さらに余談だがその晩、学園長室からまたもや学園長の悲鳴が上がったのは些細なことである。
というより、もう悲鳴が聞こえてくるのになれた教師陣はあまり接触しないことにしていたらしい。
ちなみに悲鳴を起こさせる人物はここだけの話、今まで士郎とイリヤだけだったため木乃香もめでたく三人目に名を連ねた。


―――閑話休題


それから木乃香は『メルキセデクの書』を利用しながらエヴァの別荘に保管されている色々な魔法書を読みあさる事を続けていた。
もともと素質もあり頭脳も超鈴音並みとはいかずともそこそこ以上にある木乃香はメルキセデクの書の力も相まって読んだ魔法書の内容は次々と脳内に吸収されていった。

その間、授業の用意など業務を終わらせてから来るネギがどこからか気配がするという発言を聞いたが、

「ほう…私との修行中に思考を他に向けるとはな?」
「あ…あ、あああ、あああああああ!!?」
「お仕置きだ♪」


ギニャー


エヴァ、茶々丸、チャチャゼロにフルボッコされているネギの姿を見て精神集中している傍らイリヤは哀れの視線を向けていた。
そして同時に士郎は今どうしているかな?とただでさえ遠い地にいるのでレイライン越しでも辛いものがあるが感じてみることにして視てみると、破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)の真名開放を連続で使用している姿が見えて思わず吹いた。
だから仕方なく念話で話をして魔力を送り続けた。
そして帰ってきたらまた無茶した代償としてお仕置きを決行しようとイリヤの中で決定事項となった。
…ふと、イリヤは今別荘内の図書館島までとはいかずともそれなりに広い書庫で木乃香は今なにをしているのか気になって見に行った。
書庫に入って木乃香を見つけたイリヤは思わずその光景に目を疑った。
そこにはメルキセデクの書を活用しながらいくつもの魔法書を宙に浮かせて目を瞑りながらも読んでいるだろうなかなかの荒業をしている木乃香がいた。
しかも読んでいるであろう本の種類はほとんどが回復系や防御系、補助系と言ったものだった。
攻撃系や移動系も読んではいるようだが、数は前者に比べれば少ない方だ。
どうやらまずは自分の本質である“治癒”を優先的に修練していくとの事。
イリヤは普通に本を読んでいるだけだと思っていたので思わずその光景を魅入っていた。
やはりなまじそういった知識が皆無だった為、新鮮だったらしく楽しそうにしているように見える。

…ここで余談だが、こちらの世界に来る前に旅先で出会ったアトラスの錬金術師である『シオン・エルトナム・アトラシア』によって彼女の研究課題に士郎の投影魔術が大きく貢献し、その御礼として等価交換に基づき教えてもらった“分割思考”という特殊能力のおかげで、後方で支援していたイリヤは士郎に与える情報がよりスムーズになりとても喜んだ。
―――駄菓子菓子、やはり士郎は才能が無かったがために最高で三つくらいが限界だったらしく才能の無さに嘆いていたのはまた別の話である。
しかしそれだけでも十分使える事には使えるのだから士郎はそれを二流の限界まで極めていたので戦況はスムーズになったと前向きな発言をしていたのでそこは良しとイリヤも褒めてあげていた。今ではそれこそ分割思考の数は初期より増えているから成長はしているのも確かなことだから。

…しかし、今目の前で見ている光景を士郎が見たらなにを思うだろうか?
イリヤは書庫の本を読みあさるならちょうどいいと、気まぐれに木乃香に分割思考を伝授させたが、すでにそれは素人どころの問題ではなくまさしくプロ級(本家本元のシオンよりは劣るが)であったとイリヤ談。

(…さすが極東一の魔力を秘めた子ね。ま、それだけ真剣にシロウの力になりたいという想いから来ているのよね。私もウカウカしていられないわ)

と、そこにエヴァも気になってきたのか見にきていた。
ネギは現在休憩中(気絶中?)であった。

「…ほう、ここ何日か放っておいたらかなり知識と魔力の操り方に関しては成長したではないか? イリヤの教えた分割思考という特殊能力もその役を大いに買っていると見た」
「そうなのよね。おそらく今のコノカは、攻撃面はともかくその他の点に関してはこの学園に赴任仕立てのネギに迫るものがあると思うわ」
「ふむ。あの様子では初歩の魔法は大抵は会得、攻撃に関してはまだ魔法の射手に限られるが回復魔法関連は群を抜いていて補助系もそこそこに成長したと見る。
………―――面白い。ただのガキだった木乃香が士郎の役に立ちたいという信念の元、ここまで化けるとはな。近々別に鍛えている刹那とともに実戦でもさせてやるか…」
「お手柔らかにしてあげてね? …でも、あの光景を見ているとどこかの世界のワーカーホリックみたい…」
「…変な電波を受信するな。お前の言う抑止力が動くかもしれんぞ?」

