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純文学と高校生

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第二章

「ないよ」
「そうなんだな、じゃあ」
 井上は佐藤にさらに言った、何時の間にか佐藤は自分の席の椅子を持って来ていて井上と向かい合って話をしている。
「よろめきとか」
「何、その言葉」
「美徳のよろめきって三島由紀夫の作品があって」
「今度は三島由紀夫なんだ」
「所謂浮気がね」
「よろめきなんだ」
「それみたいなんだよ、そのよろめきも」 
 井上は佐藤に真剣な顔で言った。
「ないんだ」
「若し旦那さんにばれたら」
 人妻は夫がいるものだ、その夫にばれたらというのだ。
「裁判沙汰だよ」
「怖いね、それは」
「少なくとも大揉めに揉めるから」
「じゃあ結局人妻さんは」
「そのお話はないね」
「じゃあ」 
 井上はここでこんなことを言った。
「学校で」
「今度は純文学じゃない?」
「いや、赤毛のアンに戻って」
 そうしてというのだ。
「考えてみよう、ピーターパンにしても」
「童話も入れるんだ」
「そう、アンとかウェンディとか」
「外国の娘となんだ」
「爽やかな恋愛をして」
 そうしてというのだ。
「晴れてね」
「その晴れてに至るまではどれ位のスパンかな」
「初デートの最後でとか」
「やっぱりそうなるね」 
 佐藤は井上のその言葉に頷いた。
「やっぱり」
「そう、もうね」
 それこそとだ、井上も返した。
「朝昼晩と考えているから」
「それだけにだね」
「もう初デートの後で」
 その後でというのだ。
「そうしたいよ」
「まさに青春だね」
「性春とも言うかな」
「そっちかもね、ただそれって」
 佐藤は井上に述べた。
「実はね」
「実は?」
「君だけじゃないね」 
 井上にこうも言うのだった。
「結局は」
「そうなんだ」
「実は僕もだしね」
「朝昼晩となんだ」
「女の子のこと、女の人のことを考えて」
 そうしてというのだ。
「煩悩全開だよ」
「やっぱりそうだね」
「それを言ったら僕も」 
 佐藤はここで先程井上がした某文豪が自殺する直前の写真の様なポーズになってそのうえでこう言った。
「恥の多い一生だよ」
「そうなるんだ」
「そうだよ、ただね」
「ただ?」
「やっぱりあれじゃないかな」
「あれっていうと」
「だからこうした感情がないと」
 性欲、それがなければというのだ。
「やっぱりね」
「駄目かな」
「だってそこから子供が出来て」
 どうして出来るかはもう言うまでもなかった。 
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