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おっちょこちょいのかよちゃん

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28 戦災孤児の苦悩

 
前書き
《前回》
 かよ子の母・まき子の話は続く。まき子は御穂津姫から貰った杖でマグロの料理を作り上げる。翌日、まき子と奈美子は闇市で残飯シチューを食べる。その後、市を出ると戦災孤児の少女が盗難をして掴まっていたのを目撃した!! 

 
 かよ子は親を亡くした子供もいた事を知って心が痛くなった。もし自分が両親を亡くしてしまったらどうやって生きていけるのだろうかと考えたくなった。
(そうか、お母さんはそれでもおじいちゃんもおばあちゃんも無事だったんだ・・・。たとえお腹が空いててもまだ幸せな方向だったんだね・・・)
「それで、その戦災孤児の子をどう助けたんですか?」
 三河口は話の続きを求める。
「もちろん、奈美子さんの護符の力を使ったのよ」

 まき子と奈美子は先ほど盗みを犯した少女が被害者の男性に取り押さえられている所を発見した。
「さっきの子だね」
「どうしようか?」
 まき子は男性に声を掛けた。
「あ、あの・・・!!」
「何だね?」
「その子を許してあげてください。盗んだ分のお金私が払いますから。奈美子ちゃん、いいかな?」
「あ、いいよ」
 奈美子は余ったお金を出す。
「そ、そうかい。わかった、孃ちゃん達に免じて見逃してやるよ」
 男性は奈美子からお金を貰うと市場へと戻った。
「あの、大丈夫?」
 まき子は孤児の少女に声をかけた。
「ふん、幸せもんめ!同情なんかいらないよ!」
 少女は走り去ってしまった。
「恩知らずだね!あの子」
 奈美子は折角助けてやったのに失礼だと感じた。
「う、うん・・・」
 まき子はあの少女の苦悩が気になった。二人は家に向かって帰る途中、二人組の警察官にあった。
「おい、君達」
 警察官は呼び止めた。
「は、はい?」
「その米と肉の缶詰は闇市で買ったのかね?」
「は、はい」
「それは違法で送られて来た食品だ。没収する!」
「え、ええ!?」
 二人は折角手にした食料をここで失うなど嫌だった。これでは親に食べさせるものががなくなってしまう。
「い、嫌です!それじゃあ、何も食べられないです!!」
「やかましい!よこせ!!」
 まき子はどうすべきか慌てた。
(そうだ、この杖を使って撃退しよう・・・!!)
 まき子は考えた。しかし、どう使用するか。その時、風が吹いた。
「あ・・・」
 まき子はこの風を杖の力として活用できるか考えた。この記述が本に載って会った事を思い出した。

【風に杖を向ければ突風および竜巻を起こすなど風を操る能力を得られる】

 まき子は杖を風に向けた。その時、杖先に風が発生した。まき子は杖を振ると竜巻が大きく発生し、それによって警官を吹き飛ばした。
「うわあああーーー!!」
 警官達は悲鳴をあげながら竜巻によって二人から遠ざけられた。
「奈美子ちゃん、今のうちに逃げよう!」
「うん!」
 二人は走って逃げた。そしてやがて両親のいるところに何とか辿り着けた。
「た、只今〜!!」
「まき子、お帰り」
「今日は市場からご飯と肉の缶詰手に入れてきたよ」
「まさかかっぱらんたんじゃないよな?」
「いや、まさか!ちゃんとお金だしたよ!」
「あんたそんなにお金あったかしら?」
「あ、信じられないはなしだけど奈美子ちゃんが持ってる不思議な護符がお金を出してくれたんだ」
「そうか、よかったな」
 まき子の非現実的な話に珍しく両親は疑いもしなかった。昨日の不思議な杖を見た影響もあるのだろう。夕食は白米に肉は牛肉だったので、まき子の杖の力でビーフステーキにして食べた。
 まき子は父の「まさかかっぱらんたんじゃないよな?」と疑う台詞から市場で出会った戦災孤児の少女の事を思い出した。
(あの子、どうしてるのかな・・・?)
 まき子は彼女が気になってしまった。