エヴァの言葉に正気に戻ったイリヤは少し照れていた。



それと全然これっぽっちもこのお話には関係ない事だが、無限に続いている書庫の中でひたすら働いている一人の男性が思わず何度もくしゃみをして周りからは不思議がられていたそうな。





「そうだ。まだコノカとセツナの二人はシロウとの仮契約カードの能力を使いこなせていないでしょ? そこのところはどうするの?」
「そうだな…。このかの四種のアーティファクトはどれも使い勝手がいいからな。確か名前は、

『コチノヒオウギ(東風の檜扇)』
『ハエノスエヒロ(南風の末広)』
『キタカゼノウキオリ(北風の浮折)』
『ニシカゼノシズオリ(西風の沈折)』

だったか?」
「そうね。前者の二つは治癒系統だけど、後半二つの方はシロウの影響でも出ちゃったのか攻撃メイン特化なのよね」
「『キタカゼノウキオリ(北風の浮折)』は風を操る能力を秘めていたな? うまいようにやればぼーやともうまく張り合えるかもしれんな。
そして『ニシカゼノシズオリ(西風の沈折)』だけはなぜか鉄扇で重力を操る能力を秘めている…………試しにこのかには私が昔にあるものに習った合気鉄扇術でも仕込んでみるか……」

それでさぞ面白そうに笑い、「鍛えれば下手したらあの神楽坂明日菜をも倒せるかもしれんぞ?」と話し、それを聞いたイリヤはいつか巻き添えを食うであろうアスナに祈りを捧げていた。


「しかし、さて。では今頃刹那はなにをしているのだろうな?」
「ランサーと一緒に別のところで修行しているって聞いたけど、その別の場所ってまだ私には教えてくれないの?」
「別に構わんぞ。ボウヤ達にさえ話さなければな。数多の戦場を駆けてきた士郎とイリヤ、ランサーは十分知る権利を備えている。
刹那は…そうだな。場慣れのための訓練というところか。
ただ、一つ言うなら今刹那とランサーは修行どころではないだろうな?」




◆◇―――――――――◇◆




修行:桜咲刹那の場合


「―――ランサーさん」
「…ああ? なんだ、剣士の嬢ちゃん。何か言いたいならさっさと言った方が見の為だぜ」
「いえ、そこまで根詰めてはいないのですが…ここでの修行は……その、寒すぎませんか?」
「…ああ、そうだろうな。なんせ今俺達は極寒の地にいるんだからな」

そう、現在刹那とランサーはまだネギ達には早いというエヴァの判断の元、別荘のあるボトルシップとは別に、今はさらに地下にあるエヴァの古城とも呼べる『レーベンスシェルト城』。
そこには城を中心に、四方に熱帯ジャングル、極寒地帯、砂漠地帯…他にも様々な修行地帯(レジャー)施設が存在していて現在ランサーの言うとおり二人は極寒地帯のある雪山にいるのだ。
エヴァの言いつけで、

『まずは七日間、気でも術でも使っていいから絶え凌いでみろ。余裕が在るならば修行しても構わん。ちなみに自給自足がもっとうだ。雪山でなにかはいるかもしれないが入手は困難だと思え。戦場ではいつ食事を出来るかすらも分からんのだからな。あ、そうそう。刹那は常に翼は出して行動しろ。雪山では翼は吹雪の前では何の役にもたたんという事をその身で体験しろ。以上だ』

…と、いうランサーはともかく刹那にとっては地獄の特訓が成されてしまった。
事実、今現在進行形で吹雪真っ只中で既に翼は固まって使い物になっていない…。
気で全身を覆って耐寒の対策はしているがやはり寒いものは寒い。
…実言うランサーもルーン魔術で凌いでいるものの半ば受肉している為に何の準備もなしに半袖で着てしまった事を少し後悔している。
アロハシャツ姿で極寒の地を立つランサーの姿はとてもシュールであった。

「…ん。さて、そんじゃさっさと始めるとすっか。まずは寝床の準備だな」
「そうですね…気も無限ではありませんから節約して使っていかなければ後が痛いですし…」
「こういう時に士郎の魔術を羨ましく思っちまうぜ。その気になれば投影で各種機材は作っちまうし錬鉄魔法っていったか? そいつを使えば耐寒、耐熱、耐電なんでもありだからな。呪い受けてもこう、あの魔女の短剣をプスッとな…」
「言えていますね。今思うと士郎さんの魔術は戦いだけではなく生きていくのにも有効ですね…火を起こすのもライター要らず。
………不毛ですね。空しくなってきますからこの話はもう止めにしましょう」
「そうだな…ない物ねだってもしかたがねぇ…。たかがこの程度の雪山…七日間、耐え切ってやろうぜ」
「はい。頼れるのは自身の力のみですね」

