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おっちょこちょいのかよちゃん

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29 アイテムは次の世代へ

 
前書き
《前回》
 終戦直後の日本、かよ子の母・まき子と友人の奈美子は戦災孤児を救いたいと考える。その時、奈美子の護符が能力を発揮しだし、二人の前に十次という異世界の人間が現れる。十次の首相やGHQとの交渉によって戦災孤児達を親戚や引き取り相手に引き取らす事に成功したのだった!! 

 
「でも、その護符や杖はいつまで使い続けてたの?」
 話の途中、かよ子は質問した。
「それはね、戦後の混乱が収まった時までよ」
 かよ子の母は話を続けた。

 戦後の食糧不足や治安の不安定さも落ち着きを取り戻していく中、まき子や奈美子はそれぞれのアイテムに頼る事を続けていた。
「これのおかげで乗り越えて行けたね」
「うん、私もこの杖の能力で何とか身を守れたしね」
「うん、新しい家もできたし、これからも守ってくれるかな?」
 その時、二人は謎の声を聞く。
「北条まき子さん、三河口奈美子さん」
 この声は二人とも聞いた事があった。ひもじくて食料探しをしていたあの時と同じ声、つまり御穂津姫(ミホツヒメ)の声だった。
「その声は、御穂津姫!?」
「はい、その通りです」
 御穂津姫は二人には御穂神社に来るようには促さず、今度はその場に現れた。
「貴女方は今までその杖や護符で救われ続けてきましたが、貴女達の生活が安定しつつある今、それらを封印しなければなりません」
「え!?どうして!?」
「それはこの方からの進言です。その杖や護符が元々あった世界から来た者をつれて来ました」
 御穂津姫の隣に一人の女性が現れた。その女性は栗色の長い髪をしていた。
「初めまして。私の名前はフローレンス。平和を司ります世界から来ました。そしてその杖と護符は私達の世界の物で私が戦争で敗れました日本に力を与えます為に御穂津姫に渡しました物なのです」
 フローレンスと名乗った女性は説明を続けた。
「それで、確かに貴女方の杖や護符は終戦直後の混乱を乗り越え、戦災孤児の救済にも貢献されました。しかし、これは信じられません事だとは思いますでしょうが、その道具の使用があからさまになり続けていますと他の世界の人間がそれを狙う恐れがあるのです」
「他の世界の人間って?」
「戦争を正義と思う世界が存在します。その者達は嘗てはこの世界の人間でしたが、最悪の形でこの世を去り、その憎しみが増大化させてこの現世に復讐の機会を狙っているのです。今、この日本は終戦を迎え、新しい憲法が施行されました今、これからの日本は平和の道を続けます予定ではありますが、また再びその憲法を破り、戦争の道へと歩ませる者が出てきますはずです。その時まで、その杖と護符の封印を私から願います。そして、貴女方のご子息がこの世に生まれ落ち、育ちが進みゆきます時にそれらを受け継がせてください」
「う、うん・・・」
「私の世界では貴女達がここまで歩み続ける事ができました事を光栄に思っております」
「うん・・・!絶対に私達の子供に渡すよ」
「はい、遠い未来の話にはなりますが、必ずお子様達に貴女方の能力(ちから)は受け継がれます。不安にならないでください」
 フローレンスは話を終えた。
「それでは御穂津姫、私の話は以上です」
「了解です。そのように今大切にその道具をしまわれてください。再びこの国が間違った方向に向かいそうになるその時まで」
「分かった・・・」
「それでは」
 二人は天に昇るように上昇し、そして消えた。
「まき子ちゃん」
 奈美子は心の準備の確認を問う為にまき子に声をかける。
「封印しようか」
「そうだね」
 二人はそれぞれ新居にて自分の部屋を貰ったのでその机の引き出しの中にしまった。

 やがて歳月は経ったが、二人はそれ以後もその杖や護符を忘れる事は無く、結婚後もその道具は持ち続けた。それからその杖をまき子は娘・かよ子が生まれ、小学三年生になったその時、娘に受け継がせたのだった。

「それだけその杖は役に立ったのよ」
「うん・・・」
「あの、お母さん、実は私も前にそのフローレンスさんって人に会った事があるんだ」
「あら、そうだったの」
「杉山君達が造った秘密基地を隣町の子達と取り合いになった時、その喧嘩を止めようと動いていたんだ」
「そうだったのね。実は私も前に地震のような事が起きた時、御穂津姫姫にも会っているのよ」
「え!?そうなの!?」
「その時私の前に現れてこう言ったの。『その杖の封印を解く時が訪れました。その杖の力を娘さんに引き継ぎなさい』ってね」
「そうだったんだ」
 かよ子は思った。この杖は母親が平和を主とする世界から貰ってきた尊い品だ。この世界の異変から守るために慎重に使わなければならない、と。
「それで、おばさんはその護符を誰に引き継がせるの?」
 かよ子は隣のおばさんに聞く。
「そうね、健ちゃんは甥だから、うちの娘かな?」
「誰にですか?」
 三河口も自分の従姉の三姉妹の誰に継がすか気になった。
「そうだね、まだ考えてなかったね。そろそろ渡さないとね」
「はい・・・」
「長話をしてたら6時過ぎちゃったね。それじゃ、失礼するよ」
「はい。あ、かよちゃん」
 三河口はおっちょこちょいの少女の名を呼ぶ。
「え?」
「もし何かあったら俺も手伝うよ」
「お兄ちゃん、ありがとう!」
 奈美子とその甥は帰った。

 かよ子はその杖を改めて見る。絶対にこの杖でこの世界を守る。丸岡と言う男は一度取り逃がしたが、彼は異世界からの侵略者ではなかった。あの男が、いや、あの男が属するグループが異世界とぶつけて協力したというならば、絶対に彼らの野望を打ち砕く。
(おっちょこちょいはもうできないし、したくない・・・!!)
 かよ子は己の改善を渇望する。
(それから、杉山君も失いたくない・・・)
 同時に好きな男子の事も考えた。そして、杉山に相応しい女子になりたいと願う。

 そして、また時は進んでいく。 
 

 
後書き
次回は・・・
「夏のプール授業」
 三河口が通う高校はプールの授業を楽しんでいた。同じ頃、かよ子の通う小学校でも水泳の授業があり、かよ子は杉山の前で案の定のおっちょこちょいをやってしまう。その後、三河口は叔母から従姉妹が一時的に帰ってくると聞き・・・。 
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