 まき子は次の日も食料調達の為に出掛けていた。あの市場にもう一度行ってみようか考えた。だが、奈美子がいないとお金は出せない。いつもと異なる道を歩いている時、路上で寝ていたり、ただ何もせずに座っていたりしている子供達がいた。彼らは戦災孤児だとすぐにわかった。その中には昨日の少女もいた。
「おい、お前」
 まき子は一人の少年に呼ばれた。
「金か食いもん持ってたらよこせ」
「な、ないよ」
「ほう、お前、俺達が親失くして自分はこうならなくて良かったって思ってんだろ?」
「そ、そんな事ないよ!むしろ辛そうに見えて気の毒だよ」
「同情なんかいらねえよ!あっち行け!」
 少年に言われてまき子はその場を離れざるを得なくなった。
「う・・・」
 まき子はあの戦災孤児達の事を考えると他人事になれなくなった。そしてしばらくして奈美子が訪れた。
「お〜い、まき子ちゃん」
「奈美子ちゃん・・・」
「どうしたの?」
「あの、実は昨日の子に会ったんだけど、沢山同じように親を亡くした子がいたんだ。奈美子ちゃんの護符で何とかできないかなって思って・・・」
「そうか、できるかな?」
 奈美子は己が持つ護符を見た。その時、護符が光り出した。
「何だろ?」
 その時、一人の男性が舞い降りてきた。
「君達」
「は、はい?」
「我が名は十次と申す。君らはあの戦災孤児の子達を救いたいと思うかね?」
「はい、あの子達がとても辛そうなのです」
「よかろう。私が政府やGHQに談判してこよう。いい知らせができたらまた君達の前に現れて教えるよ」
 十次はそう言って消えた。
「それだけ?」
「本当にやってくれるのかな?」
 二人は半信半疑になった。

 総理官邸。当時の内閣総理大臣は復興への行動に追われていた。
「はて、休憩するか」
 その時だった。
「総理」
 自分の他、誰もいないはずの部屋から声がした。
(な、何だ!?疲れすぎによる幻聴か!?)
「私は十次という異世界から来た者である。生前、この国で児童福祉に励んだ者だ」
「はあ!?」
 総理には訳の分からない事であった。
「今、日本各地にて空襲で親を失い、途方に暮れる戦災孤児が沢山いる。GHQらと協力して彼らを救済せよ」
「な、何を言って・・・!?」
「戦災孤児の子供達の安全な住み場所を提供してくれと言う事だ。無理だというのかね?」
「わ、わかった、やってみよう・・・」
「よかろう。では私は次にGHQに頼みに行く」
 ジュージは消えた。
(戦災孤児・・・、か)

 GHQの本部にも十次は現れた。
「貴方方」
「な、何だ、貴様は!?急に現れて!!」
「私は異世界から来た者だ。今戦争によって親を亡くした多くの子供達が苦しんでいる。彼らを救済する為の措置をとりたまえ。それでは」
 十次は消えた。
「子供達の救済か・・・」
「元帥、どうしますか?」
「まあ、あの男の言う事に間違いがなければ調査してみよう」

 これによってGHQと日本政府は戦災孤児の救済に動き出した。身寄りのない子供達の為に親類および引き取り手を探した。

 数日後、まき子と奈美子はこの日も食料調達の為に動いていた。この日も米や肉の缶詰を市場から仕入れ(もちろん奈美子の護符の力で出した金で払った)、各々の家へ帰った。ところが途中警官とばったり会ってしまった。
「おい、お前ら!!」
「しまった・・・」
「まき子ちゃん、杖!」
「あ、うん!」
 まき子は周辺に落ちてある石に杖を向けた。石を巨大化して警官に転がす。警官はボウリングのピンのように弾かれた。
「よし、逃げよう!」
「うん!!」
 二人は警官に追いつかれないように全力疾走した。
「はあ、はあ・・・。もう追ってこないかな?」
「うん、巻いたみたいだよ」
 その時、二人はある子供たちが多くの大人に連れて行かれる光景が見えた。
「あれ、あの子達、親を亡くした子達だよね?」
「うん、どこかに連れて行かれちゃうのかな?」
 その時、いつの日か市場でかっぱらいをしていた少女が見えた。
「あんた達・・・」
 その少女もまき子達に気付いた。
「え?どうしたの?」
「実はウチの親戚が生き延びてて、引き取ってくれる事になったんだ」
「そっか、よかったね、安心したよ」
「うん、じゃあね」
 その少女は親戚の所へ戻った。
「あの子達、よかったね・・・」
「うん・・・」
「ああ、政府とGHQが協力してくれたのだ」
 二人は振り向くと、そこには十次がいた。
「今、身寄りのない子供達を親戚や引き取り手などを募っており、浮浪児となる事を防いでくれているのだ」
「十次さん、やっぱりやってくれたんですね!ありがとうございます」
「ああ、君らの願いが届き、私もホッとしている。それでは」
 十次は姿を消した。
「奈美子ちゃん、その護符の力、本物だったね」
「うん、できない事はなかったんだね」

 そして戦争からの復興が進んでいき、まき子も奈美子もまともな住まいに住めるようになったのだった。 
 

 
後書き
次回は・・・
「アイテムは次の世代へ」
 戦争からの復興を進める日本で、まき子と奈美子の前にある人物が現れ、二人にそれは必要なくなったと告げる。しかし、その人物は同時にまた日本が新たな争いを起こし始めた時、自分の次の世代に渡すべきと悟り・・・。 
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