二人は(ランサーの方はどうかは知らないが…)初めての体験をまるで悟ったかのような表情になり挑んでいった。
ちなみにランサーはイリヤからの魔力供給は最低限しかされておらず、アーチャーのようにクラス別能力である“単独行動”すらも無いために半分受肉しているからギリギリ助かっているようなものだ。だからなにかを摂取しなければいつかガス欠になってしまう。そしてここでの行いで本格的にサバイバーに目覚めるのはここだけの話である。



…まず一日目。
ランサーの言うとおり寝床探しを猛吹雪の中、探索をし始めて歩き回ったが目ぼしい洞窟は一つも見当たらず結局自身の力で洞窟を作らなければいけなくなった。
当然お互いに手伝いは無用とも言われている為、各自洞窟作りに一日を費やしてしまった。
ランサーはさすが慣れた手つきでやっていたが、刹那は初体験なために困難しまくった。
結局食事には二人ともありつけず一日目は寝床でそれぞれ気と魔力、そして焚き火で朝まで凌いだ。
…その折にランサーは死ぬことはないので爆睡していたが、刹那は洞窟の中で一人、「このちゃんの料理が食べたい…」と早くも一人涙を流した。



…二日目。
二人は寝床から出ると一言二言交わした後、無言で二手に分かれて食材探しに出向いた。
まず刹那は普通なら死ぬだろう氷の川を気で耐水強化して入っていき神経集中すること数分…

「そこだ!」

刹那は士郎との仮契約のアーティファクトである『迦具土(カグツチ)』で炎の短剣を数本複製して川の中に放ち、数発外したがそれでも五匹以上は取れたのでさらに神経を集中させてその方法を繰り返していた。それで川の温度が一時的に上昇してプカプカと巻き添えを食った魚が浮かんでいたのは余談である。

刹那のアーティファクト『迦具土(カグツチ)』は能力は炎を発生できる剣であり、他にも先ほども述べた文字通り炎の短剣を複製できる能力である。
しかしてその最大の活用法は……まだ秘密にしておこう。




…一方、ランサーはというと、

「貴様のその肉、貰い受ける!!」

といいながらなぜかいた山熊にゲイボルグではなく棒での連打を浴びせ狩猟をしていた。
こうして二人は食材をなんなく獲とくし合流したらしたで二人で保存用も作って食事にありつけた。
その際に、二人はうまそうに食べながらも内心では、

(…士郎(さん)の調理したものが食べたい…)

と、二人して思っていた。



…三日目。
もう二人はすでに雪山に順応したのか、刹那は気。ランサーは魔力の節約術を駆使して雪山を駆け巡っていた。
しかし、ただ駆け巡るのではなくすでに訓練をしていた。ランサーは教える方、刹那は教わる方。
ランサーは走り込みをしながらも棒をゲイボルク風に使いこなし刹那に高速の攻撃をしていた。
当然、刹那はまだそんなものを受けたらたまったものではないので防戦一方である。
ランサー曰く、まずは俊敏性と目視力、心眼力を上げるこった。とのこと。

「おらおら!まだまだ続くぜ!」
「ッ!」

移動しながらもランサーは人間の急所である首、額、心臓と他にもそれは素晴らしいほどに的確に打ち込まれてきていて夕凪と『迦具土(カグツチ)』で複数炎の短剣を作り出してそれらをなんとかいなす。
だが一度弾いても神速の突きのスピードは遅くなるどころかさらにキレが増してきている。
これが本当の殺し合いだったなら刹那はすでに二桁以上の数は殺されているだろう。

(やはり、すごい…! 記憶で見たランサーさんは令呪で全力が出せないでいたとしても、それでもその攻撃一つ一つがまさに神速だった! それに今は命令といえばイリヤさんの殺さないようにとのことだがとんでもない…。これだけでも一歩間違えば死はすぐに訪れる)
「考え事もいいが戦闘中にそんなことしていたら…、死ぬぜ?」
「ッ!?」

刹那はその言葉に思わず戦慄を覚えた。
これは自身では絶対に勝てない相手だと警報が頭の中で鳴り響いている。
鍛錬というがこれは、はたから見れば素人目には十分に殺し合いに見えるだろう。
ただ殺さず、且つ逃がさず…そう、まさに猟犬のようだと刹那は思い、そしてランサーの言葉と同時に脳天に落とされた棒であっという間に意識を刈り取られた。
暗転する意識の中、まだまだ精進が足りないと…そう心に刻み付けた。




…そんなやり取りが残りの四日間も繰り返された。
エヴァは期日の七日後だということでイリヤや木乃香を連れて耐寒魔法を展開しながら二人を探した。
そして木乃香は刹那とランサーを見つけた途端、思わず目を疑った。
今の刹那の姿は普段着なのだが所々がボロボロで赤く染まっている部分も見え隠れしている。
一見してみれば満身創痍と見えるだろう。だが、刹那はすでにある意味で限界を越えていた。
魔力供給が少なく本気が出せないでいるランサー(普段の十分の一)に刹那は自ら向かっていき剣戟をぶつけにいっているからだ。
そして最大の一撃、

「神鳴流奥義―――……斬岩剣!!」

刹那の咆哮とも取れる雄叫びがランサーの今のエモノである棒を真っ二つに切り裂いたのだ。
それにランサーは驚きの表情をしたがすぐにニヤッと笑みを浮かべ、

「やるじゃねぇか、刹那の嬢ちゃん。まさか士郎が強化に強化をふんだんにかけまくったこのダイヤモンド級の棒を切り裂くとはよ」
「いえ、まだまだです。ですがランサーさんから、やっと一本取る事ができました…」
「ま、俺の方は魔力供給がほぼねぇからそれほど本気も出せなかったが…それでもお前は十分成長したと思うぜ?」
「ありがとう、ございます…」

その一言とともに刹那は地面に倒れた。
それをじっと見ていた木乃香は決着が着いたと思ったと同時にすぐに刹那のもとへと駆け出した。

「せっちゃん! 今ウチがすぐに治してあげるえ!
プラクテ・ビギ・ナル。汝が為にユピテル王の恩寵あれ。――治癒(クーラ)

携帯杖を取り出して回復の呪文を木乃香が唱えた途端、刹那を淡い光が包み込んで見る見るうちにこの七日間でできた傷はすべて塞がった。
それを間近で見ていた刹那は驚愕の表情をした。
修行で別れる前と今の木乃香の姿がとても違うように見えたからだ。
そしてなにより今唱えた呪文で七日前まで遡る傷をすべて塞いでしまった木乃香はもう治癒術師として一人前くらいの腕を持っているのだから。

「お、お嬢様…この数日間ですごい成長なされましたね」
「それはせっちゃんもやで? ランサーさんから一本取れたんやから凄いことや」
「そうだぜ? 俺も本気は出せなかったとしても手だけは一切抜かなかったからな」
「ふむ。木乃香もそうだが刹那も相当腕を上げたようだな」

エヴァはそう呟き、ふと木乃香の方を見た。
それに木乃香は?マークで返すが、

「そういえば木乃香。イリヤはともかくとして貴様はこの極寒の中寒くないのか?」
「大丈夫やえ? 今は耐寒障壁を全身に巡らせているからなんとか平気や」
「…すごい成長したわね、コノカ。さすがにあの本の力は絶大ね。あ、もちろんコノカの努力も相当のモノだったわよ?」
「ありがとなー、イリヤさん」

屈託の無い笑顔で木乃香はイリヤの言葉に感謝の意を返した。

そしてネギや明日菜の目を掻い潜り言い訳もふんだんに使用してした修行の成果もあり士郎が帰ってきて驚かそうというイリヤの案に木乃香は笑顔で賛成。刹那は少し遠慮がちながらも賛成した。
それから別荘を出て寮に帰ろうとしていた二人に後ろからエヴァの声が聞こえてきた。

「木乃香に刹那。一応伝えておくが私がいいというまでネギのボウヤ達にはお前達のやっていたことは話すなよ?
覚悟も何も無い奴等にはまだもったいないものだ。
だから特に木乃香。魔法が自在に使えるようになったという事をまだ悟られるな。あの小動物が一番勘が鋭く気づくかもしれん。目立った行動は控えろ。いいな?」
「わかったえ。ようは魔法をエヴァちゃんが良いというまで派手に見せんようにしろってことやろ?」
「物分りがいいではないか。その通りだ。刹那もうまくフォローをしておけ」
「わかりました」
「さて、私が言えることは以上だ。だがまだまだ修行は序の口だ。ボウヤ以上に厳しくしていくから覚悟をしておけ!」

二人は「はい!」と答え、帰っていった。
その際にエヴァはイリヤに向けて、

「あの二人…本当に化けたな。これからが実に楽しみだ♪」
「そうね」


そして士郎は帰ってくるなり修行の成果を見せられ、目を凄く見開いていたのは後日談である。
さらに士郎は単身、訳もわからず刹那達の修行していた空間に一週間放り込まれて帰ってきたときにはかなりやつれていた………南無。


 
 

 
後書き
白き翼結成時のアスナとネギの戦いがアスナVSこのかになったらそれはそれで笑えるかも…。
このかのアーティファクトが扇だからエヴァから合気鉄扇術とか習ったら強くない……? 
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